日帰り大腸ポリープ切除(大腸ポリペクトミー)について専門医が解説

「大腸のポリープって切除をするのは大変なのかな?」
「入院が必要なの?」
「どこで切除ができるの?」

など大腸のポリープ切除に対してお悩みの方もいらっしゃるかと思います。

大腸のポリープ切除は、大きさや形・存在する部位にもよりますが日帰りで切除が可能な治療です。当クリニックの場合は、大腸内視鏡検査を行い大腸ポリープが発見された場合はその場で大腸ポリープを切除しています。

大きなポリープやポリープの茎(根元)が太い場合には、ポリープを栄養している血管が太い可能性があるため術後の出血リスクが高くなります。出血のリスクが高いと判断された大腸ポリープの場合には、入院での切除が必要となります。

今回は、日帰り大腸ポリープ切除の話を中心とした解説および入院切除についても触れたいと思います。本記事を読むことで、大腸ポリープの切除について理解を深めていただけたらと思います。

1章、大腸ポリープ切除

大腸ポリープ切除の正式名は、「内視鏡的大腸ポリープ切除術」と言います。また、大腸ポリペクトミーとも呼ばれます。

本章では、大腸ポリープ切除について解説したいと思います。

1-1、大腸ポリープ切除とは

大腸ポリープ切除は、金属製の輪っかを使用してキノコ状の大腸ポリープを根元から切除する治療法。

内視鏡は、下のイラストのようにスコープの先端から処置具というものを通すことができるようになっています。処置具であるスネアー(snare)と言われるものをスコープの鉗子口という穴から通してスコープの先端まで出します。スネアーを開いて、金属製の輪っかを大腸ポリープに引っかけて切除をします。

1-2、切除方法の実際

大腸ポリープの切除の方法は主に以下の2つの方法があります。

①ホット・スネアー・ポリペクトミー(HSP; Hot snare polypectomy)
②コールド・スネアー・ポリペクトミー(CSP; Cold snare polypectomy)

ホット・スネアー・ポリペクトミーは、ホット・ポリペクトミーとも言います。コールド・スネアー・ポリペクトミーは、コールド・ポリペクトミーとも言います。通常内視鏡室内では、「ホット」、「コールド」と呼んで使い分けています。

一つ一つ解説していきたいと思います。

1-3、ホット・ポリペクトミー

ホット・ポリペクトミーは、スネアーに電流を流して大腸ポリープを焼き切って切除する方法。

ホット・ポリペクトミーの場合は、処置具であるスネアーに高周波装置を接続して電流を流して大腸ポリープを焼いて切除をします。スネアーは金属でできてるため電流が流れるようになっています。切除する際に痛みは出ることは基本的にはありません。

電流を使って焼き切るホット・ポリペクトミーは、比較的大きい大腸ポリープを切除するのに適しています。大腸ポリープに太い血管がある場合などには、電気で焼き切るため血管の止血に効果的です。

大腸ポリープに太い茎(大腸ポリープの根元のこと)の場合には、太い血管があることが想定されますのでホット・ポリペクトミーで切除することが推奨されます。血管の止血という点ではホット・ポリペクトミーの方が有利ですが、電流を流すことで合併症が起こるデメリットがあります。

デメリットの一つは穿孔のリスクがあるということです。ホット・ポリペクトミーで大腸ポリープを切除した直後に穿孔をする場合もあれば、少し時間が経ってお腹の痛みが出てくることで穿孔したと分かることもあります。

私自身は、ホット・ポリペクトミーで穿孔の経験をしたことはありませんが若手の内視鏡医がホット・ポリペクトミーで穿孔を起こすのを幾度かみてきてはいます。そのほとんどはその場で穿孔していることが分かるものでした。穿孔した箇所をクリップという道具で粘膜ごと閉じてしまえば、まず問題はありません。時間が経ってから気づく場合には、緊急で外科手術が必要となることがありますので、非常に厄介です。

ホット・ポリペクトミーには、もう一つデメリットがあります。電流を流して大腸ポリープを切除した傷跡の部分の血管から出血をすることがあります。この術後出血は、切除してから1週間程度は出血のリスクが残ります。そのため、大腸ポリープを切除してから1週間程度は、激しい運動やアルコール摂取・長風呂などを控える必要があります。

1-4、コールド・ポリペクトミー

コールド・ポリペクトミーは、スネアーを閉じて大腸ポリープを鈍的に千切って切除する方法。

コールド・ポリペクトミーの場合は、電流は使用せずに金属製のスネアーをギュッと閉じてポリープを物理的に千切って切除する方法です。コールド・ポリペクトミーは、電流を使わずに金属製の輪っかのスネアーでポリープをそのまま千切って切除するため、ホット・ポリペクトミーで起こり得る穿孔と術後の出血のリスクが非常に低い手技です。切除の際に痛みが出ることはありません。

コールド・ポリペクトミーは、スネアーを引っかけて鈍的に大腸ポリープを千切るだけですので、あまり大きな大腸ポリープを切除することができません。コールド・ポリペクトミーは、10mm以下の大腸ポリープ切除に適していると考えられます。コールド・ポリペクトミーという手技自体は、非常に簡便な治療法で合併症も少ない手技と考えられています。

術後の出血がほとんどないため日帰り大腸ポリープ切除に適した手技です。当クリニックでも基本的には、コールド・ポリペクトミーで大腸ポリープを切除しています。ただし、1cmを超えるような大腸ポリープや太い血管の存在が予想される大腸ポリープに関しては、ホット・ポリペクトミーでの切除が望ましいです。

2章、日帰り大腸ポリープ切除

日帰り大腸ポリープ切除は、入院することなく検査のついでに大腸ポリープを切除して帰宅が可能です。ポリープのサイズや形・常用しているお薬・健康状態などによっては日帰りで切除が難しい場合もあります。

本章では、日帰り大腸ポリープ切除について解説したいと思います。

2-1、日帰りの対象ポリープ

日帰りで切除が可能な大腸ポリープのサイズは1cm前後。

1cm前後の大腸ポリープであれば日帰りで切除が可能です。以下のような大腸ポリープで1cm前後のものが切除の対象となります。大腸ポリープにはいくつかの種類がありますが、以下のようなものが日帰り大腸ポリープ切除の主な対象となります。

・腺腫(アデノーマ)
・鋸歯状ポリープ(過形成性ポリープ・SSA/P・TSA)
・炎症性のポリープ  など

大腸腺腫

大腸腺腫は、大腸ポリープの約80%を占めていると言われています。大腸腺腫は、ある一定の大きさになると癌になると言われています。数mm程度の大腸腺腫であれば問題ないと言われていますが、10mmを超えてくると担癌率(ポリープに癌が含まれる確率)が高くなると言われています。

10mm以下の大腸腺腫の場合、その担癌率は数%程度と言われていますが、15mm以上の場合には、20%以上になるとも言われています。小さな大腸腺腫の場合でも癌化をすることがあります。数mm程度の大腸腺腫でも癌が含まれていることが稀にですがあります。そのため検査中に大腸腺腫が発見された場合には、切除をすることが望ましいと考えられています。

大腸ポリープ

大腸腺腫の写真

SSA/P(エス・エス・エー・ピー)

鋸歯状ポリープの一種であるSSA/Pは、sessile serrated adenoma/polypの略で欧米ではSSL(sessile serrated lesion)とも言われています。このSSA/Pは癌化する可能性があると言われている大腸ポリープの一つです。米国からの報告では、SSA/Pを有している患者さんは、大腸がんを発症するリスクが高かったと報告されています。当クリニックでも検査中にSSA/Pを発見した場合には、その場で切除するようにしています。

TSA(ティー・エス・エー)

TSAは、鋸歯状ポリープの一種で鋸歯状腺腫と言われるものです。TSAも癌化の可能性がある大腸ポリープです。5mm以上のTSAに関しては、切除が推奨されています。

大腸ポリープに関しては、詳しく「大腸ポリープってどんな病気で、なぜ切除しなければならないの?」で解説していますので、どうぞご参照ください。

2-2、日帰りの流れ

日帰り大腸ポリープ切除は大腸内視鏡検査を受けてその場で切除をする。

日帰り大腸ポリープ切除では、大腸内視鏡検査の流れの中で大腸ポリープをその場で切除をします。事前の問診でその場での大腸ポリープ切除に同意をしている場合には、切除を検査医師の判断で行います。

発見された大腸ポリープが1cm程度で、出血のリスクが低いと判断されればその場で切除を行います。発見された大腸ポリープが1cmよりも大きいものや1cm以下でも出血のリスクが高そうな大腸ポリープの場合には、入院での切除となる可能性もあります。

入院での切除が望ましいと判断された場合には、後日入院施設のある医療施設で切除となります。当クリニックでは、関連病院での切除が可能となっています。

2-3、日帰りのメリット

日帰り大腸ポリープ切除の最大のメリットは、その日に帰宅できる。

なんといっても大腸ポリープを切除した後にその日に帰宅できるということが日帰り大腸ポリープ切除の最大のメリットです。また経済的にも入院で追加される分の費用がお得となります。

2-4、日帰りのデメリット

日帰り大腸ポリープ切除のデメリットは、帰宅後に出血などの合併症のリスクがある。

大腸ポリープ切除の合併症としては主に術後出血と穿孔のリスクがあります。穿孔に関しては治療後すぐに判明することが多いため帰宅後に問題となることは少ないのですが、術後出血に関しては24時間以内に起こることが多いため帰宅後に起こる可能性があります。大腸ポリープ切除後の出血は、高い確率ではありませんが1%(100人に1人)程度の確率で起こります。

万が一帰宅後に出血をした場合には、治療をした医療機関に連絡を取る必要があります。入院施設や夜間対応を行っている医療機関で切除をした場合には問題ありません。クリニックなどで入院施設が無い場合や夜間治療の対応ができない医療機関で切除をした場合には、ご自身で受け入れてくれる医療機関を探すか救急車を呼ぶ必要があります。

当クリニックでは、当法人の関連病院があります。大腸ポリープ切除後の患者さんには直通で通じる電話回線を用意しており、万が一ご帰宅後に術後出血をされた場合でもスムーズに出血の処置および入院が可能となっています。ご安心いただければと思います。

大腸ポリープ切除後の出血については、「24時間以内に起こることが多い大腸ポリープ切除後の出血;出血した場合にはどうすればいいの?」で詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。

3章、入院大腸ポリープ切除術

当クリニックでは、1cm前後の大腸ポリープに関しては積極的に日帰りで切除をして皆様にご帰宅いただいています。2cm程度の大腸ポリープでも、ポリープが存在する部位やポリープの形状によってはその場で切除をすることも可能です。

3-1、出血のリスクが高い場合には入院で

出血のリスクが高いことが予想される大腸ポリープに関しては、日帰りではなく入院での切除を推奨しています。安全に治療を受けていただきたいと考えております。

出血のリスクが高い大腸ポリープや患者さんの持病・内服しているお薬によっては、入院での切除が必要となることがあります。その場合には、当クリニックの医師が所属している関連の病院で入院していただき、大腸ポリープを切除することをお勧めしています。関連病院では、当クリニックの担当医が治療を行っていますので安心して治療に望めます。

3-2、入院での大腸ポリープ切除とは

入院での大腸ポリープ切除は、基本的には1泊入院で行います。入院した日に大腸の前処置をしていただき、その日に大腸ポリープを切除をします。1日様子をみて翌日出血が無いことを確認してから退院となります。

切除後の最初の24時間以内が出血のリスクが一番高いと言われています。そのため1泊は入院で経過を見るということが非常に大事です。切除した大腸ポリープの大きさや持病・内服しているお薬によっては2泊や3泊になることもありますのでご留意ください。

まとめ

今回は、「日帰り大腸ポリープ切除(大腸ポリペクトミー)について」を解説いたしました。本記事のポイントとしては下記のようになります。

・日帰りで切除が可能な大腸ポリープのサイズは1cm前後
・ポリープのサイズや形・常用しているお薬・健康状態などによっては日帰りで切除が難しい
・日帰り大腸ポリープ切除のデメリットは帰宅後に出血などの合併症のリスクがある
・万が一帰宅後に出血をした場合にはご自身で受け入れてくれる医療機関を探すか救急車を呼ぶ必要がある

本記事を読むことで大腸ポリープ切除についての理解を深めていただけたら幸いです。当クリニックでは、大腸ポリープ切除後の術後出血に対しても迅速に対応できるように体制を強化していきたいと思います。

大腸ポリペクトミーについてご質問のある患者様に関しましては、担当の外来医師にご気軽にご相談ください。

当クリニックでは、24時間WEBにて大腸内視鏡検査の予約が可能です。

電話での予約は下記より承っています。

Lazarus R et al. The risk of metachronous neoplasia in patients with serrated adenoma. Am J Clin Pathol 2005; 123: 349-59.

※2022年2月10日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年3月13日に再度公開しました。

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東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>

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尚視会での内視鏡検査・診察は24時間予約を承っています。

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