便潜血検査が陽性の場合にはどうすれば?専門医が解説

「大腸がん検診のお知らせかぁ、関係ないかな」
「検診は面倒だな・・・」
「今度の機会でいいかなぁ・・・」

大腸がん検診は、40歳を過ぎるとお住まいの各自治体から届くかと思います。大腸がん検診は、便の中に血が混ざっていないかどうかを確認する便潜血検査を行うものです。上記のように検診をスルーしてしまう方も多いかと思います。

大腸がん検診は、便を採取して検体を提出するだけですので非常に簡便で楽な検査です。企業健診や一般健診・人間ドックなどでも便潜血検査を受けることができます。

便潜血が陽性となった場合には、精密検査である大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けるのが一般的です。当クリニックでも多くの便潜血陽性の患者さんが来院され大腸内視鏡検査を受けられています。

大腸がん検診は、大腸がんの早期発見のために非常に重要な検査となっています。本記事では、大腸がん検診である便潜血検査の重要性について解説しています。本記事を読むことで、便潜血検査ついて理解を深めていただけたらと思います。

1章、大腸がん検診で行われる便潜血検査

大腸がん検診で行われる便潜血検査とはどのようなものなのか本章では詳細に解説していきたいと思います。

1-1、便潜血検査とは

現在日本で行われている便潜血検査は、免疫法便潜血検査(IFOBT;Immunochemical fecal occult blood test)。

日本で行われている免疫法便潜血検査(以下、便潜血検査)は、大腸がんにより死亡率減少効果が60-81%認められるということが証明される有用性の高い検査方法です。

便潜血検査では、2日分の便を採取して検査に提出します。なぜ2日分提出するかというと、2日分の検査を提出することで、大腸がんの拾い上げの効果が高くなると言われているからです。統計的に有用性が高くなるとされているため、便の採取を2日間してもらうようになっています。

1-2、大腸がん検診

現在の大腸がん検診方法は以下のようになっています。

・対象年齢:原則として40歳以上の男女
・検診間隔:逐年検診
・検診方法:スクリーニングとして便潜血検査2日法
・精密検査:全大腸内視鏡検査を第一選択

*全大腸内視鏡検査が困難な場合には、S状結腸内視鏡検査+注腸検査の併用
*精密検査の代わりに便潜血検査を再度行うのは不適切

というような内容になっています。40歳以上の方は、大腸がんのリスクが高くなるため便潜血検査を受けることが推奨されています。

大腸がん検診については、「大腸がん検診では何をするの?費用はいくら?専門医が解説します」で詳しく解説しています。ぜひご参考にしてください。

1-3、1回でも陽性になれば精密検査

便潜血検査で陽性となった場合には、大腸がんに対する精密検査として大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必要。

便潜血検査は2日分の結果が出ますが、1日でも陽性となったら大腸がんのリスクがあるため大腸内視鏡検査を受けることが大事です。

よく「1日分が陰性だったから精密検査は必要ないだろう」と自己判断される方がいますが、1日でも陽性であれば大腸がんのリスクがあるため精密検査である大腸カメラが必要です。

人によっては「痔からの出血だろう」などと自己判断される方もいらっしゃいますが、自分で判断せずに消化器の専門外来を受診されることが望ましいと考えます。

2章、便潜血検査の大腸がん

便潜血検査で発見される大腸がんと一般の外来で発見される大腸がんには、ある違いがあります。本章ではその違いについて解説したいと思います。

2-1、便潜血検査が陽性で発見される大腸がん

便潜血検査が陽性で発見される大腸がんは、70%が早期の大腸がん。

便潜血検査を受けて陽性と診断された場合は、精密検査である大腸内視鏡検査を受けます。この場合には、多くの大腸がんが早期の段階で発見されることが多いと報告されています。

そのため便潜血検査で陽性となった場合には、必ず精密検査である大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2-2、一般外来で発見される大腸がん

一般の外来で大腸カメラを行う患者さんは70%が進行した状態で発見される。

便潜血検査と一般外来では、まったく逆のデータとなっており非常に驚くべき結果です。一般の外来から大大腸内視鏡検査を受けられた患者さんは、恐らく何らかの症状が出て初めて大腸カメラを受けられることが多いと思います。症状がでた段階では、すでに大腸がんが進行した状態となってしまっていることが多いことが推測されます。

そのためしっかりと大腸がん検診を受けることが大事です。大腸がん検診で便潜血陽性と診断された場合には、早め早めに大腸内視鏡検査を受けていただき、早期の段階で大腸がんを発見して早期での治療が重要なこととなります。

便潜血検査で陽性となったのを放置して、後々症状などが出て検査を受けた場合には外科手術や化学療法が必要になってしまうこともあり得ます。ご自身やご家族の生活設計にも影響がでてくる可能性を考えてしまうと、便潜血検査は決して無視のできない検査であると考えられます。

3章、便潜血検査で陽性となったら

便潜血検査が陽性となったら精密検査である大腸内視鏡検査を受けることとなりますが、その精密検査を受ける人の割合は非常に低いというデータが出ています。

3-1、精密検査を受ける人の割合は

精密検査の受検率の割合は、おおよそ50~60%程度。

便潜血陽性の方の2次精密検査受検率(大腸内視鏡検査を受ける人の割合)は、日本では50~60%と非常に低い値となっています。このため早期発見・早期治療の機会損失となっています(その割合は、地域によって相違があります)。

大腸がんで亡くなる方は、年間5万を超えておりがんの中では肺がんに次ぐ第2位となっています。女性に限りますと第1位で、さらに大腸がんは若年化傾向にあり皆様の人生の中で決して無視のできないご病気になりつつあります。

2-2、陽性となった場合は必ず大腸内視鏡検査を

便潜血検査が陽性となった場合には「恐らく痔からの出血だろう」、「2日のうち1日だけの陽性だから問題ない」などとは自己判断せず、消化器内科・消化器内視鏡科を専門とする専門外来でご相談してください。

必ず大腸内視鏡検査を受けていただくことが大事です。大腸内視鏡検査は、以前と比べ楽に検査を受けられるようになっています。鎮静剤(静脈麻酔)を使用すれば、ほぼ無痛で検査が可能です。便潜血陽性となった場合には、検査をためらわずお近くの内視鏡を専門としている内視鏡クリニックで、まずは検査を受けられるのが良いと思います。

大腸内視鏡検査に関しては、「マンガでわかる!大腸内視鏡検査」でも詳しく解説してますので、ぜひご参考にしてください。

当クリニックでは、24時間WEBにて大腸内視鏡検査の予約が可能です。

電話での予約は下記より承っています。

4章、便潜血検査が陰性であった場合

便潜血検査が陰性であった場合には、まったく大腸がんに関して配慮をしなくてもいいのでしょうか?本章では陰性であった場合の考え方について解説したいと思います。

4-1、陰性の場合には

便潜血検査が陽性であった場合は、大腸がんの可能性があるため精密検査として大腸内視鏡検査を受けることとなります。陰性の場合はどうなのでしょうか?これに関しては、なかなか難しい問題です。

というのも便に血が混ざらなかったとしても、必ず「大腸がんが無い」ということの証明にはならないからです。確率的には低いものとなりますが、便潜血陰性の中には一定の割合で大腸がんが存在することもあり得ます。

4-2、陰性の場合の大腸がん

私自身も自分の患者さんから「便潜血が陰性でしたがお腹の調子が良くない」などの相談を受けて大腸カメラを行ったところ、進行した大腸がんが発見された方が何名かいらっしゃいました。あくまで一医師としての経験です。

便潜血検査自体は、大腸がんのリスクがある方を振り分けるという点で非常に優れた検査ではあります。ただし、一人一人の患者さん個人のことを考えますと、確実に信頼に足る検査であると言い切ることは難しいかもしれません。

お腹に症状がある場合やご家族で大腸がんを患った方がいるなどの場合には、陰性だから大丈夫とは考えずに一度消化器科の専門外来でご相談いただくことが肝要です。

5章、便潜血検査に代わる新たな便検査

便DNA検査

便潜血検査に代わり米国では、便DNA検査が最近行われているようです。便DNA検査は、便中のDNA(遺伝子)の異常を解析して大腸がんを診断する検査です。この便DNA検査ですが、複数のDNA異常を検査することから「複数標的糞便DNA検査」とも言われています。

論文の報告では、便潜血検査より大腸がん・一部の大腸ポリープの発見率は高いと報告されていますが、偽陽性といって正常の方も誤って拾い上げてしまう率が高いとも言われています。

ただし、この検査ですが決して安くない検査とも言われています。今後日本で導入されるかどうかは分かりませんが、導入されればさらに大腸がん診療の幅が広がっていくのではないかと思われます。

まとめ

以上が「便潜血検査が陽性の場合にはどうすれば?専門医が解説」についてでした。本記事のポイントとしては下記のようになります。

・便潜血検査は、大腸がん死亡率減少効果が60-81%の有用性の高い検査である
・便潜血検査が陽性となれば大腸内視鏡検査を必ず受ける
・便潜血検査が陽性で発見される大腸がんは早期がんが多い
・便潜血検査が陰性であったとしても大腸がんが無いとは必ずしも言えない

以上のポイントを理解して大腸がん検診である便潜血検査を受けていただけたらと思います。

当クリニックでは、日ごろの日常生活で忙しい皆様のために、土曜日・日曜日も大腸内視鏡検査を受けていただくことが可能です。大腸内視鏡検査は、静脈麻酔を使用した無痛大腸内視鏡検査を行っています。静脈麻酔について詳しく知りたい方は、「内視鏡検査における静脈麻酔(鎮静剤)のメリットとデメリットとは?」をご参考にしてください。

下記より24時間WEBにて大腸内視鏡検査の予約が可能です。

電話での予約は下記より承っています

※2021年11月22日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年3月26日に再度公開しました。

Saito H, et al. Reduction in risk of mortality from colorectal cancer by fecal occult blood screening with immunochemical hemagglutination test. A case-control study. Int J Cancer 1995; 61: 465―469.
Hiwatashi N, et al. An evaluation of mass screening using fecal occult blood test for colorectal cancer in Japan: a case control study. Jpn J Cancer Res 1993; 84: 1110―1112.
町井涼子,他. 大腸がん検診の実施体制―精度管理.C 市町村における精度管理.大腸がん検診マニュアル,大腸がん検診精度管理委員会編,医学書院,東京,2013; 54―57.
斎藤 博. 大腸がん検診の実施体制―精度管理.F 大腸がん検診実施体制上の問題点.大腸がん検診マニュアル,大腸がん検診精度管理委員会編,医学書院,東京,2013; 60―61.

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