
健康診断や人間ドックでバリウム検査を受けられる方は多いと思います。バリウム検査で胃ポリープと診断された場合には、皆さまどうされていますか?
「毎年同じだからほっておこうかな」
「たいしたものではないでしょう・・・」
「不安だけど忙しいから、どうしようかな?」
など考えて「要精密検査」となっているのを放置しがちとなってしまってないでしょうか?
今回は、胃ポリープについての解説とバリウム検査で胃ポリープと診断されて再検査と指摘された場合にどうすればいいのかについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
・胃ポリープとは
胃ポリープとは、胃の粘膜にできるキノコ状の隆起で内視鏡検査やバリウム検査の際に偶然見つかることが多い病変です。ほとんどが良性のポリープではありますが、一部悪性を伴うポリープもあるため適切な診断が必要となることがあります。
胃ポリープの種類
代表的な胃ポリープには、下記のようなものがあります。
① 胃底腺ポリープ(FGPs;Fundic gland polyps)
② 過形成性ポリープ(GHPs;Gastric hyperplastic polyps)
上記の胃底腺ポリープと過形成性ポリープが胃ポリープのほとんどを占めています。内視鏡検査をしていて見つかるのはほとんどがこの2つの病変です。一つ一つ解説していきたいと思います。
① 胃底腺ポリープ(FGPs;Fundic gland polyps)
胃底腺ポリープは一番見つかりやすく、胃ポリープの約8割を占めているといわれています。胃底腺ポリープは、「sporadic」といって散発的にできる良性のポリープです。そのほとんどが、数mm以下の小さな病変で大きくても10mm程度の大きさです。


胃底腺ポリープの内視鏡像
最近では、胃底腺ポリープの発生と胃薬(PPIs;Proton-pump inhibitors)の関係が取り上げられてきています。PPIsは、血中のガストリンというホルモンの濃度を高くする作用があります。このガストリンの影響で、胃底腺ポリープが増えると考えられています。
反対に胃底腺ポリープが少ない人はどのような人かというと、ピロリ菌に感染している場合です。ピロリ菌感染は、胃底腺ポリープの発生減少に関係しているのではと報告されています。
過形成性ポリープ(GHPs;Gastric hyperplastic polyps)
過形成性ポリープもよく見られる胃ポリープの一つです。過形成性ポリープは、胃粘膜の慢性的な炎症であるピロリ菌感染などを背景に発生すると考えられています。大きさは2cm以下がほとんどですが、稀に巨大な過形成性ポリープが発見されることもあります。私も直径が10cm以上の巨大な過形成性ポリープを発見したことがあります。


胃過形成性ポリープの内視鏡像
注意すべき胃ポリープ
注意すべき胃ポリープとしては、「がん化をする可能性のある胃ポリープ」と「胃ポリープのような形をした悪性の病変」の二つが挙げられます。どのような病変かというと下記のようなものが挙げられます。
① 過形成性ポリープ
② 胃アデノーマ(Gas;Gastric adenoma)
③ カルチノイド腫瘍(G-NETs;Gastric neuroendocrine tumors)
④ 胃がん
代表的なものとしては上記のようなものがあります。一つ一つ解説していきたいと思います。
① 過形成性ポリープ
過形成性ポリープのほとんどが良性ではありますが、胃粘膜の慢性的な炎症を背景としてがん化することがあると考えられています。実際に過形成性ポリープでは、がんの手前のdysplasia(異形成)は約5%、がんは1%程度の確立で発見されると報告されています。そのため5mm以上の過形成性ポリープは、内視鏡的に切除をしたうえでピロリ菌の除菌を推奨した方が良いとの報告もあります。
② 胃アデノーマ(GAs;Gastric adenoma)
アデノーマは腺腫とも言い良性の腫瘍ですが、腫瘍が大きくなるとがん化することがある病変です。胃にできるアデノーマは、ポリープのような形の他に平べったい扁平なものや陥凹した病変となることもあります。がん化をすることがあるため基本的には内視鏡での切除が望ましいと考えられています。
③ カルチノイド腫瘍(G-NETs;Gastric neuroendocrine tumors)
カルチノイド腫瘍は神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumors)とも言い、胃にポリープ状の隆起を形成することがあります。基本的には粘膜下腫瘍という形態をとるため、胃粘膜の下に腫瘍ができるためキノコ状というよりもなだらかな隆起の病変となります。
カルチノイド腫瘍には、比較的悪性度が低い病変もありますが、その形態や組織像などにより悪性度が高い病変もあります。悪性度の高低により治療方法が変わってきます。悪性度が低い場合には、リンパ節への転移リスクが低いため内視鏡での治療が可能です。悪性度が高く進行している場合には、外科手術や化学療法が必要となります。
④ 胃がん
胃がんもポリープ状の形を呈することがあります。とくに早期がんでポリープ状を呈することが稀にあります。がんが粘膜下に存在する場合には、なだらかな隆起となってポリープ状を呈することもあるため注意深い観察や組織生検などが必要となることがあります。
・胃ポリープは女性に多いのか?
結論から言うと、胃底腺ポリープは女性に多く発生します。
女性においては、胃底腺ポリープが多発して多く見られることがあります。とくに40-60歳の中年層で見られることが多いですが、20歳前後の若年の方でもみられることがあります。女性に多い理由としては、生理に伴うホルモンバランスが影響していると考えられています。
・胃ポリープの検査方法
胃ポリープの検査方法には、主に下記の2つがあります。
① 胃内視鏡検査(胃カメラ)
② バリウム検査(胃透視)
胃内視鏡検査(胃カメラ)
胃ポリープの検査のゴールデンスタンダードは胃内視鏡検査です。直接的に胃ポリープの存在部位・大きさ・形態・色調などを観察することができます。また色素内視鏡検査・拡大内視鏡検査・NBI検査などの特殊な検査もその場で可能です。必要に応じて組織生検もその場でできます。
胃内視鏡検査については、下記のブログ記事もぜひご参考にしてください。
バリウム検査(胃透視)
バリウム検査は、胃透視とも呼ばれ健康診断や人間ドックなどで行われることが多い検査方法です。レントゲンを用いて、発泡剤を飲んでからバリウムを飲んでいきレントゲン撮影を行っていきます。胃ポリープの拾い上げには優れた検査方法ではありますが、放射線被ばくなどの問題もあるため、胃内視鏡検査に代わりつつある検査方法となっています。
バリウム検査については、下記のページもぜひご参考にしてください。
・胃ポリープの治療方法
胃ポリープの切除が必要と判断された場合には、下記のような治療方法があげられます。
① 内視鏡治療
② 外科治療
治療が必要とされる場合には、がん化している場合やポリープから出血が続いて貧血となってしまう場合、ポリープが巨大化して腸管を塞いでしまう場合などが挙げられます。ポリープの治療は、基本的には内視鏡での非侵襲的な治療が選択されます。一つ一つ解説していきたいと思います。
内視鏡治療
内視鏡での治療には下記のようなものがあります。
- 内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー;Polypectomy)
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR;Endoscopic mucosal resection)
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD;Endoscopic submucosal dissection)
形や大きさ、がん化しているかどうかなどを考慮して治療方法を選択します。ほとんどの胃ポリープは、内視鏡的ポリープ切除術で切除をします。大きい病変やがん化している場合には、内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的粘膜下層剥離術で治療することもあります。
内視鏡的粘膜下層剥離術については下記をご参考にしてください。
外科治療
外科治療が必要となるのは下記のような場合です。
- ポリープががん化していてリンパ節転移などが疑われる場合
- ポリープが巨大化しており内視鏡での治療が困難な場合
上記のような場合には外科的な治療が必要となる場合があります。
・バリウム検査で胃ポリープと診断されたら
胃内視鏡検査で胃ポリープ(胃底腺ポリープ)と診断された場合には、基本的には経過観察となります。では、バリウム検査で胃ポリープを指摘された場合にはどうでしょうか?
バリウム検査で、胃ポリープの再検査と判断された場合には胃内視鏡検査での再検査を受けられることをお勧めします。というのも上記で解説してきたように良性のポリープの他にも悪性のポリープの存在が否定できないためです。
検査について疑問等ある場合には、専門医の診察を受けられることをお勧めします。
・まとめ
今回は、「バリウム検査で胃ポリープと診断されたらどうすれば?専門医が解説」についての記事でした。本記事の要点としては、
- 胃ポリープには様々な種類がある
- そのほとんどは胃底腺ポリープで女性に多く発生する
- 胃ポリープにはがん化するものがある
- バリウム検査で再検査を指摘されたら胃内視鏡検査を
ということが要点でした。
胃ポリープと診断されて不安である場合やどのような診察・検査が必要なのかお悩みの場合には、ぜひ当院でご相談ください。
参考文献:
- Carmack SW, Genta RM, Schuler CM, Saboorian MH. The current spectrum of gastric polyps: a 1-year national study of over 120,000 patients. Am J Gastroenterol 2009; 104: 1524-1532
- Vos S, van der Post RS, Brosens LAA. Gastric Epithelial Polyps: When to Ponder, When to Panic. Surg Pathol Clin 2020; 13: 431-452
- Watanabe N, Seno H, Nakajima T, et al. Regression of fundic gland polyps following acquisition of Helicobacter pylori. Gut 2002; 51: 742-745
- Notsu T, Adachi K, Mishiro T, et al. Fundic gland polyp prevalence according to Helicobacter pylori infection status. J Gastroenterol Hepatol 2020; 35: 1158-1162
- Abraham SC, Singh VK, Yardley JH, Wu TT. Hyperplastic polyps of the stomach: associations with histologic patterns of gastritis and gastric atrophy. Am J Surg Pathol 2001; 25: 500-507
- Ginsberg GG, Al-Kawas FH, Fleischer DE, et al. Gastric polyps: relationship of size and histology to cancer risk. Am J Gastroenterol 1996; 91: 714-717
- Odze RD, Marcial MA, Antonioli D. Gastric fundic gland polyps: a morphological study including mucin histochemistry, stereometry, and MIB-1 immunohistochemistry. Hum Pathol 1996; 27: 896-903
施設紹介
東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>
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