こんにちは、尚視会理事長・消化器内科医の原田です。
今回は、大腸カメラの痛みについてお話ししたいと思います。大腸カメラを受けたことがない方は、大腸カメラは「苦しい・痛い」などのイメージがあると思います。
大腸カメラは静脈麻酔(鎮静剤)をしないと、人によってはそこそこ痛みが出ることがあります。静脈麻酔を使用すれば、ほとんどの人が痛み無く無痛で検査を終えられます。
もちろん静脈麻酔を使用しない場合でも全く痛みが出ない方もいますが、どのような名医が検査をしても痛みが出る方は少なからずいます。私たちも静脈麻酔無しで大腸カメラを受けられる方には極力痛みが出ないように丁寧な検査を行うようにしておりますが、やはり多少は痛みが出ることがあります。
どうして大腸カメラで痛みが出るかと言いますと、大腸にはスコープを挿入する際に急峻な屈曲および腸管が伸びやすい場所があります。その二つが、S状結腸と横行結腸と言われる場所です。この二つの部位はお腹の中で遊離された状態で、ある程度自由に動くようになっています。一方、直腸・下行結腸・上行結腸などの部位は、後腹膜という部位に固定されており自由に動くことができません。S状結腸と横行結腸は自由に動く遊離された状態のため、スコープを挿入する際にグニャグニャと動き腸管も伸びていくことがあります。そのためスコープを押し入れていくと同時に腸管に圧がかかり痛みがでます。
では、どうしたら痛みが少なく楽にスコープを挿入できるのかと言いますと、そのためには以下の三つの方法がポイントとなります。
①空気を入れずにスコープを挿入する
②軸保持短縮法+横行結腸を真っすぐ挿入する
③静脈麻酔
一つ一つ解説していきたいと思います。
①一つ目は、「空気を入れずにスコープを入れていく」です。通常大腸内視鏡検査の際には、空気(または二酸化炭素)を入れながら腸管をある程度膨らませてスコープを挿入していきます。空気を入れすぎると腸管が伸びてしまいスコープの挿入が難しくなったり、空気のせいでお腹が張ってしまうことがあります。この空気の代わりに水を入れて挿入する「水浸法」という方法があります。水を入れていくことで腸管が伸びることなくスムーズにスコープ挿入ができます。当院では、「水浸法」さらに進化させた「ウォーター・イクスチェンジ・コロノスコピー(WEC)」という方法で検査を行っています。WECについての詳細は、HPで解説していますのでご参考にしてください。
②二つ目は、S状結腸で腸管が伸びないように挿入していくためには、腸管を無理に押さずに軸を合わせて入れていく「軸保持短縮法」という方法があります。S状結腸には屈曲があり遊離された腸管のためむやみにスコープを押していくと腸管がお腹の中で伸びていったり、腸管がループといって輪っかを作り出してしまい、スコープが前に進まなくなってしまうことがあります。このような状態になるとスコープが進まなくなるばかりではなく、挿入時の痛みの原因や大腸の粘膜に傷がついたりなどしてしまうことがあります。S状結腸の軸を保持して少しずつ腸管を手繰り寄せながらスコープを進めていくとスコープが真っすぐに挿入することができスムーズな挿入ができるようになります。
また、横行結腸も腸管の伸展やループが比較的生じやすい部位です。横行結腸は、個人差はありますが人によっては下の方に下垂して(垂れ下がって)いるため、そのままスコープを押していくと下の方に腸管が伸びてしまったり、やはりループを作り出してしまうことがあります。そのためスコープを横行結腸で進めていく際には、垂れ下がった腸管をスコープで引っかけて持ち上げつつ真っすぐな状態にしてスコープを進めていくとスムーズに挿入が可能となります。
③最後の三つ目は、やはり静脈麻酔です。静脈麻酔を使用することで眠ったまま検査ができほとんど痛みを感じることがなく検査が終わります(静脈麻酔についてはこちらを参照してください)。
当院で施行した、100名の大腸内視鏡検査を受けられた患者さんのアンケートでは、100名中95名の方が「全く痛みが無かった」と評価いただきました。残りの5名の方は「ほとんど痛みが無かった」と評価いただき、痛みがあったという方はいませんでした。
以上のように私たち尚視会グループの内視鏡医たちは、3つの方法を駆使することで痛みが無い楽な大腸内視鏡検査を行うようにしています。
今回は、大腸内視鏡検査における痛みについて解説いたしました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。