
皆様こんにちは、尚視会理事長・消化器内科医の原田です。
大腸ポリープを切除(大腸ポリペクトミー)した後の出血は、おおよそ7日以内に起こると言われています。特に出血が起こりやすいのは24時間以内とされ、大腸ポリープを切除した夜間に出血が見られることが多い印象です。
出血の頻度はおおよそ1%前後と言われており、100人に1人程度の確率で出血が起こるとされています。私が以前報告した論文でも出血率は1.2%と、ほぼ同様の結果でした。
大腸ポリープを切除した後に出血があった場合は、再度内視鏡スコープを大腸内に挿入し、出血箇所を特定して止血処置を行う必要があります。
大腸カメラを受けたばかりなのに再度処置が必要になるのは非常に苦痛でつらいことだと思います。止血後も2~3日間は出血がないことを確認する必要があり、入院となるケースもあります。
今回は、大腸ポリープ切除後の出血について、そして出血した場合の対応について解説します。
目次
1章:なぜ大腸ポリープを切除した後に出血するのか?
大腸ポリープは、大腸の表面の粘膜である上皮からできるキノコ状の腫瘍です。人体の一部であるため、血液を介して酸素や栄養を取り込んでいます。
そのため、ポリープには毛細血管や栄養動脈といった血管が存在します。特に、茎(くき)が太いポリープには太い動脈が走行しており、これが出血の原因となる場合があります。
*大腸ポリープの内視鏡像
1-1:実際に大腸ポリープを切除した直後はどうなるのか?
切除後の粘膜には「切除後潰瘍」と呼ばれる傷跡が残り、ここから出血が起こることがあります。
軽度の出血であれば自然に止まることが多いですが、茎の太いポリープの場合は太い血管が見えることがあり、大量出血となることがあります。その際は、内視鏡を用いたクリッピングという止血処置が必要です。
“くの字”型の金属製クリップで傷口を閉じるこの処置は、1975年に林貴雄先生によって考案され、千葉大学の蜂巣忠先生とオリンパスの共同開発によって実用化されました。
日常的に使われているこのクリップですが、蜂巣先生は特許を取らず、無償で提供されたとのことです。内視鏡治療において、非常に意義深い日本発の技術です。
1-2:大腸ポリープ切除後の出血は24時間以内が多い
特に多いのが切除から24時間以内で、翌朝の排便時に出血が見られるケースです。
少量の出血や血のかたまり(レバーのような血)の場合は、大事に至らず経過観察で済むことが多いです。
しかし、便器が血で満たされるほどの出血がある場合は、切除後潰瘍からの持続出血の可能性があり、再度内視鏡による検査・止血処置が必要となります。
ポリープを1つだけ切除していれば比較的容易に出血箇所を見つけられますが、複数切除している場合は特定が難しくなります。
2章:日帰り大腸ポリープ切除後に出血したら?
当クリニックでは夜間も電話対応できる体制を整えておりますが、クリニックによっては診療時間内のみの対応となっている場合があります。
また、休診日には対応ができない施設もあるため、緊急時の対応体制があるかどうかは重要です。
当クリニックでは開院当初に休診日に出血対応ができなかった反省から、2025年現在も祝日を除いて診療・夜間電話対応を行い、近隣の入院施設と連携した万全の体制を整えています。
*連携施設のないクリニックで出血があった場合、患者さん自身で病院を探す必要があったり、救急搬送が必要となるケースもあります。
3章:大腸ポリープ切除は日帰り?それとも入院?
※最近では出血リスクの低減を目的に、電気を使わない「コールドポリペクトミー」という方法も一部で活用されています。当院でもポリープの状態に応じて適切な切除法を選択しています。
大腸ポリープの切除では、100人に1人の割合で出血が起こります。
治療する医師の技術、切除方法(ホット法 or コールド法)、患者さんの年齢、薬の服用歴、持病の有無によってリスクが変動します。
大腸ポリープのサイズ・形・茎の太さによっては入院での切除が必要となることがあります。
日帰り切除が可能なのは一般的に1cm前後のポリープです。場所や形状によっては2cm程度のものでも可能なことがあります。
一方で、1cm未満でも茎が太い場合は太い栄養動脈がある可能性があり、出血リスクが高くなるため、入院での切除が安全と判断されることもあります。
ネットで検索すると、どこの内視鏡クリニックでも日帰り大腸ポリープ切除を謳っているかとは思いますが、2025年現在においても、切除後の合併症のことを考えることは大切です。
大腸ポリープ切除は決して難しい治療ではありませんが、一定の確率で合併症が起こるため、万が一の対応を想定した施設を選ぶことが大切です。
以上、「24時間以内に起こることが多い大腸ポリープ切除後の出血;出血した場合にはどうすればいいの?」についての解説でした。最後までお読みいただきありがとうございました。
大腸カメラ・大腸ポリープ切除のご相談は下記より承っています。
なお、上記論文は2021年の発表ですが、2025年現在においても臨床的な知見として広く参考とされているデータです。今後も国内外の最新研究に基づき、診療の質を高めてまいります。
※この記事は2022年4月27日に公開された内容を、2025年4月13日に最新の情報に基づき加筆・修正しました。
施設紹介
東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>
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