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下痢が長く続く場合には、なぜ大腸の検査(大腸カメラ)が必要なのか?

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こんにちは、尚視会理事長・消化器内科医の原田です。

 

今回は、「下痢が長く続く場合には、なぜ大腸の検査(大腸カメラ)が必要なのか?」について解説したいと思います。

 

下痢症状がある場合には、様々なご病気が考えられます。急に症状がでる下痢症状は、吐き気・嘔吐・腹痛などの症状を伴うことが多くその多くはウイルス性の胃腸炎であることが多いです。その他には、細菌性胃腸炎、食中毒、お薬による副作用などのご病気であることもあります。一方、慢性的に比較的長く続く下痢症状に関しては“慢性下痢症”と呼び急性下痢症とは区別して原因を考える必要があると考えられています。慢性下痢症ですが、比較的長くというとどの程度の長さなのかといいますと、おおよそ2~3週間程度(4週間という意見もあります)続くものと考えられます。個人的には、1週間以上続いてくるようであれば何か問題があると考えた方が良いと考えています。慢性下痢症には、放置しておくと命に関わるような重大なご病気もあるため適切に検査を行い、適切に処置および治療を行うことが必要です。誰でも人生で一度は経験するであろう下痢症状、特に今回は慢性下痢症について解説したいと思います。

 

慢性下痢症にはどんな病気があるの?

慢性下痢症には、様々な病気があります。細菌性腸炎(大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなど)、寄生虫感染(ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウムなど)、腫瘍(大腸がん、直腸絨毛腺腫、膵がんなど)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、乳製品が原因となる乳糖不耐症、薬剤による副作用(抗血小板薬、胃薬などの服用が原因となることがあります)などでまだまだ挙げると切りがなくなるためこのくらいにしておきます。慢性下痢症とは言っても様々なご病気があり非常に診断が難しいと言えます。

 

下痢を訴える患者さんにはどのようなタイプに分けられるのか?

当クリニックでも下痢を訴える患者さんには様々な方がいらっしゃいます。年齢層で振り分けますと、大雑把にではありますが3つのタイプに分けることができます。

  • 比較的若い年齢層(20~30代)の患者さん
  • 40代~50代の中年の患者さん
  • 60代以上のがん年齢の患者さん

以上のようになっています。3つのタイプに関して説明していきたいと思います。

 

20~30代の若い患者さん

若い方で一番問題となるのは炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎です。潰瘍性大腸炎は大腸に炎症が起こる比較的若い方がかかることがあるご病気です。潰瘍性大腸炎では、下痢が慢性的に続くことがあります。悪化してくると下痢と一緒に粘液性のある便や血が混ざることがあります。潰瘍性大腸炎は、適切に検査・治療を行わないと重症化することがあります。診断のためには大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行う必要です。

 

また、若い方の場合には、お腹の痛みを伴い下痢・やわらかい便・便秘などが繰り返し起こるIBS(アイ・ビー・エス)という過敏性腸症候群というご病気であることが多いです。IBSは、おおよそ日本人の10人に1人くらいの確率でかかるご病気と言われています。ストレスや食べ物などが主な原因ではないかと言われています。歴史上で有名な人物ですと徳川家康や西郷隆盛などもIBSであったのではないかと言われています。IBSであれば生活習慣を改めたりお薬を飲んだりなどして治療を行います。ただし、IBSと診断されていた方が実際に検査をすると潰瘍性大腸炎などの他の疾患と診断されることも多々あります。そのため下痢症状が続く場合には安易にIBSと診断してしまうのではなく、一度は大腸内視鏡検査を行うことをお勧めします。

 

若い方で意外と多いのは、カンピロバクター腸炎という細菌性の腸炎です。下痢・発熱・腹痛(右の下の方の痛み)、場合によっては血便が出ることもあります。問診で良く話を聞くと1週間以内に居酒屋や焼き鳥屋などに行って鶏肉を食べてきたということが多いです。調理が不十分であったものや生の鶏肉などを食べることで感染することがあります。腹痛や下痢症状がキツイこともあり大変な思いをされる方も多いです。年間600万人以上の患者さんがかかるご病気とも言われています。

カンピロバクター腸炎の検査は便培養検査を行い菌の確認を行いますが、菌がなかなか確認できないこともあります。その場合には、診断を行うために大腸内視鏡検査を行うこともあります。検査を行うとほとんどの方が大腸の一番奥の盲腸にあるバウヒン弁という小腸と大腸の境目の臓器に炎症や潰瘍などがみられることが多いです。直接大腸を見ることで診断をすることができます。研修医の頃に若い20代の女性の患者さんで下痢・血便が1か月ほど続いており便培養では菌を発見することができず、大腸カメラをするとやはりバウヒン弁に炎症や潰瘍を認めた方がいました。直接腸液と大腸の粘膜を培養検査に出したところカンピロバクターと診断されました。カンピロバクター腸炎は、ギランバレー症候群という末梢神経が傷害され、手足がしびれたり呼吸が自力でできなくなるというような病気になることもあるためけっして軽視できない病気の一つです。カンピロバクター腸炎は、基本的には自然治癒することが多いですが、患者さんによっては抗生物質を投与する必要もあります。胃腸症状がひどい場合には、水分が摂れず点滴が必要になることもあります。また、ギランバレー症候群などを発症しないかどうかなどの経過を見る必要もあります。

 

40代~50代の中年の患者さん

この年齢になってくると胃腸の機能が若いころと比べ低下してきます。私も40代となり20代30代の時と比べ胃腸の機能は落ちてきていると実感しています。この年代となり暴飲・暴食をすると顕著に下痢・軟便などになる頻度が高くなってくると思われます。当クリニックに来院される患者さんでは、慢性の下痢症状が続いているという方が多くいらっしゃいます。話を聞くと毎日飲酒しているとか、ほとんど外食だという方が非常に多いです。暴飲・暴食が原因ではありますが、ほとんどの方は大腸がんや大腸ポリープがあるのではないかということが心配となり検査を受けていただくことが多いです。実際にこのような患者さんを検査すると、ほとんどの方に大腸ポリープが見つかります。中には40代でも大腸がん(その多くは早期の大腸がんです)が見つかることもあります。40代50代で下痢症状がある方は、下痢の原因が恐らく暴飲・暴食であろうと自己判断せず一度専門外来でご相談いただくことをお勧めします。大腸内視鏡検査は静脈麻酔を使用すれば全く痛み無く無痛で検査を終えられます。

 

60代以上のがん年齢の患者さん

60歳以上で下痢症状があり1年以内に大腸内視鏡検査を受けられていない方に関しては、必ず大腸カメラを受けいただくことをお勧めします。軽い下痢症状の患者さんなどでも大腸がんが発見されることもあります。大腸内視鏡検査というと一昔前は、ハードルが高い検査というイメージがあり医師も下痢止めなどを処方してお茶を濁すことも多かったです。しかしながら、現在では大腸内視鏡検査はさほどハードルの高い検査と言えなくなってきています。内視鏡スコープの性能も良くなり、静脈麻酔を使えば痛み無く無痛で検査を行うことができます。また、日本の内視鏡医は良く熟練された医師が多いというのも安心です(熟練された医師を見つけることも大事ですので、どのようにしたら熟練した内視鏡医を見つけることができるかをいずれご紹介したいと思います)。大腸がんを早期で発見して早期で治療するためには、大腸内視鏡検査を受けていただくことが非常に大事です。他の検査で代わりになることはできません。また検査時に大腸ポリープを切除することで、大腸がんの予防になるとも言われていますので勇気を出して一度ご相談していただけたらと思います。

 

このご年齢となってくると大腸以外の腫瘍などが原因で下痢症状が出ることもあり得ます。とくに気を付けたいのが膵臓です。大腸内視鏡検査を行い何もなかったと喜んでいたら、膵臓に腫瘍があったということも見かけます。下痢が続く場合には全身のチェックが必要となることもあり得ます。

 

また、60代以上となってくると様々なご病気がでてくるためお薬を複数飲むようになってくるかと思います。お薬によっては下痢の原因になることが多々あります。その代表的なものがバイアスピリンやプラビックスなどの抗血小板薬や胃薬であるランソプラゾールなどです。下痢症状がある方は受診の際に必ずお薬手帳を持参の上、医師・看護師の問診を受けていただきたいと思います。お薬手帳に関しては皆さん忘れがちですので、ぜひスマホで写メを取っておくなどしていただけますと安心かと思います。

 

その他の特殊なご病気での慢性下痢症

以上のようなご病気の他には、衛生環境の悪い地域に旅行をしたりして細菌感染をしたり、性行為による感染などによるものもあります。症状や問診からある程度はご病気の状況を把握することは可能ですが、大腸を検査して診断を確定する必要があります。

 

皆様ご家族やお仲間にとって大切なお身体です、下痢症状にお悩みの際は、一度専門外来でご相談ください。

 

以上が「下痢が長く続く場合には、なぜ大腸の検査(大腸カメラ)が必要なのか?」を解説いたしました。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

・小野洋嗣ら, 終末回腸の腫大したPeyer 板上の広範囲に潰瘍を形成したカンピロバクター腸炎の2例, 日本消化器内視鏡学会雑誌 2020; 62: 484-9.

 

 

医療法人社団尚視会 理事長 原田英明

・日本消化器内視鏡学会 専門医 指導医

・日本消化器病学会 専門医

・米国消化器内視鏡学会 国際会員

・欧州消化器内視鏡学会 国際会員

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