大腸がん検診では何をするの?費用はいくら?専門医が解説します

便潜血

「今年もなんか区から検診の案内がきているなぁ」

「忙しいし、まぁ来年でいいかなぁ・・・・」

というようなことはないでしょうか? 忙しい日常を送っていらっしゃる皆様も中にはこのようなことになっている方もいらっしゃるかとは思います。

職域検診や人間ドックなどで普段から検査を定期的に行っている方は別として、とくに大腸に関して検査を受けられていない方に関してはぜひ大腸がん検診についてよく理解をしていただきたいと思います。

大腸がん検診は、通常の医療機関で受けられる診察・検査よりリーズナブルに検査を受けることが出来ます。 検査自体も通常の医療機関で行っている検査と同様ですの安心して検査を受けていただき大腸がんの早期発見・早期治療につなげていただけますと幸いです。

今回は、大腸がんの早期発見のための大腸がん検診について詳細に解説していますので、ぜひ記事を読んでいただき理解を深めていただきたいと思います。

1992年から開始された大腸がん検診は、開始当初と比べ受検する割合も増えてきており大腸がんの早期発見・早期治療につながっているかとは思います。しかしながら、その受検率は40%程度(2019年)となっており、まだまだその普及においては時間がかかるというのが実情ではあります。

大腸がん検診は、対策型検診(populatin-based screening)といっていわゆる人間ドックなどの任意型検診(opportunistic screening)とは異なるものです。対策型検診である大腸がん検診の仕組みとその内容について解説していきたいと思います。

1-1、大腸がん検診とは

大腸がんの検診とは、「健康な人を対象として大腸の医学的検査を行い、がんの罹患を未然に防ぐ」ことです。

大腸がん検診とは、市町村などの自治体が行っているがん検診の一種です。

2007年から「がん対策基本法」が施行され、第1章の6条に国民の責務として「国民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、必要に応じがん検診を受けるよう努めなければならない。」と記載されています。

一方、医師の責務としては、7条に「 医師その他の医療関係者は、国及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力し、がんの予防に寄与するよう努めるとともに、がん患者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながん医療を行うよう努めなければならない。」と記載されており、正しい知識・情報を皆様にお伝えすることも私たち医師として大切なことと考えています。

いわゆる対策型検診といわれる大腸がん検診は、マス・スクリーニング法という方法を使用して、大腸がんの可能性が高い年齢の方から便潜血検査を用いてふるい分けるものです。

1-2、なぜ大腸がん検診が必要なのか?

なぜ大腸がん検診が必要かというと、大腸がんの早期発見・早期治療が大切なことと考えられているからです。

大腸がんは、2019年のデータにおいて罹患数*はがん疾患の中で第1位、2020年のデータにおいてがん死亡数はがん疾患の中で第2位となっており早急に対策が求められているご病気なのです。

*罹患数:一定の期間において発生した患者数のことをいう

大腸がんは日本人の一生涯において、男性では10人に1人、女性では12人に1人は罹るご病気というデータとなっています。あなたのお知り合いの中でもありふれたご病気の一つと考えるべきがん疾患です。

ありふれたご病気となりつつある大腸がんは、早期で発見して早期治療を行えば予後は良いがん疾患の一つと考えられています。早期の大腸がんで、適切な治療を行えば5年生存率は90%と以上と良好な結果が得られています。一方、遠隔転移などが見られる場合は、5年生存率は20%以下と非常に厳しい予後となっています。

もう一点大腸がん検診を受ける必要がある理由としては、大腸がんが若年化といって若い人でも増えてきているという事実があるからです。一昔前まではご高齢の方がかかるご病気という印象でしたが、近年では40代でも大腸がんにかかる方は珍しくなくなってきています。

大腸がん検診の対象は全ての日本国民で、開始年齢は40歳以上の健常者となっています。

再度お伝え致しますが、大腸がんは、早期で適切な治療を行えば5年生存率は90%と以上と良好な結果が得られています。一方、遠隔転移などが見られる場合は、5年生存率は20%以下と非常に厳しい予後となっています。そのため、40歳を過ぎたら早い段階で1度は大腸がん検診を受けていただき、できれば毎年定期的に大腸がん検診を受けていただくことを強くお勧めします。

1-3、大腸がん検診の効果

大腸がん検診では、便潜血検査が対策型検診として行われています。便潜血検査の有用性は、すでに証明されており非常に優れたマス・スクリーニングとして各自治体で行われています。大腸がん検診は大腸がんによる死亡リスクを70%低下させると、国立がん研究センターから報告されています。

また、がん検診は基本的に健常者という健康な人に対して行う検査のため検査による害などの不利益が起こらないことが望ましいと考えられています。その点、便潜血検査であれば合併症などは起こり得ることも無いため非常に優れた検査方法と考えられます。

一方、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、人間ドックや一般健診などのオプションで任意型検診として広く行われています。大腸カメラは、直接大腸内を観察することができるため大腸がんや大腸ポリープの診断がその場でできるため非常に優れた検査法です。大腸カメラは、その場で大腸ポリープを切除をすることができます。大腸ポリープの切除は、大腸がんの予防にもなると言われており非常に優れた予防法とも考えられています。

1-4、大腸がん検診の検査方法

大腸がん検診の検査は、免疫法便潜血検査(FIT; immunochemical fecal occult blood test)という方法で行われています。

大腸がん検診で導入されている免疫法便潜血検査は、1日法と2日法の2つの方法があります。

1日法:1日分だけ便検査を提出

2日法:2日分の便検査を提出

大腸がん検診では2日法が行われています。

2日法で気を付けなければならないのは、同じ便から2回分(2日分)の採取をしてはいけません!2回目は、2日目の別の便から採取をして提出する必要があります。

1-5、大腸がん検診の問診票

大腸がん検診では、下記のような問診票の記入をしてもらっています。

上の問診票は足立区のものとなりますが、

1)現在、黒い便が出る、便に血が混ざる、便が細い、便が残る感じがするなどの症状がありますか

2)血縁者に大腸がんにかかった人がいますか

3)大腸がん検診を過去にいつ受けましたか

という問診内容になっています。1)2)の問診で「はい」と回答される方は、大腸がんのリスクが高いため2次精密検査(大腸カメラ)を受けられることをお勧めします。

1章では大腸がん検診について解説してきました。40歳を超えたら1回は受けていただくことを強くお勧めしますが、具体的な費用・流れ、大腸がん検診を受けられる場所、よくあるご質問についてこれから解説していきます。

2章、大腸がん検診の費用

費用は各自治体の補助の割合によって異なります。無料クーポンが配布される自治体もあれば、500~1,000円程度かかることもあります。

*費用については各自治体にお問い合わせください。

足立区では以下のような費用となっています。

足立区大腸がん検診: 300円(生活保護受給者・中国残留邦人等支援給付受給者の方は免除制度あり)

大腸カメラの費用(3割負担で5,500円程度)と比べると非常にリーズナブルな料金となっています。

3章、大腸がん検診の流れ

大腸がん検診は、免疫法便潜血検査2日法を行います。

2日分の検体を採取して大腸がん検診を行っている各医療機関に提出する流れとなっています。

3-1、大腸がん検診のフロー

大腸がん検診の流れは以下のようになっています(足立区)。


大腸がん検診の問い合わせをする(窓口・オンライン・手紙で申し込み)

受診券を受領して各医療機関を受診(大腸がん検診を行っている医療機関)

医療機関で便潜血検査キットを受け取り(300円の支払い)、2日分の検体を採取する


医療機関に提出する

指定された時期に判定結果を確認する


陽性だった場合は精密検査を受ける

3-2、陽性の場合は精密検査(大腸内視鏡検査)が必要

大腸がん検診である免疫法便潜血検査で陽性となったら精密検査(大腸カメラ)が必要です!1回でも陽性であれば必ず大腸カメラを。

便潜血検査キット

便潜血

便潜血検査は2日分提出しますが、1日分でも陽性となったら精密検査が必要となります。2日のうち1日は陰性だったから大丈夫というふうに考える方も中にはいらっしゃいますが、それは間違っています。

1日でも陽性となったら必ず精密検査である大腸カメラを受けるようにしてください。

栄研化学 便潜血機器 OC-sensor Ceres

2次精密検査は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸がん検診で陽性となった人の中で精密検査を受ける割合も低いのが問題となっています。精密検査は、大腸カメラを受けることになりますが、陽性者のおおよそ60%程度しか精密検査を受けていないと報告されています(地域によってその割合は異なるといわれています)。海外の精密検査受検率は、70~90%と言われていますので、日本の60%がいかに低いかが分かります。

4章、大腸がん検診が受けられる場所

大腸がん検診は、各自治体で受けることが出来ます。各自治体が実施しており市区町村からの大腸がん検診の案内が郵送で送られてきます。送られてきた書類やインターネットを通して受付をして、大腸がん検診を行っている各医療機関で受けられます。

*郵送が送られてこない場合もありますので、ご自身で大腸がん検診の情報を得る必要がある場合もあります。下記より各自治体のがん検診情報を得ることが出来ます。

各自治体がん検診情報

大腸がん検診を行っている各医療機関の情報は、各自治体のホームページなどに掲載されています。足立区に関しては、下記に掲載されていますのぜひご活用ください。

足立区の大腸がん検診実施医療機関

当クリニックでも大腸がん検診は行っていますので、ぜひご活用ください

5章、大腸がん検診でよくあるQ&A

5-1、大腸がん検診は万能な検査なのか?

大腸がん検診である免疫法便潜血検査は、拾い上げという意味では非常に優れた検査方法でありますが、必ずしも万能な検査ということはできません。

免疫法便潜血検査の大腸がんの拾い上げの確率は、大腸がんが進行の度合いによってことなります。いわゆる診断感度と言われるものです。早期の大腸がんの場合27.1%、軽度の進行がんの場合41.5%、中等度以上の進行がんの場合79.7%となっており、進行したものほど診断感度は高くなると考えられています。

 早期の大腸がん 軽度の進行大腸がん中等度以上の進行大腸がん
診断感度27.1 % 41.5 %79.7 %

免疫法便潜血検査は、進行した大腸がんの拾い上げには適していると考えられますが、より早期の状態での拾い上げという意味では不十分な検査であると考えられます。

右側大腸がんの診断感度は低い

免疫法便潜血検査では、出口に近い左側の大腸である左側結腸の大腸がんに関しては診断感度が高いと言われていますが、より深部の右側結腸の大腸がんに関しては診断感度が低いと言われています。そういった意味でも免疫法便潜血検査だけでは早期発見には不十分であり、大腸カメラとの組み合わせで検査を行うことをお勧めします。

夏場の検体の管理には注意が必要

便を採取した後は、冷暗所といって気温が低く日が当たらない場所に保管する必要があります。そのため夏場の場合には、冷蔵保存が必要となります。これが徹底していない場合には検査結果に影響が出ることがあります。冷蔵庫に入れるとなると、少し抵抗があるかとは思いますので、クーラーボックスで保冷剤などを使用してもらうのも一つの手かとは思います。

          

5-2、結果はいつ来るのか?

大腸がん検診の結果が来るまでには1週間から2週間程度かかります。

大腸がん検診は、便潜血の検査キットを各医療機関に提出した後、検査会社で検査を行います。その後、検査結果を各医療機関に通知してから医師による判定が行われて各受検者に結果の通知が行われます。

5-3、いずれ大腸カメラは大腸がん検診となるのか?

現在の大腸がん検診である免疫法便潜血検査は優秀な検査ではありますが、早期大腸がんの拾い上げという点では改善の余地がある検査方法です。早期大腸がんの拾い上げという点では、大腸カメラによる精査が重要です。

                                                        

欧米では、5年や10年ごとにがん検診として大腸カメラを行っている国もあり、大腸がん死亡率の低下という効果が出てきています。

大腸がん検診に大腸カメラが導入されれば、さらに大腸がんの早期発見・早期治療に貢献する可能性があると考えられます。大腸がん検診への大腸カメラの導入には、いくつかの問題があるため現時点では導入はされていません。今後の導入へ進むことが期待されています。

まとめ

大腸がん検診について解説しました。本記事読んでいただき大腸がん検診の理解を深めていただきたいと思います。大腸がん検診についてのまとめは以下のようになります。

大腸がん検診は大腸がんによる死亡リスクを低下させる

便潜血2日法のうち1日でも陽性であれば大腸カメラを

大腸がん検診の問診も重要

大腸がん検診は大腸カメラと比べリーズナブルに受けられる

大腸がんの早期発見のためには便潜血検査だけではなく大腸カメラとの組み合わせが望ましい

以上が大腸がん検診のポイントでした。大腸がん検診を大腸がんの早期発見の入り口としてぜひご活用いただくことが重要かと思います。

当院では、大腸がん検診についてのご相談に関して承っています。

Winawer SJ, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. N Engl J Med 1993; 329: 1977-1981.

Zauber AG, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. N Engl J Med 2012; 366: 687-696.

光島徹,他:死亡率減少に向けた大腸がん検診のあり方―screening colonoscopy 25 年間の経験から―.日本消化器がん検診学会雑誌2011; 49: 415-424.

松田尚久, 他. 内視鏡による大腸癌の予防と早期診断. 日消誌2016;113:1176―1185.

Morikawa T, et al: A comparison of the immunochemical fecal occult blood test and total colonoscopy in the asymptomatic population. Gastroenterology 2005; 129: 422-428.

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