歯周病と大腸がんの関係について

胃カメラ検査

口腔内には約700種以上の細菌が存在すると言われており、その多様性は大腸(大腸は1000種を超える細菌が存在すると言われている)に次いで人体では2番目に多いと言われています。これら細菌の集団を細菌叢(さいきんそう)といいます。口の中が健康的で良い状態であれば、細菌叢に乱れがなく細菌叢が良い状態と言えます。

歯周病になると、歯茎に慢性的な炎症が起こり細菌感染により細菌叢は乱れます。この感染の歯周病菌は人体に様々な悪影響をもたらすと考えられています。心臓のご病気・脳血管のご病気・糖尿病などは、歯周病が原因として悪化したり発症する可能性があると言われていますが、大腸がんも歯周病と関係すると報告されています。

本記事では、歯周病と様々なご病気の関係及び大腸がんとの関係について詳細に解説していきたいと思います。

1章、歯周病と大腸がんは関係する

最近の研究では、腸内細菌は大腸がんの発生に大きな役割をしていると報告されています。腸内細菌の中でも一部の細菌が大腸の炎症をもたらすことで、大腸がんの発生や進行にかかわっていると分かってきています。

本章では、大腸がんにかかわる細菌の中でも歯周病にかかわる細菌と大腸がんの関係について解説していきたいと思います。

1-1、歯周病とは?

歯のご病気で歯周病とは、歯ぐきや歯の周りに細菌が感染し炎症が起こり歯を支える骨が溶けてしまうご病気です。

歯周病は、歯磨きが不十分で歯間の清掃が行き届かない場合には細菌が感染し歯ぐきの腫れが起こり膿がでたり歯がぐらつくなどの症状がでます。場合によっては、歯を抜かなければならなくなることもあります。

歯周病の前兆や症状としては下記のようなものが挙げられます。

・口臭がするようになった
・歯みがきの際にブラシに血がみられる
・歯肉が腫れている
・歯肉から膿がでる
・歯間に食べ物が詰まりやすい
・歯が浮いてきている
・歯がぐらぐら揺れる
・歯並びが変わってきた

以上のようなことがみられる場合には、歯周病の可能性があります。すぐに歯科で診察を受けることをお勧めします。

1-2、歯周病の原因

歯周病の主な原因は、プラーク性歯肉炎を放置して進行したものである。

プラークとは、歯表面に付着した白色ないし黄白色のもので、いわゆる歯垢(しこう)のことを言います。プラークは、食べ物のカスと思いがちですが、実は細菌とその代謝産物から形成されています。プラークは、歯ブラシなどの口腔内清掃を中止すると増加し始めて2~3日で歯肉炎となってしまいます。

健康的な歯においては、1分間に3万個の白血球(好中球)が口の中で働くことで細菌を貪食して殺菌して歯肉炎にならないように防いでいると言われています。しかしながら、プラークが増えて細菌が増殖していくと、バイオフィルム(Biofilm)といってプラークの表面が糖衣(グリコカリックス; glycocalyx)により覆われて通常の歯みがきでは落とせなくなってしまいます。

また、歯肉炎が進行していくと歯肉ポケット歯と歯ぐきの間の溝が深くなってきます。歯肉ポケットが深くなっていくと、細菌にバイオフィルム形成のスペースを与えてしまうことでさらに細菌の数が増加して歯肉の炎症が悪化していきます。さらに歯周病に関連する歯周病原細菌による感染が起こると、歯周病の発症・進行のリスクとなります。

喫煙とストレス

喫煙は、歯周病のリスクと言われています。喫煙者は歯周病のリスクが2~8倍になると言われています。禁煙をすることで歯周病のリスクを低下させると言われています。また、ストレスで歯周病が増悪するとも報告されています。

歯周病の可能性がある場合には喫煙は必須となります!

1-3、歯周病と関係する病気

歯周病は、口の中の問題だけではなく様々なご病気と関係すると言われています。

歯周病にかかると下記のようなご病気にかかり易くなると言われています。

・狭心症や心筋梗塞などの心臓のご病気
・脳梗塞などの脳血管のご病気
・糖尿病

下記のような病気などとも関係があるのではないかと報告されています。

・誤嚥性肺炎
・早産および低体重児出産
・菌血症
・脂肪肝
・アルツハイマー病
・脂質代謝異常

一つ一つ解説していきたいと思います。

狭心症や心筋梗塞などの心臓のご病気

歯周病は、狭心症や心筋梗塞などの心臓病(冠動脈疾患)の発生を上昇させると報告されています。また、歯周病がある人はない人と比べに心臓病(冠動脈疾患)に罹っている人の割合が高いとも報告されています。歯周病の原因となる細菌が産生するサイトカインが血流にのって心臓に到達すると炎症が起こります。この炎症により血栓が作られるのではないかと考えられています。

脳梗塞などの脳血管のご病気

歯周病が脳梗塞などの脳血管の病気を増加させると報告されています。歯周病の患者で未治療の人は、治療した人と比べ脳血管の病気の発症者数が多いとも報告されています。

糖尿病

歯周病は、糖尿病と関連があると報告されています。糖尿病が進行すると歯周病も進行すると言われており、逆に歯周病が糖尿病に影響を与えるとも言われています。歯周病は、糖尿病の指標であるヘモグロビンA1cの悪化にも関係すると報告されています。

歯周病を患った糖尿病患者において歯周病治療を行うことでヘモグロビンA1cの値が改善することが報告されています。

誤嚥性肺炎

歯周病患者は、口腔内の細菌数が増加すると言われています。歯周病が肺炎のリスクになるのではないかとも言われており誤嚥性肺炎にも関係するのではないかと考えられています。口腔の清掃を日常的に行うことで口腔内細菌数が減少して、誤嚥性肺炎の予防手段と考えられています。

早産および低体重児出産

出産直前では,女性ホルモンのバランスの変化および血中の炎症性サイトカインが上昇することが知られています。歯周病でも炎症性サイトカイン濃度が上昇することが知られており、早産や低体重児出産などに影響する可能性があるのではないかと報告されています。

また女性は月経や妊娠などにより女性ホルモンの関係上、男性より歯周病になりやすいと言われています。そのため若いうちから口腔内の衛生状況を良くしておくことが望ましいと考えられています。

菌血症

菌血症とは、血流中に細菌が存在する状態のことを言います。歯周病では、治療せずに放置してしまうと菌血症となってしまうことがあります。菌血症になると熱が出たりします。菌血症が悪化すると、敗血症となって命にかかわることもあります。敗血症の症状としては、頻脈・頻呼吸・発熱・血圧低下などの急性の症状が出ます。

歯周病が進行すると、歯ぐきの腫れや出血部位の血管から細菌が侵入する可能性があります。血管内に侵入した細菌により敗血症が起こります。敗血症は、歯周病の治療時(抜歯など)や歯周病がある場合の日常的な歯みがきが引き金となることもあります。歯周病の可能性がある場合には放置せずに専門的な診察を受けることが大切です。

非アルコール性脂肪性肝疾患

脂肪肝の一種である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD; Non-alcoholic fatty liver disease)は、日本人の約3割が罹っていると推測されているご病気です。NAFLDの約8割は、単純脂肪肝と言われる通常私たちが呼んでいる脂肪肝のことです。一方、NAFLDのでも炎症を起こしているものを脂肪性肝炎と言います。この脂肪性肝炎のことをNASH(Non-alcoholic steatohepatitis)呼びます。

NAFLDおよびNASHともに歯周病と関連があるのではないかと報告されています。とくにNASHは糖尿病とも密接に関連しており、歯周病と糖尿病との因果関係を考えるとNASHは歯周病においても無視できないご病気と考えられています。

アルツハイマー病

アルツハイマー病は、老年期に発症する認知症のご病気です。アルツハイマー病患者においては、歯周病がアルツハイマー病を悪化させる可能性があると報告されています。またアルツハイマー病患者の脳から歯周病にかかわる細菌が検出されたり、歯周病細菌の血清の抗体価が上昇していると報告されています。

脂質代謝異常

脂質代謝異常は、心臓病(虚血性心疾患など)や脳血管障害などのご病気のリスクとなります。歯周病は、この脂質代謝異常にも関係している可能性があると報告されています。

以上のようなご病気ばかりではなく、実は大腸がんの原因の一つとなりえるという報告もあります。

1-4、大腸がんは歯周病と関係する

歯周病のある人は、そうでない人と比べ1.45倍大腸がんのリスクが高くなると報告されており、歯周病と大腸がんとの関係があることが示唆されています。

大腸がん患者の唾液と大腸がん

大腸がん患者の唾液および大腸がんを調べたところ、4割以上の患者で歯周病菌と言われる同一の株のフソバクテリウム(・ヌクレアタム)が検出されたと報告されています。歯周病に罹ると口の中では、フソバクテリウム(・ヌクレアタム)やポルフィロモナス(・ジンジバリス)というような細菌が増えてきて細菌叢に乱れ起こり、細菌叢が不良な状態になると考えられます。これらの細菌は唾を飲み込んだり、血流に乗って大腸へと運ばれて行くのではないかと考えられています。

大腸内でフソバクテリウムやポルフィロモナスなどの菌が多くなっていくと、これらの細菌が出す代謝産物や毒素が引き金となりマクロファージという細胞からサイトカインという物質が放出されます。このサイトカインにより炎症が起こり、DNAの損傷や異常な細胞増殖が起こり大腸がんの引き金になると考えられています。

2章、歯周病予防で大腸がんも予防

歯周病は大腸がんの原因の一つではないかと考えられており、その予防は重要であると言えます。

2-1、フソバクテリウム(歯周病菌)と大腸がん

大腸内におけるフソバクテリウムの異常な増殖は大腸がんの原因の可能性がある。

大腸がん患者においてフソバクテリウムが検出されることが多く(4割以上)、進行するにつれてフソバクテリウムの菌量が多くなると報告されています。またフソバクテリウムの菌量が多いほど、生命予後が悪いとも報告されており、大腸がんにおけるフソバクテリウムの重要性が高いと考えられます。

このフソバクテリウムを減らすためにはどうすればよいのでしょうか?

一つには、歯周病予防をしっかりとする。フソバクテリウムは歯周病菌の一つであるためしっかりと口腔内衛生に努めて歯周病にならないようにすることが大切です。

もう一つは、大腸内でフソバクテリウムを増やさないようにすることが大切です。西洋食の中心である脂質(コレステロール)を制限して食物繊維が多い食事を摂ることで、フソバクテリウム陽性の大腸がんのリスクが低下すると報告されています。また高脂質食である西洋食は、歯周病を悪化させるとも言われているため食生活の改善は大腸がんの予防になると考えられます。

2-2、歯周病予防の大切さ

大腸がん予防のためにも歯周病予防を行うことが大切。

歯周病予防のためには、

・定期的に歯科に通う
・プラークコントロールを徹底する
・禁煙をする
・ストレスを避ける

などが挙げられます。また下記のようなことも歯周病予防には大切です。

・食生活の改善(西洋食である高脂質食を避ける)
・食物繊維を摂る
・ビタミンCやビタミンDを適量摂取する
・魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を積極的に摂取する

以上のようなことは大腸がん予防にも通じる内容です。歯周病予防を意識することで、大腸がんの予防としていただけたらと思います。

大腸がんの予防については、「大腸がんの原因と予防法を専門医が解説|日頃の工夫と定期的な検査が大切」で詳しく解説していますので、ぜひご参考にしてください。

まとめ

本記事の歯周病と大腸がんの関係についてのポイントとしては下記のようになります。

・歯周病になると感染が起こり歯周病菌(フソバクテリウム・ヌクレアタムなど)が増える
・歯周病は心臓病や脳血管障害など重大な病気の原因となる可能性が高い
・大腸がん患者ではフソバクテリウムが検出されることが多い
・歯周病は大腸がんのリスクとなる可能性が高い
・歯周病は結果的に大腸がんの予防となる

「〇〇は歯が命」という言葉も過去に流行りましたが、歯は病と関連する大事な人体の一部で命に直結する可能性もあります。歯周病の方は、歯の治療のみではなくその他のご病気が隠れている可能性があります。くれぐれもご用心ください。

当クリニックでは、大腸がん検査である大腸内視鏡検査の予約を24時間WEBにて承っています。下記より予約が可能です。

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※2021年12月14日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年2月28日に再度公開しました。

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