逆流性食道炎の治し方とは?症状・初期治療やお薬について専門医が解説

胸やけ

「最近胸焼けがするけどどうしたらいいのか?」
「寝起きに口の中が苦い」
「食後に酸っぱいものが上がってくる」

というようなことはないでしょうか?暴飲暴食やたばこの吸い過ぎ・ストレス・体重増加・運動不足などが原因となりいわゆる逆流性食道炎の症状がでることがあります。上記のような症状が続く場合には、生活習慣の改善や検査および内服治療が必要となることがあります。

検査は、胃カメラを行い食道の炎症の程度を判断します。食道の粘膜にただれや発赤・びらんなどが認められる場合には、内服治療を行います。基本的には、PPI(パリエット®、ネキシウム®など)もしくはP-CAB(タケキャブ®)という胃酸を抑えるお薬を中心に処方することが多いです。PPIやP-CABを内服することで胃酸が抑えられ胸焼け症状などは改善します。

今回は、逆流性食道炎について症状やその内服治療を中心に解説したいと思います。本記事を読むことで逆流性食道炎の症状や治療について理解を含めていただきその予防や対応に努めていただけますと幸いです。

1章、逆流性食道炎

逆流性食道炎は、GERD(ガード)とも呼ばれ食道内への胃酸の過剰な暴露が原因となるご病気です。

本章では逆流性食道炎について解説したいと思います。

1-1、逆流性食道炎とは

逆流性食道炎は胃酸が食道に上がってきて、胃酸により食道の粘膜がただれたり、逆流による胸焼け症状がでるご病気です。日本では、1990年代より徐々に逆流性食道炎は増加してきています。その理由としては、食生活の欧米化による高脂肪食の摂取やピロリ菌の感染率の低下などが理由となっています。

逆流性食道炎は、多くの方が悩む国民病の一つでおおよそ10人1人(約10%)くらいの割合でかかる病気の一つです。逆流性食道炎は、大きく分けて以下の3つに分類されます。

・非びらん性逆流症(NERD)
・軽症逆流性食道炎
・重症逆流性食道炎

各々で治療方針が異なります。分類をするためには、診断が必要となります。診断のためには診察により問診を行い、必要に応じて胃内視鏡検査(胃カメラ)が必要となります。胃カメラを行うことで食道の粘膜にただれやびらん・潰瘍などができていないかを観察します。胃カメラでの診断分類は、ロサンゼルス分類という分類を使用して軽症か重症かを判断します。

下記の分類がロサンゼルス分類です。

実際の内視鏡画像

軽症: Grade A とGrade B
重症: Grade C とGrade D

食道の粘膜にただれやびらん・潰瘍のことを粘膜傷害と言い、MB(mucosal break)とも呼ばれています。

一方、胃酸の逆流による胸焼け症状などはあるが食道に粘膜傷害みられない場合は、NERD (ナード)と呼ばれます。NERDとは、non-erosive reflux diseaseの略です。粘膜傷害を伴わないNERDは逆流性食道炎のうち約60%、粘膜傷害を伴うGERDは逆流性食道炎のうち約40%と言われています。

胃カメラを行い食道に粘膜傷害がみられない場合でも慢性的に胃酸が食道に逆流している可能性があり得ます。

1-2、逆流性食道炎の症状

逆流性食道炎の症状としては以下のようなものがあります。

・胸焼け症状
・呑酸(口の中の苦み・酸っぱい感じ)
・みぞおちの不快感や痛み
・食後にみぞおち辺りに不快感を感じる
・食べ物や飲み物が食道でつかえるような感じがする
・咳やのどのイガイガが続く

以上のような症状続く場合には、逆流性食道炎の可能性があります。一度専門外来での診察ないし胃カメラを受けて診断をする必要があります。

当クリニックでは、24時間WEBにて診察・検査の予約が可能です。下記よりお進みください。

電話での予約は下記より承っています。

1-3、逆流性食道炎の診断には胃カメラ

逆流性食道炎の診断には胃カメラが重要。

逆流性食道炎の診断では、症状などの問診を確認することも重要ですが、実際に食度の粘膜に粘膜傷害を認めるかどうかを確認することも重要です。粘膜傷害の程度により治療方針が変わってくるため逆流性食道炎が疑われた場合には、積極的に胃カメラを受けていただくことをお勧めします。

胃カメラを受けていただくことが大事な理由としては、他のご病気のこともあり得るからです。実は症状が腫瘍が原因だったとか、好酸球性食道炎というような特殊なご病気であった、というようなこともあり得ます。

1-4、逆流性食道炎になりやすい人とは

逆流性食道炎になりやすい人は下記のような方です。

・肥満の方
・煙草を吸う方
・食生活が不規則な方
・ストレスがある方

上記に当てはまる方は逆流性食道炎のリスクがあるため気をつける必要があります。

1-5、逆流性食道炎に影響する食事とは

逆流性食道炎に影響する食事・食べ物には以下のようなものがあります。

・高脂肪食
・刺激性のある食べ物
・甘味食
・アルコール
・カフェイン

一つ一つ解説していきたいと思います。

高脂肪食

肉類や揚げ物・とんこつラーメン・などの高脂肪食は胃酸や胃の消化物を食道へ逆流しやすくさせると報告されています。脂肪だけではなくカロリーが高い場合も食道への逆流に関係すると報告されています。一度にたくさんの食事を摂ることも逆流性食道炎に影響するためバカ食いは控えるのが良いでしょう。

刺激性のある食べ物

唐辛子やコショウなどの刺激のあるものも逆流性食道炎に影響すると言われています。オレンジ・レモンなどの柑橘類も刺激になると考えられています。刺激性のある食べ物は、直接食道の粘膜を刺激することで逆流症状が起こると考えられています。

甘味食

ケーキ・チョコレートなどは逆流性食道炎に影響すると言われています。日本食である饅頭やあんパンなどの甘味食も逆流性食道炎の症状に影響を及ぼすと言われていますので、逆流症状がある場合には控えるべき食べ物の一つです。

アルコール

アルコールも逆流性食道炎に影響します。アルコールを摂取すると胃酸の食道への逆流を引き起こすと報告されています。日本人男性の逆流性食道炎の発症にアルコールが影響していると報告されています。

カフェイン

カフェインを摂取すると胃酸が大量に分泌されます。胃酸の大量分泌により胸焼け症状が引き起こされます。

2章、逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療は、生活習慣の改善から内服治療・内視鏡および外科治療など幅広く存在します。本章では逆流性食道炎の治し方である治療について解説したいと思います。

2-1、生活習慣の改善

生活習慣の改善としては下記のようなことが重要です。

・食べ過ぎを控える
・高脂肪食を控える
・甘味食や香辛料などの刺激のある食べ物を控える
・アルコールを控える
・肥満の場合は減量(ダイエット)をする
・遅い夕食および就寝前の飲食を控える
・禁煙をする
・就寝時に頭位挙上をする
・左側臥位での就寝をする

などが生活習慣の改善として挙げられます。

2-2、内服治療(PPI)

PPIは逆流性食道炎の治療で使用されるお薬。

PPI(ピー・ピー・アイ)とは、プロトンポンプ阻害薬と言いproton pump inhibitorの略です。PPIには、酸分泌抑制効果と言って胃酸を抑える効果があります。胃酸の産生を抑制することで逆流性食道炎の症状を改善することができます。PPIには、下記のようないくつかの種類があります。

・オメプラゾール(omeprazole)
・ラベプラゾール(rabeprazole)
・エソメプラゾール(esomeprazole)

逆流性食道炎の初期治療ではPPIが使用されることが多いです。PPIは胃酸を抑える効果に優れたお薬ですが、効果の発現まで若干時間がかかるという弱点があります。PPIは、内服を開始してから2、3日経たないと十分な効果が得られないことがあります。

この弱点である効果発現の時間を短縮したお薬がP-CABです。

PPIのもう1つの課題は,効果発現までの立ち上がりが遅く,服用してから3~5日間程度経過しなければ十分なが得られないことです。この効果発現が遅いという特徴は,初期治療の場合は現に症状を訴える患者さんにとっては負担を与えるものですし,その後に維持期に入った患者さんに対し,症状が出た時に随時服用するという「オンデマンド療法」を行う際にはあまり適さないものです。

2-3、内服治療(P-CAB)

P-CABは効果発現が早い逆流性食道炎のお薬。

P-CAB(ピー・キャブ)とは、カリウムイオン競合型アシッドブロッカーとも言いpotassium-competitive acid blockerの略です。

P-CABは重症の逆流性食道炎の初期治療やPPIの効果が悪い方に使用されることが多いお薬です。P-CABは、PPIより酸分泌抑制効果が強力で効果までの発現が早いと言われています。 

オンデマンド療法

P-CABは、お薬を飲んだ後おおよそ3時間くらいで効果がでます。酸分泌抑制効果の発現の立ち上がりが非常に速いためオンデマンド療法という治療法に適したお薬と考えています。

オンデマンド療法とは、症状が出たときのみお薬を内服して症状の改善を図る治療法です。PPIでは効果の発現が遅いためオンデマンド療法には適していませんでしたが、P-CABの場合はすぐにお薬の効果がでるためオンデマンド療法に適していると考えられます。

逆流性食道炎をお悩みの方の場合、長期にお薬を内服しなければならない方が非常に多くいらっしゃいます。長期のPPIやP-CABの内服は人体に対して様々な悪影響をもたらすと考えられています。オンデマンド療法であればお薬の内服回数を減らし人体への影響を最小限にする可能性があります。また経済的にもメリットのある事かと考えられます。

*保険でのオンデマンド療法はまだ認められていません。今後の研究結果次第では、オンデマンド療法が解禁となるかと思われます。

2-4、その他のお薬

PPIやP-CAB以外にも逆流性食道炎で使用されるお薬があります。以下のようなものが挙げられます。

・消化管運動機能改善薬(ガスモチン・ナウゼリンなど)
・漢方薬(六君子湯など)
・知覚過敏改善薬(三環系抗うつ薬、SSRIなど)

などが使用されます。PPIやP-CABなどで効果が不十分の場合に使用されることが多いです。

2-5、長期の内服治療(PPI・P-CAB)は慎むべき

一番の問題となるのは、症状は重いが内視鏡所見は軽度という方です。このような患者さんの場合には、症状が長く続くため長期にPPIないしP-CABを内服することが必要となる場合が多い印象です。PPIないしP-CABは胃内における胃酸分泌を強力に低下させます。

長期の胃酸分泌の低下に伴い、下記のような人体への影響をもたらす可能性があると報告されています。

・鉄欠乏
・ビタミンB12吸収障害
・カルシウム吸収障害
・ガストリン産生上昇
・消化管感染症
・腸内細菌叢の乱れ

上記のような弊害により、貧血・骨粗鬆症・胃ポリープ増加・感染症などにかかり易くなる可能性があり得ます。

長期のPPI・P-CABの内服は胃液による殺菌作用やビタミンやミネラル(人体に必要な微量元素)の吸収に影響を及ぼします。なるべく長期の服用は避けたいものですが、症状が続く場合にはお薬を中止することも難しいと思います。PPIやP-CABを断続的に内服するかオンデマンド療法が望ましいのではないかと思われます。

*PPIの長期投与の安全性とP-CABの短期投与の安全性については、安全は高いと報告されています。

外来診療で胸焼け症状のある患者さんの治療で、いつも聞かれるのが「お薬をいつまで飲み続ければいいのでしょうか?」という質問です。患者さんの心配としては、いつまでお薬を内服しないといけないのかということになるかと思います。

症状が軽く内視鏡の所見も軽い方ですと、1~2週間程度内服して症状が落ち着けばそのまま一旦内服終了となります。症状は軽いが内視鏡の所見が重症の方ですと、食道の粘膜が正常となるまで内服が必要となることがあります。患者さんによっては比較的長期に内服してもらわないといけないこともあります。

お薬の服用に関しては、専門外来にてご相談いただけたらと思います。

2-6、重症は内視鏡治療や外科治療も

重症の逆流性食道炎である、いわゆる難治性逆流性食道炎ではPPIやP-CABの効果が悪くお薬に対して抵抗性があります。このような場合には、まだ研究段階ではありますが内視鏡治療や外科治療が行われることもあります。

難治性逆流性食道炎に対して行われる内視鏡治療

・内視鏡的縫縮術
・内視鏡的ラジオ波焼灼術
・内視鏡的注入療法

などがあります。いずれも胃から食道への逆流を防止する治療法です。今後の研究の結果が待たれます。

外科治療としては以下のようなものがあります。

・腹腔鏡下噴門形成術

難治性の逆流性食道炎の場合に以上のような治療法が考慮されることもあり得ます。

まとめ

今回は、逆流性食道炎の症状や初期治療を中心に解説をしました。本記事のポイントとしては下記のようになります。

・逆流性食道炎の原因は食道内への胃酸の過剰な暴露
・逆流性食道炎の診断には胃カメラが重要
・生活習慣の改善として食べ過ぎや高脂肪食を控えるなどのことが重要
・逆流性食道炎のお薬はPPIやP-CABがある。PPIは効果発現が早い
・なるべく長期のPPI・P-CABの内服慎むべき

以上逆流性食道炎の症状・治療についての解説でした。本記事を読んでいただき逆流性食道炎について理解を深めていただけますと幸いです。

当クリニックでは、専門外来で逆流性食道炎の診察が可能です。下記よりWEB予約にお進みください。

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※2022年3月8日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年3月15日に再度公開しました。

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・藤原靖弘:GERD 疫学―最近の動向―.日本消化器病学会雑誌2017; 114: 1781-1789.
・Malfertheiner P, et al. Evolution of gastro-oesophageal reflux disease over 5 years under routine medical care–the ProGERD study. Aliment Pharmacol Ther 2012; 35: 154-164.
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