大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は痛くて大変な検査なの?

大腸検査

「大腸内視鏡検査はツラくて痛い・・・」

「下剤を飲むのが大変!」

「できれば検査を受けたくないのですが・・・」

 

といったことは外来の診察でよく患者さんから耳にすることです。大腸内視鏡検査は、一昔前だと非常につらい検査であったことは間違いありません。現在では、スコープや検査の方法も改良されており以前より格段と楽な検査になりました。

 

なによりも静脈麻酔を使用すればほとんど痛みなく検査を終えることもできる検査となりました。つらくならない検査のためにはどのような検査を受けるべきなのかを本記事では詳細に解説していきたいと思います。

 

本記事を読むことで、大腸内視鏡検査の基本および痛みを無く検査を受けるための知識を皆様が得られれば幸いです。

 

1章、大腸内視鏡検査はツライ検査なのか?

 

大腸内視鏡検査は、世の中で名医と言われるような医師が検査をしても痛みが出る方は少なからずいます。とくにawakeといって、意識のある起きた状態で検査を受ければある程度痛みを伴います。

 

人によっては痛みに鈍感である方もいますので、そのような方の場合には痛みがでないこともあります。痩せている方・女性・腸の曲がりが強い方・おなかの手術後の方などの場合には、やはり大腸内視鏡検査の際に痛みを伴ってしまいます。

 

ではどのようにしたら痛みがなく大腸内視鏡検査を受けることができるのかを解説していきたいと思います。

 

1-1、大腸内視鏡検査は静脈麻酔を使用すれば痛みはほぼ無い

 

静脈麻酔(鎮静剤)を使用することで、大腸内視鏡検査は痛みなく終えることができる。

反対に静脈麻酔を使用しない場合には、痛みがでると思って検査を受けるべきです。これはHPでどんなに名医と謳っていようが、程度の差はありますが間違いなく痛みはでます。

 

当クリニックでは、受診される患者さんに大腸内視鏡検査は痛みが出る検査と必ずお伝えしています。お伝えした上で、静脈麻酔を使用するかどうかを選択してもらっています。

 

もちろん当クリニックでも静脈麻酔無しで大腸カメラを受けられる方も中にはいらっしゃいます(100名に1名くらいの割ありですが)。そのような方には、極力痛みが出ないように丁寧な検査を行うようにしておりますが、やはり多少は痛みが出ることがあります。

 

では、大腸内視鏡検査では、どのような痛みがでるかといいますと、「お腹が張るような痛み」「腸が押される痛み」「引っ張られるような、腸がひっくり返るような痛み」というような痛みがでます。このような痛みは、検査の際に大腸内に挿入した内視鏡スコープを操作した際に大腸が伸ばされたり・押されたり・空気が入って大腸が拡張することで起こります。

 

このような痛みを防ぐためには、静脈麻酔を使用して痛みを抑えて検査をすることが望ましいと考えられます。外科手術を受ける際には全身麻酔を行い、歯を抜歯する際には麻酔剤を歯茎に注射するのと同じと考えていただけたらと思います。

 

大腸内視鏡検査の際の痛みについては、「大腸内視鏡検査は痛みがある?どんな痛み?痛みを防ぐ方法まで専門医が解説」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

1-2、静脈麻酔の方法とは

 

では実際の静脈麻酔の方法やメリット・デメリットを解説したいと思います。

 

静脈麻酔の実際

 

静脈麻酔を行うためには、静脈路といって腕の血管(静脈)にルートを確保する必要があります。ルートとは、点滴や薬液を流すための道具でサーフローという極細いプラスチックの管を静脈に刺して留置した状態のことをいいます。

 

このルートから麻酔剤(鎮静剤)を検査開始前に注入して眠った状態になってもらってから内視鏡スコープを大腸に挿入していきます。麻酔剤は種類により半減期といって麻酔の効果が薄れてきますので、患者さんの意識があがってきた場合には適宜麻酔剤を追加して意識と痛みのコントロールをしていきます。

 

基本的に麻酔剤の注入を続けていくのは大腸への挿入時のみで、抜きといって大腸の観察をしてスコープを盲腸(大腸の一番奥)から抜去していく際には麻酔剤の追加をしないことが多いです。というのは、スコープの抜去時には痛みが出ることはさほど多くなく、麻酔剤の投与量も最小限にすることができるからです。

 

*ただし内視鏡スコープの抜去時には、空気(二酸化炭素)を入れて観察する必要があり、空気による大腸の拡張のため痛みが出る方には麻酔剤を追加することもあります。

 

検査が終了したら麻酔剤を使用しているため回復室(リカバリー)で30分程度休んでもらう必要があります。

 

静脈麻酔のメリット

 

大腸内視鏡検査の際の静脈麻酔のメリットとしては以下のようなことが挙げられます。

 

・痛みなく検査ができる

・眠った状態で起きたら検査が終わっている(検査途中で覚醒することもあります)

以上の2つが大きなメリットです。静脈麻酔を使用することで不安なく検査に臨むことができるかと思います。

 

静脈麻酔のデメリット

 

大腸内視鏡検査の際の静脈麻酔のデメリットとしては以下のようなことが挙げられます。

 

・ルートを確保しなければならない

・静脈麻酔使用時に副作用がある

・麻酔剤にアレルギーのある人は使用できない

・当日静脈麻酔使用後は、車・バイク・自転車の運転ができない

一つ一つ解説していきたいと思います。

 

ルートを確保しなければならない

 

麻酔剤を注入するための血管路(静脈へのサーフローの留置)を確保しなければなりません。そのため腕(利き手とは逆)の血管に針を刺してサーフローを留置します。そのため針を刺す時に採血と同様に痛みを若干伴います。

 

大腸内視鏡検査の際に伴う違和感や痛みに比べれば一瞬で終わることだと思います。

 

静脈麻酔使用時に副作用がある

 

静脈麻酔を使用することで、血圧の低下や呼吸の抑制ということが起こります。そのため静脈麻酔を使用する場合には、生体モニターといって血圧や呼吸を常に監視する機械を使用します。麻酔剤を使用することで起こる血圧低下・呼吸抑制をいち早く察知して「麻酔剤を必要以上に投与していないか」「呼吸抑制があるので酸素を投与」などを行う必要があります。

 

麻酔剤にアレルギーのある人は使用できない

 

麻酔剤にアレルギーがある人は、基本的には麻酔剤を使用することはできません。ただし麻酔剤にはいくつか種類があるため、アレルギーが起こらない可能性のある麻酔剤を選択することで使用できる可能性があります。

 

これまでに麻酔剤を使用したことでアレルギー反応が起きた既往の有る方に関しましては、一度医師ないし看護師に直接ご相談してください。

 

当日静脈麻酔使用後は、車・バイク・自転車の運転ができない

 

麻酔剤を使用した場合は、当日の検査後には車・バイク・自転車の運転を控えてもらっています。どうしても使用しなければならない用事がある方は、検査を別日に変更することをお勧めします。

 

1-3、軸保持短縮法で痛みなく挿入

 

軸保持短縮法を用いた大腸挿入法で痛みを低減できる。

大腸内視鏡検査で痛みがでるのは、主に内視鏡スコープで腸管が押されてしまうことで痛みがでます。とくに腸管が押されて伸びやすい場所が2か所あり、この2か所の部位では痛みが出やすいと言われています。

 

この2か所の部位とは以下の部位となります。

 

S状結腸

・横行結腸 

S状結腸と横行結腸は、腸管の屈曲が他の部位に比べ強く曲がりくねっていることが多い部位です。さらに、この二つの部位はお腹の中で遊離された状態で、ある程度自由に動くようになっている遊離臓器と呼ばれています。そのためS状結腸と横行結腸は、内視鏡スコープの挿入時に比較的腸管が伸びやすく痛みが出やすい部位となっています。

 

とくにS状結腸は、屈曲や腸管のループといって腸管がとぐろを巻いてしまうことがあるため一番痛みが出やすい部位となっています。このS状結腸をなるべく痛みが少なく体に負担をかけずに内視鏡スコープを挿入するには、“軸保持短縮法”という方法で挿入することが望ましいと考えられています。

 

軸保持短縮法とは

 

軸保持短縮法とは、S状結腸の軸を保持して少しずつ腸管を手繰り寄せながらスコープをまっすぐ進めていく挿入法。

 

S状結腸には屈曲があり遊離された腸管のため、むやみにスコープを押していくと腸管がお腹の中で伸びていったり、腸管がループといって輪っかができてしまいます。

 

このように腸管が伸びたり、ループができると、スコープが前に進まなくなってしまいます。さらにスコープが進まなくなるばかりではなく、挿入時の痛みの原因や大腸の粘膜に傷がついたりなどしてしまうことがあります。

 

S状結腸の軸を保持して少しずつ腸管を手繰り寄せながらスコープを進めていくとスコープが真っすぐに挿入することができスムーズな挿入ができるようになります。

 

痛みの出やすい横行結腸

 

横行結腸も腸管の伸展やループが比較的生じやすい部位。

横行結腸は、個人差はありますが人によっては下の方に下垂して(垂れ下がって)いるため、そのままスコープを押していくと下の方に腸管が伸びてしまったり、やはりループを作り出してしまうことがあります。

 

そのためスコープを横行結腸で進めていく際には、垂れ下がった腸管をスコープで引っかけて持ち上げつつ真っすぐな状態にしてスコープを進めていくとスムーズに挿入が可能となります。

 

反対に、直腸・下行結腸・上行結腸などの部位は、後腹膜という部位に固定されており自由に動くことができませんので、挿入は容易です。しかしながら、S状結腸と横行結腸は自由に動く遊離された状態のため、スコープを挿入する際にグニャグニャと動き腸管も伸びてしまうことがあります。そのためスコープを押し入れていくと同時に腸管に圧がかかり痛みがでてしまいます。

 

2章、水を使った大腸内視鏡検査法

 

大腸内視鏡検査では、空気を入れながら内視鏡スコープを挿入していく方法が一般的です。空気の代わりに水を使用した挿入方法もあります。私たちのクリニックでは、水を使用した挿入方法で大腸内視鏡検査を行っています。

 

水を使用した大腸内視鏡検査の方法としては、以下のような2つの方法があります。

 

・水浸法(WIC; Water immersion colonoscopy

・ウォーター・イクスチェンジ・コロノスコピー(WEC; Water exchange colonoscopy

この2つの方法について解説していきたいと思います。

 

2-1、水浸法(WIC)とは

 

水浸法とは、空気の代わりに水を入れて内視鏡スコープを挿入していく方法。

通常大腸内視鏡検査の際には、空気(または二酸化炭素)を入れながら腸管をある程度膨らませてスコープを挿入していきます。空気を入れすぎると腸管が伸びてしまいスコープの挿入が難しくなったり、空気のせいでお腹が張ってしまうことがあります。

 

この空気の代わりに水を入れて挿入する方法が「水浸法」と言います。水を入れていくことで腸管が伸びることなくスムーズにスコープ挿入ができますので、痛みを軽減して大腸内視鏡検査を行うことができます。

 

2-2、ウォーター・イクスチェンジ・コロノスコピー(WEC)とは

 

ウォーター・イクスチェンジ・コロノスコピー(WEC)とは、水浸法をさらに進化させた内視鏡挿入法。

当院では、「水浸法」さらに進化させたこのWECという内視鏡挿入方法で検査を行っています。WECは、内視鏡スコープを大腸へ挿入する際に、空気の代わりに水を注入しながら大腸内に残った便汁のカスなどを洗浄するのと同時にこの汚れたカスを吸引して大腸内をキレイにしながら内視鏡スコープを挿入していく方法です。

 

WECでの一番の利点は、腸管内の汚れをキレイすることができるため、内視鏡スコープを抜いてくる時の大腸の観察の際にしっかりと大腸粘膜の観察ができます。そのため、病変の見落としの確率が低くなる可能性があると報告されています。

 

また、挿入自体も従来の浸水法であるWICと変わりありません。そのため楽に検査を受けることが可能です。

 

WECについての詳細は、当院HP大腸カメラ」で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

3章、ツラくない大腸内視鏡検査クリニックの選び方

 

ツラくない大腸内視鏡検査を受けるためには以下のことを基準としてクリニックを選ぶことをお勧めします。

 

 

・専門性のある内視鏡クリニックで検査を受ける

・「消化器内視鏡専門医」の資格があるかどうかも一つの目安

・静脈麻酔を使用した大腸内視鏡検査が可能かどうか

・清潔感が保たれたクリニックである

・ある程度のプライベート性が確保されている

クリニックを選ぶ際は、上記のような専門性があり専門医があるかどうかなどをHPで確認することをお勧めします。専門性のあるクリニックというと一般的には、年間2,000件以上の大腸内視鏡検査を行っていることが目安になるかと思います。

 

大腸内視鏡検査を受ける際に静脈麻酔の使用を選択できるかどうかも大事です。クリニックの清潔感やプライベート性があるかどうかなども大事です。検査を受けるにあたり不安な気持ちで受けるのとリラックスした状態で受けるのとでは検査の質が大いに違ってきます。

 

事前によく確認してから検査を受けるようにしましょう。

 

4章、当院の大腸内視鏡検査のアンケート結果

 

当院で施行した、100名の大腸内視鏡検査を受けられた患者さんのアンケートでは、100名中95名の方が「全く痛みが無かった」と評価いただきました。残りの5名の方は「ほとんど痛みが無かった」と評価いただき、痛みがあったという方はいませんでした。

 

100名すべての患者さんが静脈麻酔を使用した大腸内視鏡検査を受けていただいております。

 

まとめ

 

以上のように私たち尚視会グループの内視鏡医たちは、痛みが無い楽な大腸内視鏡検査を行うために下記のことに気を付けて検査を行うようにしています。

 

・静脈麻酔を使用した楽な大腸内視鏡検査を行う

・軸保持短縮法にて腸管を伸ばさないようにする

WECにて楽で正確性の高い検査を行う

 

楽な大腸内視鏡検査を受けるために以上のことに気を付けてクリニックを選んでいただけたらと思います。

 

当クリニックでは、下記より24時間WEB予約にて大腸内視鏡検査を予約することが可能です。

 

 

 

Sergio Candoni et al. A randomized controlled trial comparing real-time insertion pain during colonoscopy confirmed water exchange to be superior to water immersion in enhancing patient comfort. Gastrointestinal Endoscopy 2015; 81: 557-566.

Yu-Hsi Hsieh et al. Prospective multicenter randomized controlled trial comparing adenoma detection rate in colonoscopy using water exchange, water immersion, and air infusion. Gastrointestinal Endoscopy 2017; 86:192-201.

Cadoni S, Ishaq S,・・, Harada H, et al. Water-assisted colonoscopy: an international modified Delphi review on definitions and practice recommendations. Gastrointest Endosc. 2021; 93: 1411-1420.

 

※2021年10月26日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年2月7日に再度公開しました。

 

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