内視鏡検査における静脈麻酔(鎮静剤)のメリットとデメリットとは?

内視鏡検査の静脈麻酔は非常に楽に検査を受けるために必須の処置です。静脈麻酔を使用して検査を受けられた方は、その重要性を理解していただいているかと思います。

内視鏡検査において静脈麻酔のメリットは楽に無痛で検査を終えられるために使用されますが、ではデメリットはどのようなものがあるかについてもよく理解する必要があるかと思います。

今回は、内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)における静脈麻酔(鎮静剤)のメリットおよびデメリットについて詳細に解説したいと思います。本記事を読むことで、内視鏡検査における静脈麻酔の重要性について理解をしていただき検査を受ける際に役立てていただけたらと思います。

1章、内視鏡検査における静脈麻酔

内視鏡検査では、口ないしおしりから直径1cmほどのスコープを挿入しなければなりません。人によっては非常に苦痛な検査となります。一瞬で終わるならまだしも、検査時間は短くても数分、長いと10分以上かかります。

苦痛のある内視鏡検査をどのようにしたら楽で無痛の検査にできるのかについて解説していきます。

1-1、静脈麻酔とは

静脈麻酔とは、血管(静脈)から鎮静剤を注入して眠った状態にする方法です。

静脈麻酔は、全身麻酔とは異なりご自身で呼吸を無意識に続けてもらう状態となります。静脈麻酔では、鎮静剤の量を調節して浅く眠ってもらった麻酔方法なのです。反対に全身麻酔では、麻酔で深く眠らせるため自分で呼吸することができません。そのため気管挿管といってチューブを気管に挿入します。

静脈麻酔では、浅く眠った状態となりますが、内視鏡の検査中には痛みもなく検査が終わったら目が覚めるといった状態となるため楽に検査を終えることができます。

1-2、静脈麻酔の使用方法

静脈麻酔を使用する場合には、必ず腕に血管路(けっかんろ)といって点滴の針を留置する必要があります。この血管路は、サーフローといってプラスチック製の極細の筒を静脈に刺して留置をします。この留置されたサーフローから適宜鎮静剤を注入していきます。

この血管路は、検査が始まる前に留置をします。検査の直前に鎮静剤を注入して眠った状態になってから胃カメラないし大腸カメラの検査を始めていきます。

検査中は、生体モニターを使用して血圧や酸素飽和度(SpO2)を監視して検査を行います。患者さんが目を覚ましてきたり体動が出てきた場合には、適宜鎮静剤を追加して麻酔をコントロールしていきます。

2章、胃カメラにおける静脈麻酔

この章では、胃カメラにおける静脈麻酔のメリットとデメリットについて解説していきたいと思います。

2-1、静脈麻酔のメリット

胃カメラにおける静脈麻酔のメリットとしては以下のようなことが挙げられます。

・楽に無痛で検査を終えることができる
・嘔吐反射がない
・検査医師が検査に集中できる

一つ一つ解説していきたいと思います。

楽に無痛で検査を終えることができる

なんといっても静脈麻酔を使用する一番のメリットはこちらです。鎮静剤を使用することで楽にほぼ無痛で検査を終えることが可能です。楽に検査を終えるためには、必ず静脈麻酔が必須と考えていただきたいと思います。

反対に静脈麻酔を使用しない場合にはそこそこツライ検査となります。人によっては、今後絶対に受けたくないというほどのツライ経験となることもあります。

胃カメラは人生において何回かは受けていただく必要のある検査ですので、ツライ経験とならないように静脈麻酔を使用することをぜひおすすめします。

嘔吐反射がない

静脈麻酔を使用すると嘔吐反射がほとんどなく検査を終えることができます。内視鏡のスコープが喉元に来ると「オエッ」とすることが皆さんがあるかと思いますが、静脈麻酔で眠った状態となるため嘔吐反射がありません。

嘔吐反射がひどい方の場合には、検査後に喉が痛くなる方がいらっしゃいます。喉の痛みの予防という観点からも静脈麻酔の使用をおすすめします。

*静脈麻酔を使用して眠った状態でも中には嘔吐反射が無意識に起こる方もわずかではありますがいらっしゃいます。このような方の場合には、検査後に喉の痛みを訴えることが稀ですがあります。

検査医師が検査に集中できる

通常、静脈麻酔を使用しないで意識のあるまま検査をする場合は、のどの反射が起こります。咳き込んだり、げっぷが頻回にでることがあるため患者さんの状態が気になり検査をしている医師は検査に集中できないことがあります。

患者さんがツライ思いをしているとなると心情的に早く終わらせてあげたいと思うのが人情です。そのためなるべく早く検査を終わらせようとしてしまうため胃や大腸の粘膜をしっかりと観察することができず病変の見逃しに通じてしまうこともあり得ます。

クオリティの高い内視鏡検査を受けるためには、静脈麻酔を行うことで医師が検査に集中することも大事なのです。

2-2、静脈麻酔のデメリット

静脈麻酔を使用することでいくつかのデメリットがあります。デメリットとしては以下のようなことが挙げられます。

・血圧が下がることがある
・呼吸が浅くなることがある
・アレルギー反応がある
・無意識にマウスピースで口の中が傷つくことがある
・鎮静剤の血管外漏出の可能性がある
・検査中に内視鏡の画面を見ることができない
・当日車・バイク・自転車の運転ができない

一つ一つ解説していきたいと思います。

血圧が下がることがある
呼吸が浅くなることがある

一番のデメリットは、なんといっても静脈麻酔には血圧低下や呼吸が浅くなるといった副作用があることです。そのため生体モニターという血圧や酸素飽和度(SpO2)を監視する機器を用いて安全に麻酔が行われているか確認しながら検査を行う必要があります。

血圧低下や呼吸が浅くなる場合には、鎮静剤の投与量を調節しながら検査を行っていきます。血圧が極端に下がったり酸素飽和度(SpO2)が下がる場合には、点滴を流したり酸素を投与したりすることがあります(ほとんどありませんが)。

アレルギー反応がある

鎮静剤の使用は、稀にアレルギー反応が起こることもあるため、以前静脈麻酔を使用してアレルギーがあった方や特定の物質にアレルギー反応がある方には使用することができない場合もあります。

無意識にマウスピースで口の中が傷つくことがある

静脈麻酔を使用すると眠っている最中にご自身で口をモゴモゴと動かしてしまうことがあります。その際に検査に必要な口にくわえるマウスピースと口の中が擦れることで傷が付いてしまうことが稀にあります。

鎮静剤の血管外漏出の可能性がある

静脈麻酔の投与は、サーフローより鎮静剤を注入していきます。細い血管の中にプラスチックの極細の筒を留置して鎮静剤を投与しますが、血管が脆かったり検査中に体が動くことでサーフローの位置がズレたりすると鎮静剤が血管の外に漏れる(血管外漏出)ことが稀にあります。このような場合に漏れた鎮静剤の影響で腕に痛みが出ることがあります。氷で冷やすなどの対処をして炎症を抑える必要があります。

検査中に内視鏡の画面を見ることができない

静脈麻酔を使用すると眠ってしまうため内視鏡検査中の画面を見ることができません。当クリニックでは、検査が終わったら内視鏡画像を確認しながら説明するため安心していただけたらと思います。

当日車・バイク・自転車の運転ができない

静脈麻酔を使用した場合には、当日の車・バイクや自転車などの乗り物の運転ができませんのでご留意ください。

以上のようなデメリットはありますが、楽に(無痛で)検査を受けれるというメリットがデメリットを上回ると考えられます。

3章、大腸カメラにおける静脈麻酔

この章では、大腸カメラにおける静脈麻酔のメリットとデメリットについて解説していきたいと思います。

3-1、静脈麻酔のメリット

大腸カメラにおける静脈麻酔のメリットとしては以下のようなことが挙げられます。

・楽に無痛で検査を終えることができる
・検査医師が挿入に疲れないため検査に集中できる

一つ一つ解説していきたいと思います。

楽に無痛で検査を終えることができる

大腸の内視鏡検査はお腹の中に異物である内視鏡スコープを挿入していくため、検査中に腸が押されたり引っ張られたりするため非常にツライ検査です。また検査中は、空気を入れながら検査を行うためおなかの張りも出るため苦しく感じる方もいます。

静脈麻酔を使用することで、眠った状態で検査を受けることができるため痛みや苦しさを感じることなく検査を終えることができます。静脈麻酔を使用した大腸内視鏡検査についてのご相談は外来にて承っています。下記より24時間外来予約が可能です。

 

検査医師が挿入に疲れないため検査に集中できる

大腸内視鏡検査は、患者さんのお腹の状態で検査の時間(内視鏡スコープの挿入時間)が変わります。患者さんの大腸が長い場合やお腹の手術をしたことがある場合、大腸の中に便が残っていたりなどの場合には検査時間が長くなってしまいます。また大腸が過剰に動いている場合には、内視鏡スコープの挿入が難しくなることがあります。

静脈麻酔を使用した場合には、大腸の動きが落ち着いていることが多いため内視鏡スコープの挿入が比較的楽なため検査医師が疲れないというメリットがあります。疲労が少ない分検査に集中でき、見逃しなどが少なくなる可能性があります。

3-2、静脈麻酔のデメリット

大腸カメラにおいて静脈麻酔を使用することでいくつかのデメリットがあります。デメリットとしては以下のようなことが挙げられます。

・血圧が下がることがある
・呼吸が浅くなることがある
・アレルギー反応がある
・鎮静剤の血管外漏出の可能性がある
・検査中に内視鏡の画面を見ることができない
・当日車・バイク・自転車の運転ができない

ほとんど胃カメラの場合と同様です。

胃カメラと同様に以上のようなデメリットはありますが、楽に(無痛で)検査を受けれるというメリットがデメリットを上回ると考えられます。

4章、静脈麻酔についてのQ&A

この章では、静脈麻酔に関する質問に関してお答えしたいと思います。

Q1、静脈麻酔は誰でも使用できますか?

静脈麻酔は、基本的にはアレルギーなどの禁忌と言われるものが無ければ使用は可能です。以下のような場合には使用することができないことがあります。

・鎮静剤にアレルギー反応がある
・重度の肺疾患を患っている
・重度の心臓疾患を患っている
・重度の感染症を患っている

また小児(15歳未満)に関しては当クリニックでは、静脈麻酔を使用した内視鏡検査に対応していないため小児科のある施設にご相談いただけたらと思います。

Q2、静脈麻酔はどの医療施設でも受けることができますか?

静脈麻酔を使用した内視鏡検査に対応している医療施設は限られていますのでHPなどを確認してから受診および検査を受けられることをお勧めします。

当クリニックでは、胃カメラおよび大腸カメラともに静脈麻酔を使用した内視鏡検査に対応していますのでご気軽にご相談ください。

Q3、静脈麻酔の費用はいくらかかりますか?

静脈麻酔を使用した場合の費用は、鎮静剤の薬剤の費用である60円~540円程度かかる。

内視鏡検査の鎮静剤の費用としては、使用する種類にもよりますがおおよそ6点~54点(60円~540円)程度かかります。手技料やその他の資材料などはかかりませんので、自己負担率が3割負担の場合20~160円となります。

静脈麻酔を使用した内視鏡検査の費用については、「胃内視鏡検査(胃カメラ)の費用はいくらかかるの?」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

デメリットもある静脈麻酔ですが、適切に使用すれば有意にメリットがデメリットを上回るものです。内視鏡検査における静脈麻酔についてのポイントとしては、

・静脈麻酔を使用することで楽に内視鏡検査が可能となる
・静脈麻酔の使用は質の高い内視鏡検査を可能とする
・静脈麻酔の使用はメリットがデメリットを上回る

クオリティおよび精度の高い内視鏡検査を受けていただくためにぜひ静脈麻酔を使用した内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。

当クリニックでは、24時間WEBにて検査の予約を承っています。下記より予約が可能です。

 

 

※2021年10月2日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年2月8日に再度公開しました。

 

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