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過敏性腸症候群とは?多くの若い女性が悩むお腹の症状(腹痛・下痢・便秘)の病気

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IBS(過敏性腸症候群)は、多くの日本人が悩む慢性的なお腹の症状(腹痛・下痢・便秘)のご病気です。IBSの原因は未だ特定されていませんが、その発症や悪化にはストレスが関係していると言われています。皆さんが実際にストレスを感じたとき、お腹の症状が出る経験をしたことがあるかと思います。

 

IBSでは、日常生活を規則正しく十分な睡眠・健康的な食事を摂り、日常的に有酸素運動を取り入れることで症状を改善することができると言われています。IBSの治療は薬物療法が中心に行われることが多いですが、最近欧米では低FODMAP食療法といった食事を中心とした治療法も盛んに行われるようになってきています。

 

IBS患者は、男性と比べ女性の比率が多いと言われており婦人科系疾患との関連も研究が進んできています。今回は、多くの皆さんが悩んでいるIBSについて詳細に解説したいと思います。

 

1章、過敏性腸症候群とは

2章、過敏性腸症候群の原因は?

3章、過敏性腸症候群の症状・診断は?

4章、過敏性腸症候群の検査は?

5章、過敏性腸症候群の治療は?

6章、過敏性腸症候群と診断された場合の対応は?

7章、過敏性腸症候群と女性

8章、過敏性腸症候群の対策は

まとめ

 

1章、過敏性腸症候群とは

 

過敏性腸症候群(IBS; irritable bowel syndrome)は、日本人の10人に1人がかかるご病気と言われています。IBSは、アイ・ビー・エスと略して呼ばれています。

 

多くの人の場合は、日常のストレスを避けて食事やライフスタイルを変えることで症状を取り除くことができます。とくに日常的な運動、規則正しい食事、十分な水分の摂取、十分な睡眠を摂るなどが重要です。症状の改善が無い場合には、特殊なお食事療法やお薬、サプリメントなどの治療が必要となることもあります。

 

IBSは、日常の生活に支障が出るだけではなく、認知症のリスクになったり、自殺率の増加や生命予後にも影響がでる病気と言われています。今回は多くの方が関心のあるIBSについて日本からだけでなく欧米からの最新の情報を交えて解説したいと思います。

 

お腹の調子が悪くなることは、ほとんどの人に経験があることだと思います。便秘・下痢・膨満感・頻繁な排便・腹痛などを経験したことが無いという方はまずいないと思います。IBSはこれらの症状が日常的に起こり生活に影響がでるご病気です。IBSの原因は、いまだに解明されておらず様々な要因が絡んで症状がでていると考えられています。

 

IBSは世界中で非常に多くの方が悩むご病気の一つです。地域差・人種間差などもありますが、おおむね10人に1人がかかるご病気と考えられており、女性に多い傾向があると言われています。日本でもほぼ同様と考えられています。

 

ではIBSは、どのような人に起こりやすいかと言いますと、

 

・若者

・女性

・ご家族にIBSの方がいる

・不安神経症、うつ病のご病気がある方

 

日常的に支障のあるIBSですが、やはり排便に関する繊細なことですので私たち医療従事者に話すのが恥ずかしいと感じる方も多いかと思います。多くの方が経験するIBSというご病気は、何らかの治療が必要となる患者さんがいらっしゃいます。

 

IBS症状がある方は、専門の医師に相談し的確なアドバイスを受けることをおススメします。IBSには、IBS専用の診断基準があります。専門の医師にあなたの現在の状況を整理してもらい診断を受けることが、まず必要となります。

 

通常は診断をするために必要な検査がありますが、場合によっては必要とされる内服治療などをまず開始することもあります。内服治療の効果が無い場合などには、正確な診断のための検査が必要となるもともあります。

 

2章、過敏性腸症候群の原因は?

 

IBSの原因はいまだに特定されていませんが、ストレスの関連性については重要なことと考えられています。ストレスを感じると脳の下垂体という部位からコルチコトロピン放出ホルモン(CRH; corticotropin-releasing hormone)という物質が放出されます。このCRHは、消化管運動・内臓知覚過敏・腸管粘膜透過性といったIBS症状に関係するホルモンと言われておりストレスとIBSの関係が強く示唆されています。

 

この記事を読んでいる方の中でもストレスによりIBS症状が発症したり、増悪した方もいるかと思います。例えば、学校の交友関係や勉強によるストレスでお腹が痛くなったり、下痢・便秘を繰り返すことや仕事上のトラブルやノルマなどに追われIBS症状がでるなどです。症状が悪化してくると日常生活に支障が出てくるかと思いますので診断・治療そして日常の対策が必要となります。

 

また、多くの過敏性腸症候群の患者さんは、お食事に関連してお腹の症状がでると言われています。これをfood-related gastrointestinal(GI) symptomsといいます。日本語にすると食事関連胃腸症状と言います。食事関連胃腸症状の原因となるものとしては、脂肪分の多いお食事・コーヒー(カフェイン類)・アルコール・香辛料などと言われています。これらのお食事を控えることで過敏性腸症候群の症状の軽減につながるとも言われています。

 

3章、過敏性腸症候群の症状・診断は?

 

IBSの症状は以下のようなものが主体となります。

 

・腹痛

・下痢

・便秘

 

腹痛

 

IBSは、様々な病因が複雑に絡み合ったご病気と考えられており、その病因および診断は困難なものでした。IBSでは、様々な腹部症状・排便異常がみられることから一定の診断を下すことが困難でした。そこでどの医師が診断しても同様の診断となるように、国際的な診断基準であるRome診断基準が採用されています。

 

Rome診断基準は、Rome委員会という国際委員会にて作成されているものです。現在はRomeⅣという国際的診断基準で世界的には診断を行っています。日本においては、独自のIBS診断治療ガイドラインが作成されており診断治療に使用されています。

 

[RomeⅣ診断基準]

 

腹痛が

最近3か月の中の1週間につき少なくとも1日以上を占め

下記の2項目以上の特徴を示す

①排便に関連する

②排便頻度の変化に関連する

③便形状(外観)の変化に関連する

*最近3か月間は基準を満たす

少なくとも診断の6か月以上前に症状が出現

 

便形状の変化に関しては、ご本人にしか分からないことであり客観性に乏しい情報と思われます。そのため便形状に関しては、「Bristol便形状尺度」という分類方法で判断されます。

 

また、Bristol便形状尺度によりIBSは、その症状により4つの型に分類されています。一見複雑そうに見えますがいたって単純な分類です。

 

①便秘型:便秘を中心とする症状

②下痢型:下痢を中心とする症状

③混合型:便秘と下痢を繰り返す症状

④分類不能型:①~③に当てはまらないもの(排便の状況が明確に分からないもの)

 

このように4つの症状に分けてIBS診断を行うことで、その病因や病態を理解しやすくし適切な治療を行うようにしています。

 

4章、過敏性腸症候群の検査は?

 

自分がIBSであるかどうかを診断するためには、専門の外来を受診し適切な検査を受ける必要があります。IBS自体では、特徴的な画像所見(CT・MRI・内視鏡検査)や検査値異常などは見られません。ただし、腹痛や便通異常の症状がありIBSだと思っていたが、実は異なるご病気であったということは多々あります。

 

他のご病気である腫瘍や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)などでもIBS様の症状がでるためこれらのご病気が無いという確認が必要です。糖尿病や甲状腺機能異常、腸管の寄生虫感染なども腹痛・便通異常の原因となることがあるため採血検査や尿・糞便検査が必要となることもあります。いわゆる鑑別診断ということが必要となります。

 

IBSの鑑別診断に必要な検査

 

・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

・検体検査(血液・糞便・尿)

・画像検査(X線検査・CT検査)

 

必要に応じて上記のような検査を行う可能性があります。IBSだと思っていたら大腸がんだったとか炎症性腸疾患であったなどもあるため必要な検査は受けるべきです。

 

大腸カメラ

 

またIBS様症状がある方の中で、以下のような場合にはIBSの可能性が低いと考えられています。

 

・50歳以上でのIBS様症状の発症

・夜間就寝時の症状

・血便と伴う場合

・体重減少を伴う場合

・嘔吐を伴う場合

・排便後に腹痛症状が改善しない場合

 

IBS様の症状があり、IBSの可能性が低いという方は他のご病気の場合があります。とくに大腸がんの可能性は否定できないため大腸内視鏡検査は必ず受けることをおススメします。

 

5章、過敏性腸症候群の治療は?

 

現時点では、IBSを完全に治す治療法は存在しないと言われています。完全に治すことを目指すのではなくて病気とうまく付き合いながら症状を抑えていくことが大事です。IBSの治療は大きく3つのステップに分けられます。

 

日本消化器病学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020 過敏性腸症候群(IBS) (改訂第2版)より

 

ステップ1

食事療法と生活指導を行い、場合によっては薬物療法を行う

 

ステップ2

薬物療法の効果が低い場合には、ストレスや心理的異常の有無を確認し場合によっては、抗不安薬や抗うつなどを処方する。

 

ステップ3

心理療法による治療を検討する

 

というような流れになります。IBSの治療法である、食事療法、運動療法、心理療法、薬物療法、その他について解説したいと思います。

 

日本消化器病学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020 過敏性腸症候群(IBS) (改訂第2版)より

 

1,食事療法

2,運動療法

3,心理療法

4,薬物療法

5,その他

 

その他としてペパーミント療法、まだ研究段階ですが便移植などもあります。それぞれについて解説していきたいと思います。

 

1,食事療法

 

食事療法は、まずIBS症状を呈しやすい食事を避ける必要があります。下記のような食事は症状発症および悪化を防ぐためには避ける必要があります。

 

・脂肪分の多い食事

・カフェイン

・香辛料

・乳製品

 

以上の食べ物・飲み物はIBSと明確に関連していると言われており、避けることで症状の発症・悪化を避けることができます。

 

一方、アルコール・タバコにはIBSとの明確な関連は報告されていません。ただしアルコールに関しては、睡眠が浅くなることから睡眠障害となることでIBSの症状悪化の原因となり得るかもしれません。

 

乳製品に関しては、日本人の7割以上が乳糖不耐症といって乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を適切に消化・吸収をすることができないため下痢・消化不良の原因となります。IBSの方で乳糖不耐症の場合は、乳製品を制限することでIBS症状が改善する可能性があります。

 

食物のアレルギーによってIBS症状がでるとも報告されています。ある特定の食物を除去した制限食を摂ることでIBS症状が軽減すると言われています。ただし費用負担の問題や検査体制が確立していないため今後の報告が待たれるところです。

 

最近IBSに効果的と言われているのが低FODMAP食療法です。欧米から低FODMAP食療法について様々な報告がされてきています。低FODMAP食療法は、小腸内で分解・吸収されにくい短鎖炭水化物であるFODMAP(フォドマップ)を多く含む食品をなるべく避けることでIBS症状を軽減させる食事療法です。FODMAPを多く含む代表的な食品としては、パン(小麦・ライ麦など)、ラーメン(小麦)、とうもろこし、タマネギ、にんにく、にら、ごぼう、りんご、すいか、もも、牛乳、ヨーグルトなどで、これらは高FODMAP食と言われています。

 

*FODMAPについては、前回の記事で解説していますので下記をご参考にしてください。

 

2,運動療法

 

IBS症状がある人は、健康的な人と比べ日常的に適度な運動をしている人が少ないと言われています。適度な運動をして規則正しい食事、十分な睡眠時間といったライフスタイルの変容はIBS症状を改善すると言われています。

 

水泳・ウォーキング・ヨガなどの有酸素運動は、身体機能を維持し自律神経を整えメンタルにも良い影響を与えます。最近の研究では、運動療法は不安神経症などのメンタル系のご病気にも効果があると報告されています。IBSの場合は、激しい運動よりもゆっくりとした有酸素運動をできるだけ毎日行っていくのが良いと思います。

 

3,心理療法

 

IBSではご本人が不安やストレスを感じることで腸管運動が悪化して腹痛・便通異常が引き起こされます。心理療法では、ご自身の不安やストレスと向き合うことでIBSの症状改善につながると言われています。とくに認知行動療法(CBT; cognitive behavior therapy)は有用性が高い心理療法と言われています。

 

認知行動療法の他にも催眠療法、自律訓練法、マインドフルネスストレス低減療法などがあります。

 

4,薬物療法

 

IBSの治療は、まずは食事療法やライフスタイルの改善を中心に行いますが、それと並行して薬物用法も行われます。IBSの薬物療法は、IBSの症状による4つの分類をもとに下痢・便秘・腹痛などの症状を考慮して消化管に効くお薬を選択して患者さんに処方をします。

 

消化管中心のお薬の効果が無い場合には、抗不安薬や抗うつ薬を試してみることもあります。

 

・高分子重合体

 

高分子重合体であるポリカルボフィルカルシウム(コロネル®、ポリフル®)は下痢型IBSに効果的と言われています。ポリカルボフィルカルシウムは、高吸水性ポリマーと言って水分を大量に吸い取る物質でできており消化管で消化・吸収されません。ポリカルボフィルカルシウムを飲んで胃にお薬が入ると、胃の中の胃酸と反応してカルシウムが分離されるとポリカルボフィルとなることで吸水作用が発揮されます。

 

ポリカルボフィルは、酸性下ではその吸水作用は発揮されず小腸や大腸といった腸管に移動して中性下でその吸水作用を発揮します。腸管で水分が多い下痢状の便であれば吸水作用によりポリカルボフィルは膨張・ゲル化して便と一緒に排泄されます。この際、腸管における便の通過速度は遅くなり排便回数は少なくなります。

 

一方、ポリカルボフィルは便秘型のIBSにも効果があると言われています。腸管内でポリカルボフィルは水分を吸水することで膨張・ゲル化します。膨張・下痢化したポリカルボフィルは水分を保っているため排便自体が柔らかいものとなるため通常よりも腸管における便の通過速度は速くなり便秘にも効果的と言われています。

 

・消化管運動機能調整薬

 

すこし長ったらしい名前ですが、いわゆる腸管の運動を調整するお薬です。代表的なお薬としては、マレイン酸トリメブチン(セレキノン®)となります。消化管運動機能調整薬は、他にもありますが現在のところ日本で保険適応されているのはマレイン酸トリメブチンのみです。マレイン酸トリメブチンは、自律神経を調整することでIBS症状を改善すると言われています。交感神経活性化状態では、アドレナリンの分泌を抑制させることで腸管の運動を活発にします。反対に、副交感神経活性化状態では、アセチルコリン分泌を抑制させることで腸管の運動を抑制させます。この二つの作用があるためIBS症状の下痢・便秘両方ともに効果があると言われています。

 

・プロバイオティクス(Probiotics)

 

プロバイオティクスという言葉は、抗生物質に対する対義語として1989年にイギリスのFullerにより「腸管内の微生物環境を変化させることにより宿主に有益な効果をもたらす生菌剤」として提唱されました。かみくだいて言うと、「人とって有益な菌や微生物を含んだ食べ物・薬剤」などのことをプロバイオティクスといいます。例えば、ヨーグルト、乳酸菌食品や飲料、発酵食品などです。薬剤でもプロバイオティクスはあります。下記にまとめると

 

・ミヤBM®(酪酸菌)

・ビオフェルミン®、ラックビー®(ビフィズス菌)

・ラックビーR®(耐性乳酸菌)

 

などが代表的なものです。プロバイオティクスには、様々な菌があり単一での使用や様々な組み合わせでの使用で研究が行われています。プロバイオティクスを使用することで、IBS症状の改善につながると言われています。ご自身にあったプロバイオティクスを使用することでIBS症状の改善になるとは思いますが、プロバイオティクスのIBSへの作用などは不明な点も多く今後の研究が必要とされています。

 

・セロトニン拮抗薬(5-HT3拮抗薬)

 

下痢型のIBSには、イリボー® (ラモセトロン)というお薬が効果的と言われています。従来は男性のみの使用しか認められていませんでした。これは薬による副作用である便秘・腹部膨満などが起こりやすいと報告されていたためです。2015年に半量(2.5μg)での使用であれば副作用が少なく効果があると判断され女性でも使用できるようになりました。半量で効果が無ければ一日5μgまで増量ができます。

 

・下痢止め

 

下痢止めとしては下記のようなものがあり、下痢型のIBSに一定の効果があると言われています。

 

・ロペラミド塩酸塩(ロペミン®

・タンニン酸アルブミン(タンナルビン®

・ベルベリン塩化物水和物(キョウベリン®

 

ロペラミド塩酸塩は、下痢症状には効果があるものの腹痛症状の改善には限定的であると言われています。また過度の使用により腹部膨満や腸閉塞の報告があるため専門の医師による使用の判断が必要です。

 

・粘膜上皮機能変容薬(ねんまくじょうひきのうへんようやく)

 

便秘型のIBSの治療には、下記の2剤があります。

 

アミティーザ®(ルビプロストン)

リンゼス®(リナクロチド)

 

上記2剤は、腸管の粘膜上皮細胞に作用して腸管内に水分分泌を増やすことで便秘を改善させるお薬です。この2剤は、便秘型のIBSに効果的で、便秘・腹痛・膨満感などを改善させると言われています。副作用としては、軽度の下痢・吐き気などが見られることがありますが、長期に使用しても安全性は高いと評価されています。

 

・胆汁酸・胆汁酸トランスポーター阻害薬

 

エロビキシバット(グーフィス®)は、回腸末端で胆汁酸の再吸収を抑制することで肝臓での胆汁酸合成を促進させるお薬です。この胆汁酸が腸管内で増えると、腸管内の水分が増加し腸管の蠕動運動も活発となります。腸管内の水分増加・蠕動運動の活発化により排便回数は多くなり便の通過も良くなります。そのため便秘の改善に効果があると報告されています。エロビキシバットは、慢性便秘症に保険適応はありますが、現在のところIBS自体には保険適応はありません。IBS自体では処方できませんが、慢性便秘症がある方は専門の医師と相談の上で内服をすることをおススメします。

 

・漢方薬

 

下痢型のIBS患者の方には、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)の有効性が報告されています。桂枝加芍薬湯の腸管に対する作用は十分には解明されていませんが、腸管の運動を調整する作用のため下痢や腹痛などの症状を改善するのではないかと言われています。

 

また半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)も下痢型のIBSに有効と言われています。半夏瀉心湯は、腸管の運動調整と大腸内の水分吸収を行うことで下痢・腹痛などのIBS症状に有効と言われています。

 

便秘型のIBSには、大建中湯(だいけんちゅうとう)の効果が示唆されています。大建中湯を内服することで腹部膨満・腹痛・残便感などの症状改善に効果があったと報告されています。

 

*漢方薬は個々人において効果に個人差があるお薬です。そのため主治医とよく相談して内服をすることをおススメします。

 

・抗アレルギー薬

 

IBSの原因として食物アレルギーが考えられます。食物アレルギーにより下痢・腹痛が起こると考えられており、これは腸管に存在する肥満細胞から大量のヒスタミンという生理活性物質が放出されることで起こります。

 

抗アレルギー薬を内服することで下痢・腹痛といったIBS症状を改善することができると言われています。

 

*日本国内においてはIBSに対する抗アレルギー薬の保険適応は認められていません。

 

・抗菌薬

 

リファキシミンやネオマイシンといった抗菌薬は、腸内細菌叢の乱れを整えると言われておりIBSの治療として有効であると欧米からの報告が相次いでいます。アメリカでは2015年より抗菌薬によるIBS治療が可能となっていますが、日本では保険適応されていません。そのため抗菌薬による治療は現在のところできません。

 

・抗うつ薬

 

IBSの治療に有効とされており、数多くの抗うつ薬のどれを選択するのかが重要と考えられています。抗うつ薬としては、三環系抗うつ薬(TCA)・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の2つが主に使用されます。TCAは、IBS症状(とくに下痢型IBS)の改善に有効であったと報告されていますが、眠気や便秘・口渇などの副作用が頻回に起るとされています。一方SSRIは、副作用が少なく安全に便秘型IBSに対して使用できるが、その効果は限定的であるとされています。

 

・抗不安薬

 

不安が強いIBS症状に関しては抗不安薬が効果的であるとされています。不安症状と消化器症状には、密接な関係があるとされており、抗不安薬を適切に使用することでIBS症状の改善に役立つと言われています。ただし、依存症の問題もあるため効果的の慎重な使用が必要とされています。

 

・抗精神病薬

 

IBSの診療ガイドラインでは確かな効果が無いとされています。IBS症状を伴い精神的に不安定で抑うつ・不安などの心理異常がある方では治療の一つの選択肢となりますが、専門の精神科医による治療が必要となります。

 

5,その他

 

IBSでは、医療に代わる治療法(補完代替医療)として以下のようなものがあります。補完代替医療は、一部は有益であると言われていますが、全てのIBSの方に効果があるわけではありません。その治療の導入に関しては慎重に行う必要があると考えられます。

 

・ペパーミントオイル

・鍼灸治療

 

それぞれについて解説したいと思います。

 

・ペパーミントオイル

 

ペパーミントオイルには、腸管の筋肉を弛緩させる効果がありIBS症状に効果がある可能性が示唆されています。ペパーミントオイルは腸で溶ける腸溶カプセルで内服をしますが、カプセルが胃内で溶けてしまうと胸焼けや吐き気などの副作用が起こる可能性があります。

 

・鍼灸治療

 

鍼治療・灸治療は、薬物治療などに効果が無かった場合に一つの選択肢として行われる場合があります。IBSに対して一定の効果があると言われています。

 

6章、過敏性腸症候群と診断された場合の対応は?

 

3~4章で過敏性腸症候群の診断・必要な検査・治療について説明しましたが、医療機関の受診の他にも生活の場で「あなた」ご自身がしなければならないことがあります。

 

学校や職場で頻回にトイレに行かなければならない状況であるのならば、学校や会社の責任者に病気の状況を伝えて理解を求める必要があります。その際に自身の言葉だけでは理解を示さない方も中にはいらっしゃるので医師の診断書を提出すると効果があります。また友人や同僚の方に理解を求めることも必要です。

 

通学・通勤に支障がある方は「電車内で症状がでたらどうしよう」という不安やプレッシャーを感じ、心理的に不安定な状況で日々の生活を送らなければなりません。ご自身ができる範囲での対応・対策が必要となります。一番効果があるのは、学校・職場近くへの引っ越しですが現実的ではないかもしれませんので、せめて通学路・通勤路のトイレの場所の確認は行っておきましょう。

 

7章、過敏性腸症候群と女性

 

IBSは男性よりも女性に多いと言われているご病気です。とくに婦人科系の状況が影響するとも言われています。多くのIBSにお悩みの女性は、生理サイクルによって症状の変化があると言われています。生理前や生理期間中に腹痛や下痢症状をよく認めると言います。また、排卵後には膨満感や便秘を伴いやすいと言います。

 

子宮内膜症とIBSの関係も最近では報告されています。子宮内膜症は、生理がある女性の約10%に見られるご病気で20~40代の方に多く認められます。子宮内膜症は、子宮の内側以外の臓器に子宮内膜が出来てしまうご病気です。子宮内膜症ができる子宮以外の臓器としては、腹膜・子宮筋層内・卵巣・卵管・腸管などがあります。

 

子宮内膜症の女性は、子宮内膜症が無い女性と比べIBSにかかるリスクが2倍以上高いと報告されています。子宮内膜組織は、月経周期に伴って炎症が起こります。この炎症が腸管に影響をもたらしてIBS症状が出ている可能性が示唆されています。このためIBS症状がある若い女性の場合には、婦人科系のご病気も調べる必要があると考えられています。

 

8章、過敏性腸症候群の対策は?

 

IBSの原因は特定されておらず、精神的な影響も大きいため治療に困難が伴うことが多いとされています。人によっては、数か月IBS症状に悩んでいたにも関わらず、知らないうちにIBS症状が無くなったというような方もいます。IBSは何らかのトリガーにより症状が発症し、トリガーが取り去られると症状が無くなるというようなこともあり得ます。

 

IBS症状の悪化を避けるための対策は、ストレスを避けることが重要と考えられています。仕事・人間関係・金銭問題などの日常的なストレスを避けることでIBS症状の悪化を上手に回避することが大事です。このような日常のストレスをマネジメントする方法として、行動認知療法などの心理療法やヨガ・呼吸療法などもあります。ご自身に合ったマネジメント方法を探すのも治療の一つの手段です。

 

また仕事関係で日常的にストレスを抱えている方も多いと思います。一昔前であれば、仕事上の上司・同僚・後輩・取引先の方などと飲み会・食事会を通して悩みの相談などでストレスを吐き出すこともできたかと思います。コロナ流行によりこのような場も少なくなり、より内向的な社会になりつつある現状ではストレス発散の場も限られるかと思います。

 

相談相手がいないという方は、専門のカウンセリングがお勧めです。企業にお勤めの方などの場合は、ご自身がお勤めの企業に産業カウンセラーが存在するかをぜひ確認してください。産業カウンセラーにご自身の状況を話すことで、ご自身のストレスの状況について客観的に評価することが出来るかと思います。

 

まとめ

 

今回は、過敏性腸症候群について解説しました。過敏性腸症候群の原因は特定されていませんが、ストレスと密接な関係があり、日常のストレスをいかに回避することが大事かと思います。また過敏性腸症候群と考えていたものが実は他のご病気だったということもありますので、専門の医療機関で適切な検査・診断を受けていただくことが大事です。

 

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記事執筆

医療法人社団尚視会 理事長 原田英明

・日本消化器内視鏡学会 専門医 指導医 https://www.jges.net/medical

・日本消化器病学会 専門医 https://www.jsge.or.jp/

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