
目次
「胃がんは日本人に多いって聞くけど実際はどうなんだろう?」
「胃がんを予防するってどうしたらいいんだろう?」
胃がんに関して皆さんどの程度知っているかというと、ピロリ菌が胃がんの原因となる程度は知っているかもしれませんが細かいことに関してまでは知らないと思います。胃がんの原因を知ることで胃がんの予防につながることが可能です。
胃がんは欧米人に比べて、日本人に多く、皆さんの身の回りの御高齢の方にも胃がんを患ってしまった方がいらっしゃるのではないでしょうか。国立がん研究センターが発表しているがんの統計ランキングで2019年度では、全体のがんの中で、胃がんは罹患数・死亡数ともに第3位であり、常に上位に位置しており、日本人に多いがんのひとつです。
胃がんは癌の中でも、極めて効果的な発病予防手段があります。早期発見さえすれば治癒可能ながん疾患の一つと考えられています。この点はぜひ皆さんに知っていただきたいので、詳しく解説していきたいと思います。
1章:胃がんの予防は大きく2種類
がんの予防には、1次予防と2次予防があります。
1次予防:食事内容、喫煙や飲酒習慣、運動、などの日常的なことを変えることでがんの予防に努めること
2次予防:検診などで検査を受けることでがんの早期発見を行い、早期治療につなげること
以上の2つの予防法を理解することで、胃がんからご自身ご家族の身を守っていくことが出来るかと思います。
1-1:胃がんの1次予防
胃がんの1次予防は、以下のようなリスクを避けることで予防につながる可能性があります。
・飲酒
・喫煙
・ヘリコバクター・ピロリ菌感染
・塩分過多
・野菜摂取不足
胃がんの予防には、リスク因子を把握して生活習慣を改善することが重要です。
胃の構造や仕組みを理解することも、予防の第一歩になります。
1-2:胃がんの2次予防
1次予防も大切ですが、胃がんにおいては2次予防である定期検査が非常に重要とされています。
・胃内視鏡検査(胃カメラ)
・胃X線検査(バリウム検査)
・ピロリ菌検査
・ABC検査(胃がんハイリスク検診)
・CT検査
中でも、胃内視鏡検査(胃カメラ)は微小な病変の発見が可能で、ピロリ菌感染の有無の診断もでき、病理組織の採取も可能なことから特に推奨されています。
胃がんの予防や検査については、下記の医療コラムも参考になります。
1-3:予防に重要なのが2次予防
胃がんは、生涯がん罹患リスクが非常に高く、男性で10人に1人、女性で21人に1人が罹患すると言われています。
1次予防を徹底したとしても、一定の確率で発症することがあるため、2次予防として定期的な検査が重要です。
粘膜内にとどまっている胃がんは、表層にとどまっており、進行していない状態。つまり早期がんです。この状態であれば、内視鏡的な治療が可能となり、患者さんへの負担も少なく完治が見込めます。
2章:胃がんの予防法
胃がんの種類や進行速度、発症年齢などは個人差があります。この章では胃がんの特徴と、2次予防による早期発見の重要性について解説します。
2-1:胃がんならではの特徴を把握する
通常の胃がんは40代からリスクが上がり、60~70代に多く見られますが、若い方でも「スキルス胃がん」にかかることがあります。
2-2:疑わしい症状が出たら2次予防を優先して検査を
以下のような症状がある場合は、念のため胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
・胃の痛みや不快感
・吐き気、黒色便、吐血
・食欲不振や体重減少
・ふらつき、貧血の症状
早期の胃がんでは自覚症状がほとんどないため、症状が出た時点で進行している可能性も。定期的な検査が唯一の早期発見方法です。
胃の症状や検査について、より身近に感じていただけるよう、胃の働きと検査の重要性をマンガで解説したコンテンツもご用意しています。
▶ マンガでわかる!
胃の中の冒険 ~消化と胃がん予防の物語~
2-3:胃がんのリスク因子を把握しよう
ピロリ菌感染
ピロリ菌は幼少期に感染し、慢性的な胃炎を引き起こします。この状態が長期にわたると「萎縮性胃炎」となり、がん発症のリスクが高まります。
食生活・飲酒・喫煙との関係
新鮮な果物や野菜に含まれる抗酸化物質(ビタミンCやカロテノイド)は、がんの発生を抑える働きがあるとされています。規則正しい生活とバランスの良い食事は、胃がん予防の基本です。
喫煙と飲酒に関しても、以下のような研究報告があります。
飲酒に関しては、特に「胃噴門部(胃の上部)」に発生するがんとの関連が強いとされています。
喫煙・飲酒・ピロリ菌のリスク比較(オッズ比)
喫煙 | 飲酒 | ピロリ菌感染 | |
---|---|---|---|
オッズ比 | 2.88(95%CI:1.26~6.62) | 1.82(95%CI:0.81~4.11) | 23.5(95%CI:6.84~80.7) |
3章:胃がん予防の注意点
ピロリ菌の除菌は非常に効果的な予防手段ですが、除菌=リスクゼロではありません。除菌後も一定の発がんリスクは残ります。
3-1:ピロリ菌除菌後も定期検査が必要な理由
除菌後は「除菌後胃がん」と呼ばれるがんが一定数見つかります。これらは通常の胃がんよりも粘膜の色や質感の変化が乏しく、内視鏡で見つけにくい傾向があります。
当院では、最新鋭のオリンパス製X1内視鏡システムを導入しており、こうした微細な変化にも対応した検査環境を整えています。
3-2:ピロリ未感染でも発症するスキルス胃がん
ピロリ菌に感染していなくても、「未分化型胃がん(スキルス胃がん)」は若い方にも発症する可能性があります。
とくに40歳未満では、検診の対象外であるケースも多く、発見が遅れがちです。胃の不調がある方は年齢に関係なく、内視鏡検査を受けておくことを推奨します。
4章:万が一胃がんが発見されたら
2次予防で早期発見ができた場合には、進行度(ステージ)に応じた最適な治療法を選択することが可能です。
4-1:胃がんのステージ分類
ステージ分類は主に以下の2つをもとに決まります。
① 胃の壁へのがんの深さ(深達度)
② 他の臓器やリンパ節への転移の有無
4-2:ステージ別治療法
治療方針は、がんの深さや転移の有無で異なります。以下は代表的な治療の選択肢です。
粘膜内にとどまる胃がん
この段階では内視鏡による切除(ESDなど)で治癒可能です。リンパ節転移の可能性も極めて低く、身体への負担も少なく済みます。
粘膜下層に浸潤した胃がん
がんが0.5mm以上粘膜下層に入り込んでいる場合は、リンパ節転移の可能性が高くなり、外科的切除が必要となる場合があります。
固有筋層やそれ以深に進行した胃がん
筋層までがんが到達していると、全身への転移も考慮して治療を進める必要があります。
遠隔転移がある場合
肝臓や腹膜などへ転移している場合は、手術による根治は難しく、化学療法(抗がん剤治療)を中心に進行を遅らせる方針となります。
まとめ
胃がんの予防と治療において重要なポイントを以下にまとめました。
- 胃がんの予防には、生活習慣を整える1次予防と、定期的な検査による2次予防の両輪が必要
- ピロリ菌除菌は予防効果が高いが、除菌後もリスクはゼロではないため内視鏡検査は継続が必要
- スキルス胃がんなど、若年層でも発症し得るタイプがあるため症状に気づいたら年齢に関係なく検査を
- 早期発見によって、内視鏡治療や低侵襲の治療が可能となり、治癒率も高まる
胃の症状や検査、予防について不安がある方は、お気軽に当院の専門外来へご相談ください。
※この記事は2022年11月3日に公開され、2025年5月11日に更新されました。
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