健康診断で肝機能異常といわれたら|Q&Aで肝臓専門医が解説

脂肪肝

健康診断で肝機能異常が指摘されるケースはとても多いです。

血液検査では、脂質代謝異常に続いて2番目に指摘されやすい項目です。

令和2年度の厚生労働省の報告では健診全体の17%で異常が指摘されています。

これは血圧の異常で指摘される割合とほぼ同等です。

肝障害を指摘された方は専門機関での精密検査をおすすめします。

この記事では当院の肝臓外来でよく質問されやすい内容を紹介していきます。

目次

[Q&A]

Q.1 肝機能障害があるとどんな症状がでますか?

A. 

健康診断でみつかる多くの肝機能異常の方に症状はほとんどありません。肝臓に軽度な炎症があっても症状が出る事はあまりないからです。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、重度な肝疾患になるまで症状がでないのが特徴です。肝疾患が進行してから出てくる症状として一般的なのが、倦怠感や黄疸などです。

その他の症状が出ている方は肝臓以外の疾患が原因となっている場合が多いです。

Q.2 肝機能障害の原因はなんですか?

A. 

原因としては、アルコール性や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、ウイルス性、自己免疫性、薬剤性、胆道系の異常などがあります。

健康診断で多いのがアルコール性や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。どちらも画像所見(腹部超音波やCT)で脂肪肝がみつかります。

治療としては節酒や体重減少といった生活習慣の改善が必要となります。

Q.3 ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP、ALP、T-Bilが高かったのですがどういう状態ですか?

A. 

肝機能異常で引っかかる方の多くが上記項目で高値となっています。

それぞれの項目の内容は以下の通りです。

AST(GOT)

肝細胞に含まれるアミノ酸を代謝する酵素です。肝細胞をはじめ赤血球や心臓、筋肉などにも多く含まれます。

肝臓の疾患の他、心疾患や筋肉の障害でも上がります。

アルコール性肝障害の場合、ASTの方がALTよりも高値である(AST優位の肝障害)事が多いです。

 

ALT(GPT)

ASTと同様の性格をもつ酵素です。ASTに比べて肝細胞に存在しやすいのが特徴的です。

そのためASTよりも肝臓の疾患で特異的に上がりやすい酵素です。

γ-GTP肝臓内の胆管の細胞に存在します。アルコール性などの肝機能異常や胆石などの胆道系疾患でも上がりやすいです。
ALPリン酸化合物を分解する酵素です。肝臓で作られる消化液である胆汁に含まれるため、胆石や胆管炎、胆道癌などで胆汁がうっ滞した際に上がりやすくなります。肝臓や腎臓、骨などで作られますので肝臓以外の臓器障害でも上がることがあります。
T-Bil(総ビリルビン)ALPと同様に胆汁に含まれるので胆汁うっ滞や肝機能低下で上がりやすい数値です。元々は赤血球に含まれる色素であり、古くなった赤血球が壊されて肝臓で処理されて胆汁に排泄されます。生まれつき少し高い人もいます。

Q.4 肝機能異常と肝硬変、肝癌の関係

 

A. 

肝機能異常を放置すると肝障害が慢性化し、徐々に肝臓の線維化が起きてきます。

肝臓の線維化が進行した状態が肝硬変です。線維化が進むにつれて肝癌が発生しやすくなります。

Q.5  肝臓に良い食べ物はなんですか?

A. 

肝臓に良い食べ物をみつけるのはとても難しいので基本的には肝臓に悪い食事を避けてバランスのよい食事を心がけてください。

肝臓に悪いものとしては、アルコールや鉄分の多い物、糖質や脂質の高い物があげられます。

Q.6  ストレスで肝機能は悪くなりますか?

A. 

仕事などのストレスが肝機能障害を及ぼすかどうかは今の所ハッキリと分かっていません。

ただ運動不足や暴飲暴食などの生活習慣の乱れは脂肪性肝障害の原因となりますので、生活習慣を乱してしまうようなストレスは避けた方がいいでしょう。

Q.7  シジミやウコンは肝臓に効きますか?

A. 

シジミやウコンには鉄分が多く含まれています。鉄分の過剰摂取は肝臓にはあまり良くないとされてます。

また基本的に肝機能障害がある人にはサプリメントはあまりおすすめできません。

薬剤の多くは肝機能障害を起こすリスクがあり、サプリメントでの肝障害も多く報告されていますので不必要な薬剤はなるべく減らした方がよいでしょう。

Q.8  脂肪肝といわれましたが何が原因ですか?

A. 

脂肪肝の原因として多いのが肥満とアルコールです。

改善するためには体重減少や節酒が必要になります。

Q.9  痩せていて飲酒もしないのに脂肪肝と言われています。

 

A. 

非肥満者の15%に脂肪性肝障害がいると報告されています。

BMI (Body Mass Index)が25以下であっても肝臓に脂肪がたまっている人がアジアでは多くいることがわかっています。その原因の一つとしてアジア人に多い遺伝子が関与しているといわれています。

また、それ以外にも薬剤や自己免疫性肝炎、飢餓状態、先天性代謝異常、消化管手術後などの二次性に脂肪肝を生じる疾患もあります。

Q.10  脂肪肝といわれましたが血液検査で異常が無ければ大丈夫ですか?

A. 

数値として現れてなくとも肝臓に炎症を起こしている場合や既に線維化が進んでいる可能性があります。脂肪肝を指摘されたのであれば一度専門医療機関の受診をおすすめします。

Q.11  お酒はどのくらいなら飲んでも大丈夫ですか?

A. 

お酒による肝機能障害は人それぞれ異なりますので一概にはいえませんが、厚生労働省からの指針によりますと、一日あたり純アルコール20g程度の節度ある適度な飲酒が推奨されております。

ビールでいうと500ml缶が1本程度になります。

※主な酒類の換算の目安(アルコール健康医学協会ホームページから抜粋)

お酒の1単位(純アルコールにして 20g)

種類 アルコール度数 飲み方
ビール5度 中びん1本500ml
日本酒15度1合180ml
焼酎25度0.6合約110ml
ウイスキー43度ダブル1杯60ml
ワイン14度1/4本約180ml
缶チューハイ5度ロング缶 1缶500ml

ただし全ての人にあてはまる基準ではなく、以下に該当する人はさらに少ない量が適当です。

・女性

・飲酒してすぐ顔が赤くなる人

・65歳以上の高齢者

・アルコール依存症者(完全断酒が必要)

・飲酒習慣のない人

Q.12  女性のお酒の適量を教えてください。

A. 

女性は男性よりも少ない量が適量とされています。

海外の研究結果では、男性については1日あたり純アルコール10-19g、女性では1日あたり9gまででもっとも死亡率が低く、飲酒量が増加するにしたがって死亡率が上昇することが報告されています。

Q.13  脂肪肝に薬はありますか?

A. 

脂肪肝に効果がある薬はいくつか報告されていますが、現時点で脂肪肝に対して直接処方できる薬剤に保険適用はありません。

糖尿病や抹消循環障害などで使用される薬剤で脂肪肝にも効果がみられることが報告されています。

Q.14  脂肪肝で痩せる体重の目安はどのくらいですか?

A. 

脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)での具体的な減量目標としては、ダイエット前の体重から5%の減少で生活の質が改善し、7%以上の減少で肝内の脂肪化が改善し、10%以上の減量で肝線維化が改善すると報告されています。

具体例を挙げると、60kgの人は55.8kg以下に、70kgの人は65.1kg以下に減量することで脂肪肝が改善する見込みがあります。

ただ、個人によって脂肪や筋肉の割合は異なりますので医療機関で適切な指導をうけながら減量することをおすすめします。

Q.15  脂肪肝ではどのような食事をしたらいいですか?

A. 

肥満を伴う脂肪肝の方に対しては低カロリー食が推奨されています。

脂質や糖質を減量することでダイエット前の食事よりも1日で30%程度カロリーを減少させるのがよいとされています。

自分でカロリー計算をしながら食事をするのは大変ですし続かない人が多いので、専門医療機関で栄養士の指導の下食事内容を見直すのが最短の道でしょう。

当院の肝臓外来では1食1600kcal(糖質40%、蛋白質25%、脂質35%)の糖質制限食の摂取を推奨しております。

Q.16  コーヒーは脂肪肝に悪いですか?

A. 

コーヒーは脂肪肝に良いとされています。

コーヒーの摂取が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や線維化の進展、肝発癌を予防するといった疫学研究が複数あり、メタアナリシスの結果からも証明されています。

ただし、カフェインの過剰摂取は中毒症状をきたす恐れがありますので飲みすぎには注意してください。

Q.17  脂肪肝ですがどのくらい運動したらいいですか?

A. 

肥満を伴う脂肪肝では1日のうち30分以上の有酸素運動を週3回以上行い、それを継続することで3か月以内に脂肪肝が改善することが報告されています。

体重が減少した人でより脂肪肝の改善効果が得られますので、適切な食事制限と組み合わせて運動することをおすすめします。

Q.18  脂肪肝で肝生検は必要ですか?

A. 

肝生検とは、身体の皮膚の上から細い針を肝臓に刺して肝臓の一部を採取する検査です。肝生検は脂肪肝において可能な限り行うことを考慮するよう日本消化器病学会のガイドラインに記載されています。しかし、侵襲的な検査になるので他の肝疾患との鑑別や肝硬変に近い状態を疑う際に推奨されています。

肝生検を行う際には基本的に2-3日の入院になります。

Q.19  脂肪肝は癌になりますか?

A. 

脂肪肝は肝癌の原因になります。長期にわたって脂肪性肝障害があると、肝臓が線維化をおこし硬くなっていきます。

その線維化の程度に伴って発がん率が高くなります。肝硬変の人であれば年間2%以上という報告もあります。

また脂肪肝の患者さんに乳癌、大腸癌の合併が多い事が報告されています。

Q.20  B型肝炎といわれましたが治りますか?

A. 

B型肝炎は現在の医療技術では根治するのは難しい疾患です。ただし、薬剤により肝臓で生じる炎症を抑えて、肝障害や発癌リスクを下げることができます。

B型肝炎ウイルスが慢性的に肝臓に炎症を起こしている人は核酸アナログ製剤と呼ばれる薬剤を毎日内服する必要があります。ウイルスを持っていても肝障害を引き起こしていない状態で内服薬が必要のない方もいます。

B型肝炎の項目で要精査となった方は消化器内科を受診した上で適切な追加精査やフォローアップを行ってください。

Q.21  C型肝炎といわれましたが治りますか?

A. 

C型肝炎は内服薬によって根治が期待できる疾患です。以前は副作用の多いインターフェロン治療を行っていましたが、現在では副作用の少ない内服薬での治療が可能です。また、過去にインターフェロン治療で上手くいかなかった方も根治が期待できます。

C型肝炎は肝硬変や肝癌となるリスクの高い疾患であり、健診で要精査となった方は肝臓専門医がいる病院を早めに受診して頂く事をお勧めします。

Q.22  自己免疫性肝炎といわれましたが治りますか?

 

A. 

自己免疫性肝炎は根治が難しい疾患です。しかし、ステロイドやその他の免疫抑制剤により炎症を抑えることができれば、肝炎を持っていない方と同等な予後となります。そのため、早めの診断と適切なフォローアップが必要です。

自己免疫性肝炎が疑われるようであれば疾患を放置せずに消化器内科で肝生検を含めた精査を受けたのちに継続的な受診をして頂く事をおすすめします。

Q.23  原発性胆汁性胆管炎といわれましたが治りますか?

A. 

原発性胆汁性胆管炎は抗ミトコンドリア抗体という血液検査項目が異常となりやすい疾患です。

根治が難しい疾患ではありますが、ウルソデオキシコール酸という薬剤の内服で多くの方が肝障害を改善できます。稀に自己免疫性肝炎が合併することがあります。

Q.24  薬が原因で肝障害になりますか?

A. 

薬には副作用があり、その中でも肝障害は頻度の高い副作用の一つです。

近年はサプリメントや健康食品で肝障害をきたすケースも増えており注意が必要です。肝障害が生じる時期としては薬を内服してから30日以内におこる事が半数以上ですが、90日以降に肝障害が生じる事も少なくありません。

薬剤性肝障害は稀に劇症化して死に至る場合もあるため、不必要な薬剤は内服しないのがよいでしょう。

肝障害の頻度が高い薬剤は、抗生物質や解熱鎮痛剤、精神・神経科用薬、健康食品、漢方などが報告されています。

診察予約は下記より受け付けています。

【参考文献】

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