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なぜ若い人の血便は潰瘍性大腸炎を疑うべきなのか?

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「以前もあったけど便に血が混じるなぁ、どうしたらいいんだろう?」

 

というような経験はないでしょうか?若い方で便に血が混じる病気(血便)の場合には、潰瘍性大腸の可能性があります。潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こる炎症性腸疾患(IBD)の1種で大腸粘膜にびらんや潰瘍などができる慢性のご病気です。

 

潰瘍性大腸炎の多くは、10代後半~30代前半に発症することが多く、現在日本では約22万以上の方が悩むご病気です。潰瘍性大腸炎の症状は、腹痛・下痢・血便などの症状を呈することが多く、再燃と寛解(悪くなったり良くなったり)を繰り返しながら慢性の経過をとっていくため日常に影響を及ぼすご病気です。

 

潰瘍性大腸を診断するためには潰瘍性大腸炎に特徴的な症状の他に大腸カメラにより直接大腸の粘膜の確認が必要です。大腸カメラを行い、大腸の粘膜の状態を確認して潰瘍性大腸炎の病勢や治療の効果などを確認していくことが大切です。また、潰瘍性大腸炎は大腸がんのリスクも高いことから必要に応じて大腸カメラを定期的行っていく必要もあります。

 

今回は、潰瘍性大腸炎について大腸カメラを受ける意義も含めて解説していきたいと思います。

 

[目次]

 

1章、潰瘍性大腸炎とは

 

潰瘍性大腸炎は、現在日本においては22万人以上とされており世界で見ると米国についで第2位の患者数が確認されています。潰瘍性大腸炎は、完治することは困難で長期に症状が続くことが多いご病気です。潰瘍性大腸炎は、国により難病指定の対象となっている疾患です。潰瘍性大腸炎の治療の目標は下記の2つが主要なものとなります。

 

・症状の緩和(短期目標)

・予後の改善(長期目標)

 

この2つの治療目標を達成することが潰瘍性大腸炎にとって大事なことであると考えられています。

 

1-1、潰瘍性大腸炎の発症年齢

 

潰瘍性大腸炎の発症年齢は、下図のように10代後半~30代前半に集中しています。とくに男性においては女性よりもより若年で発症しています。

 

難病情報センターより引用

 

発症のピーク

・男性:20~24歳

・女性:25~29歳

 

多くは若い方が発症する病気ですが、高齢者での発症も決して稀ではありません。また潰瘍性大腸炎は慢性のご病気で経過の長いものとなるため、高齢者の潰瘍性大腸炎患者自体も増えているのが現状です。

 

1-2、潰瘍性大腸炎の症状

 

 

潰瘍性大腸炎について一番重要とされる症状は「血便」です。

 

血便の他には、以下のような症状が認められます。

 

  • 粘血便
  • 下痢
  • 血性下痢

 

などが症状の重さによってでてきます。とくに重症化すると粘液と血液が混じる粘血便や下痢と血液が混じる血性下痢などがでてきます。

 

他の症状としては、

 

  • 腹痛
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 貧血
  • 体重減少

 

などが出ることもあります。

 

基本的には、血便があるかどうかが潰瘍性大腸炎の診断の目安となりますが、繰り返す腹痛や下痢などの腹部症状がある場合には潰瘍性大腸炎も疑わなければなりません。

 

10代や20代で血便を繰り返す場合には、潰瘍性大腸炎が疑われます。症状の有る方は、専門外来を受診することをお勧めします!

 

1-3、潰瘍性大腸炎の原因

 

潰瘍性大腸炎の原因については現在のところ明らかになってはいません。

 

潰瘍性大腸炎発症の関与が疑われるものとしては現在のところ以下のようなものが考えられています。

 

①遺伝子の変異による影響

②食事や感染などの環境因子

③腸内細菌のDysbiosis(ディスバイオーシス)

 

それぞれについて解説していきたいと思います。

 

①遺伝子の変異による影響

 

同じ家族内で潰瘍性大腸炎を発症する家族がいることが報告されていることから、昔から遺伝的な問題で潰瘍性大腸炎が発症するのではないかと言われてきました。近年では、潰瘍性大腸炎にかかりやすい可能性のある特徴的な遺伝子が複数報告されています。ただしこのような遺伝子があるからといって必ず潰瘍性大腸炎にかかるということではないようです。潰瘍性大腸炎の発症には、その他の因子(食生活・衛生環境・腸内細菌)などが複雑に関係していると思われます。

 

②食事や感染などの環境因子

 

潰瘍性大腸炎は、欧米や日本などの国では患者数が多いのですが、いわゆる発展途上国では患者数が少ないと報告されています。ただし、近年では東南アジアやアフリカでも潰瘍性大腸炎の患者数は増加しているようです。これは、工業化や食生活の変化や衛生環境などが影響していると考えられています。つまり社会の西洋化と潰瘍性大腸炎の関連が、密接にあるのではないかと考えられています。

 

③腸内細菌のDysbiosis(ディスバイオーシス)

 

潰瘍性大腸炎では、腸内細菌のバランスが崩れておりDysbiosisの状態であることが指摘されています。

 

腸内細菌とは腸管内に存在する腸内細菌叢(腸内フローラ)のことを言います。腸内細菌には、善玉菌と悪玉菌が存在して、善玉菌・悪玉菌のバランスが崩れてしまうことをDysbiosisといいます。

 

潰瘍性大腸炎では、このDysbiosisが潰瘍性大腸炎の原因となっているのか、それとも潰瘍性大腸炎による大腸の炎症がDysbiosisとなっているのかはっきりとはしておらず今後の研究結果が待たれるところです。またDysbiosis自体、大腸粘膜の炎症に関わっているため潰瘍性大腸炎にとっても悪影響であると考えられます。

 

*腸内細菌とDysbiosisに関してはこちらの記事をご参考ください「大腸がん予防には腸活(健康的な食事・プロバイオティクス)が有効!」

 

1-4、潰瘍性大腸炎は大腸がんのハイリスクのご病気

 

潰瘍性大腸炎は、大腸がんのリスクが高いと言われており定期的な大腸カメラが必要です!

 

潰瘍性大腸炎合併大腸がん(Colitis-associated cancer: CAC)とは、長期の潰瘍性大腸炎の方に起こる大腸がんのことを言います。

 

潰瘍性大腸炎は、大腸がんなどの腫瘍のハイリスクのご病気と言われています。大腸がんや全がん病変のDysplasia(ディスプレージア)の発生率は、潰瘍性大腸炎の発病以降10年で3.3%、20年で12.1%と言われています。そのため潰瘍性大腸炎の腫瘍に対する外科治療が増えてきていると言われています。

 

各国(日本を含む)のガイドラインでは、潰瘍性大腸炎発症8年後からサーベイランス内視鏡といって定期的に大腸カメラを行うことが推奨されています。ただし、8年経過していない場合でも大腸がんの報告の割合は低いものではないため、専門の医師とどの程度の間隔で大腸カメラを行うのがいいのか相談する必要があります。適切な時期・適切な間隔で大腸カメラを行うことでCACの早期発見につながると考えられています。 

 

2章、潰瘍性大腸炎の検査

 

潰瘍性大腸炎が疑われた場合には、大腸カメラや採血検査などが必要となります。1つ1つ解説していきたいと思います。

 

2-1、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)

 

血便などが認められ症状から潰瘍性大腸炎が疑われた場合には、大腸カメラを行う必要があります。

 

大腸カメラを行う必要があるのは、以下のためです。

 

①潰瘍性大腸炎の診断を確定させるため

②潰瘍性大腸炎の重症度を評価するため

 

上記について解説していきたいと思います。

 

①潰瘍性大腸炎の診断を確定させるため

 

まずは、診断を確定させる必要があります。実際に大腸の粘膜を観察することで、潰瘍性大腸炎かどうかを調べなければなりません。大腸自体は、直腸から盲腸まで1.5mほどあり長い臓器ですので、その中でどこの部分に炎症があるのかなどを観察する必要があります。また、実は潰瘍性大腸炎ではなくて違うご病気のこともあるため他のご病気を除外する必要もあります。必要に応じて組織を採取して病理検査に出す必要もあります。

 

基本的には、大腸全体を見た方が良いのですが、潰瘍性大腸炎の活動期といって血便やお腹の状態が悪い場合には無理して大腸全体を見ると悪化することもあり得ます。そのため、大腸の前処置(下剤)はかけずに大腸の観察できる範囲内で潰瘍性大腸炎の評価をすることがあります。潰瘍性大腸炎の活動期の方の場合には、血便や下痢症状の方がほとんどのため、いわゆる固形の便が大腸内に少ないことが多く前処置無しで大腸カメラを行えることが多いのです。

 

②潰瘍性大腸炎の重症度を評価するため

 

大腸カメラを行い潰瘍性大腸炎かどうかを確認するのと同時に重症度の評価も行います。専門用語となってしまいますが、我々内視鏡医は、下記のような所見が無いかどうかを見ながら検査を行っています。

 

  •  血管透見消失:正常の大腸粘膜の場合には、血管を認識することができます。炎症が続くと粘膜がただれて血管を認識することが出来なくなります。
  •  粘膜粗造、顆粒状粘膜:正常の大腸の粘膜は、ツルツルとして表面が滑らかな状態です。炎症が続くと粘膜の表面は粗くなってきます。
  •  びらん、潰瘍:大腸粘膜の炎症が悪化すると大腸粘膜にびらんや潰瘍ができます。
  •  易出血性:炎症が悪化すると粘膜がもろくなり出血をします。

 

潰瘍性大腸炎の大腸粘膜像

 

これらの所見をみつつ大腸カメラで潰瘍性大腸炎の重症度を判定します。実際には、UCEIS(Ulcerative Colitis Endoscopic Index of Severity)というスコアリング法で重症度を判定します。UCEISスコアは、内視鏡所見と患者さんの症状とよく相関しており病状把握や治療効果などの判定に役立つと考えられています。

 

UCEISスコア

 評価項目 スケール  定義
血管像(V)

正常(0)

正常血管または分枝血管のにじみ

斑状消失(1)

血管像の斑状消失

消失(2)

血管像の完全消失

易出血性(B) なし(0) 出血なし
粘膜出血(1) 粘膜表面の点状・縞状の凝血
軽度の管腔内出血(2) 管腔内の液状血液
中~重度の管腔内出血(3) 明らかな粘膜からの出血・湧出性出血
粘膜損傷(U) なし(0) びらん・潰瘍のない正常粘膜
びらん(1) 平坦な小粘膜欠損(5mm以下)
表面潰瘍(2) 大きな粘膜欠損(5mm以上)
深掘れ潰瘍(3) 辺縁隆起を伴う深掘れ潰瘍

 

また、潰瘍性大腸炎の臨床的な重症度を判定するためには、以下のような分類を使用します。

 

潰瘍性大腸炎の臨床的重症度分類

  重症 中等症 軽症
1:排便回数 6回以上 重症と軽症の中間 4回以下
2:顕血便 (+++) (+)~(-)
3:発熱 37.5℃ 以上 (-)
4:頻脈 90/分 以上 (-)
5:貧血 Hb 10g/dL 以下 (-)
6:赤血またはCRP 30mm/h 以上 or 3.0mg/dL 以上 正常

重症:1および2の他に、3または4のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目を満たすもの

中等症:重症と軽症の中間

軽症:上記の6項目を全て満たすもの

*潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和2年度改訂版より引用

 

 

2-2、潰瘍性大腸炎のバイオマーカー(治療効果の指標)

 

潰瘍性大腸炎を診断するためには、大腸カメラが必要となりますが、治療の効果判定などで頻回に大腸カメラを施行することは身体への負担となるため代わりとなるバイオマーカー(治療の効果の指標)が必要となります。

 

潰瘍性大腸炎のバイオマーカーとしては以下のようなものがあります。

 

①便中カルプロテクチン

②血清LRG

 

上記について解説していきたいと思います。

 

①便中カルプロテクチン

 

便中のカルプロテクチンを測定することが潰瘍性大腸炎の治療の効果判定に有用であると言われています。便中カルプロテクチン濃度は、好中球の活動を反映していると考えられており、潰瘍性大腸炎の活動性を判定する補助診断として使用されます。便の検査のため簡便に検査が可能であるため身体への負担がありません。

 

ただしカルプロテクチンは、潰瘍性大腸炎以外の疾患や年齢・肥満・薬剤などの影響も受けるため検査の際には注意が必要と考えられています。

 

②血清LRG

 

血清LRGは、Leucine-rich alpha-2 glycoproteinの略で、潰瘍性大腸炎の新たなバイオマーカーとして注目されています。潰瘍性大腸炎の活動性が高くなると血清LRGも高くなります。潰瘍性大腸炎の活動性のモニタリングを採血検査で迅速に行うことができます。

 

ただし、リウマチ疾患や感染症・悪性腫瘍などで血清LRGは高くなることがあるため注意が必要です。

 

2-3、その他の血液検査や画像検査

 

潰瘍性大腸炎では、その他に下記のような検査を行います。

 

①採血検査

②CT検査やMRI検査

③腹部エコー検査

 

それぞれについて解説していきます。

 

①採血検査

 

採血検査では、白血球・CRP(血清C反応性たんぱく)・赤沈(赤血球沈降速度)などで炎症の程度を調べます。血便が悪化すると貧血になることもあるためHb(ヘモグロビン)や血性鉄などを調べることも必要です。総蛋白やアルブミンなどは、栄養状態の指標となります。また、その他の臓器などに影響がないかなども調べることが出来ます。

 

②CT検査やMRI検査

 

CT検査やMRI検査では腸管の状態の他に他の臓器に問題がないかどうかを調べることが可能です。潰瘍性大腸炎では、大腸の炎症の他に腸管外合併症と言ってその他のご病気になることがあります。腸管外合併症としては、下記のようなものが挙げられます。

 

  • 原発性硬化性胆管炎
  • 強直性脊椎炎
  • 骨粗しょう症
  • 尿路結石症など

 

以上のようなものをCT検査・MRI検査で検索することが可能です。

 

③腹部エコー検査

 

腹部エコー検査では、CT検査やMRI検査同様に腸管の状態の把握に役立ちます。腸管の浮腫みや拡張などをリアルタイムに見ることが出来ますが、腸管にガスが多い場合には検査に影響が出ることがあります。その他、腸管外合併症である胆管・腎臓などもチェックすることが可能です。

 

3章、潰瘍性大腸炎の治療

 

潰瘍性大腸炎の治療は、以前は症状を改善させることが中心に治療が行われていました。現在では、治療薬も様々なものが開発され、潰瘍性大腸炎の治療は「粘膜治癒」といって粘膜の炎症を制御することが中心となってきています。

 

3-1、5-ASA 製剤

 

5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤は、潰瘍性大腸炎に対して最初に投与されるFirst Line Drugとして位置付けられているお薬です。5-ASA 製剤は、40年ほど前から使用されており潰瘍性大腸炎に対する有用性と安全性が確立されているお薬です。

 

5-ASA製剤は、メサラジン(5-ASA)という成分が炎症を抑える働きをします。潰瘍性大腸炎では、炎症性細胞からロイコトリエンなどのケミカルメディエーター(生理活性物質)が放出され炎症の原因となります。メサラジンは、これらのケミカルメディエーターが作られるのを邪魔することで炎症の原因を取り除くことが出来ます。

 

メサラジンは、そのままの状態では内服すると小腸でほとんど吸収されてしまいます。潰瘍性大腸炎の場合には、大腸の粘膜に炎症が起こるためメサラジンが小腸で吸収されずに大腸に届くことが必要です。そのためDDS(Drug Delivery System)といって各々の5-ASA製剤でメサラジンを運ぶ方法が異なっているのです。

 

現在使用できる5-ASA 製剤としては以下のようなものがあり、それぞれに特徴があります。

 

①サラゾピリン®(サラゾスルファピリジン錠)

②ペンタサ®(メサラジン徐放錠)

③アサコール®(メサラジン腸溶錠)

④リアルダ®(メサラジン腸溶錠)

 

①のサラゾピリン®は、スルファピリジンとメサラジンの成分を含んだお薬ですが、それ以外の②~④は、メサラジンのみの成分のお薬となっています。それぞれのお薬について解説していきたいと思います。

 

①サラゾピリン®(サラゾスルファピリジン錠)

 

サラゾピリン®を内服すると腸内細菌に分解されてスルファピリジンとメサラジンに分解されて、メサラジンは大腸内で作用します。

 

サラゾピリン®には、下記のような副作用があります。

 

  • アレルギー反応
  • 消化器症状(下痢・腹痛・膨満感)
  • 精子減少症(可逆性)
  • 頭痛

 

これらの副作用は、サラゾピリン®が分解されてできるスルファピリジンによって起こる副作用といわれています。一方、メサラジンには、下記のような副作用があります。

 

  • 消化器症状(下痢・腹痛・膨満感)
  • 無顆粒球症
  • 血小板減少
  • 心筋炎
  • 肝機能障害

 

などの副作用があるため、内服中は定期的に採血検査などで経過を見る必要があります。

 

②ペンタサ®(メサラジン徐放錠)

 

ペンタサ®は、腸で溶ける腸溶性のエチルセルロースという物質でコーティングされています。ペンタサ®は、小腸の上部(空腸)で溶け始めてしまうため大腸内では効果が不十分になることがあると言われています。

 

反対に考えると、ペンタサ®ではメサラジンが小腸から大腸まで広い範囲で放出されるようになっているため小腸病変が中心のクローン病(Crohn’s Disease:CD)に効果的であるとされています。

 

③アサコール®(メサラジン腸溶錠)

 

2010 年よりアサコール

 

アサコール®もお薬の表面がコーティングされており、このコーティング剤が溶けて中のメサラジンが放出されて大腸粘膜の炎症対して効果を発揮します。

 

アサコール®のコーティングは、pHに依存してコーティング剤が溶ける仕組みになっています。pHが6.8~7.0以上になるとコーティング剤が溶けてメサラジンが放出されるようになっています。小腸内はpHが6.0程度と言われていますが、回腸末端(小腸と大腸のつなぎ目の部分)ではpHが7.4まであがるためメサラジンが放出され大腸内においても十分にメサラジンが行き渡るような仕組みになっています。

 

S状結腸におけるメサラジンの濃度は、ペンタサ®と比べてアサコール®の方が高い濃度であることが報告されており、大腸内においてメサラジン放出濃度は安定していると考えられます。

 

④リアルダ®(メサラジン腸溶錠)

 

2017 年からリアルダ

 

リアルダ®は、ペンタサ®やアサコール®より進化したコーティング剤であるマルチ・マトリックス・システム(MMX)という親水性基剤と親油性基剤が混合された構造になっています。このMMXにより、親油性の基剤の部分により腸液が薬剤への侵入を防ぎ、親水性の基剤の部分は水を吸収して膨張することでメサラジンの一気に放出させず緩やかに大腸内に放出させます。そのためリアルダ®は大腸内において持続的にメサラジンが放出されるようになっています。

 

以上のように5-ASA製剤には多彩なものがあり、この他にもおしりから使用する注腸剤や細かくなっている顆粒製剤もあります。一概に新しものが良いとも言えず、その人個人に合うお薬を見つけるのが大事なことといわれています。

 

また、新しいお薬であるアサコール®やリアルダ®ではpHに依存して薬剤が放出されるようになっていますが、薬剤が溶けないでそのまま排泄されてしまうという問題もあります。

 

私たちも潰瘍性大腸炎の患者様の大腸カメラをすると、大腸内で溶けていない5-ASA製剤を多々認めることがあります。報告によってはこのような5-ASA製剤の10%以上がそのままの形で排泄されてしまうと報告もされています。このような患者様の場合には、メサラジンが大腸に届いていないためお薬を投与していないことと同じになってしまいます。

 

高用量の5-ASA 製剤と局所製剤を適正に使用すれば,潰瘍性大腸炎の約3 分の2 は比較的安定した経過がえられるようになりました.そのため潰瘍性大腸炎の場合は、メサラジンがしっかりと大腸内の患部に行き渡るようにすることが肝要と言われています。上記のように機能していない5-ASA製剤とならないようにしなければなりません。場合によっては、現在使用している5-ASA製剤とは異なったものに変更することも必要かもしれません。

 

3-2、ステロイド

 

ステロイドは、1950年代から炎症性腸疾患に使用されてきました。潰瘍性大腸炎のFirst Line Drugは、5-ASA製剤ですが、ステロイド剤はSecond Line Drugとして使われます。5-ASA製剤で症状改善効果が無かった場合には、ステロイド剤による治療が導入されます。

 

中等症以上の症例では、ステロイド治療が必要となることが多い。ステロイドは重症度や治療歴などをもとに適正な用量で治療を開始し、漫然とした長期投与や減量中止後短期間における繰り返し投与は副作用の問題がありましたが、近年では様々なステロイド剤のお薬が誕生してきています。

 

潰瘍性大腸炎で使用されるステロイドとしては、下記のようなものがあります。

 

  • 経口プレドニゾロン
  • 静注プレドニゾロン
  • ブデソニド注腸フォームレクタブル®注腸フォーム
  • プレドネマ®注腸
  • リンデロン®坐剤
  • ステロネマ®注腸

 

ステロイドの使用は、5-ASA製剤で症状の改善が認められない中等症以上の患者様で使用されます。基本的には、まずはステロイド薬でも,全身曝露が少なく,受容性も大きく改善された注腸製剤の使用を考えます。炎症や症状が強い場合には経口投与や点滴での静注投与が必要となることもあります。

 

ステロイドの投与量は、

 

中等症例:PSL 経口30~40mg/日

重症例:PSL 点滴静注40~80mg/日(入院が必要)

 

以上の量から開始して、症状をみつつ徐々に減らしていきます。副作用の問題もありますので3か月くらいを目途にステロイドから離脱するようにします。

 

ステロイド剤の副作用としては以下のようなものが挙げられます。

 

  • 白内障
  • 耐糖能異常
  • 骨粗鬆症
  • 易感染性
  • 副腎皮質機能不全
  • 緑内障

 

などです。ステロイドの副作用は皆さん気になるところですが、症状改善のために使用することは治療上必要となります。長期での漫然とした使用はお勧めしませんが、治療効果を高めるためには必要で重要なお薬ですので、専門の医師と相談して使用をするようにして下さい。

 

高齢者においてステロイドを使用する場合には、骨粗鬆症に対して予防的にビスホスホネート製剤を投与することが望ましいと考えられています。

 

ステロイド・フリーの臨床的な寛解を長期に維持することが,診療現場の現実的な治療目標となっている.

 

3-3、免疫調整薬

 

潰瘍性大腸炎に使用される免疫調整薬としては、以下のようにアザチオプリン(AZA)と6-メルカプトプリン(6-MP)の2つがあります。

 

  • イムラン®(アザチオプリン)
  • アザニン®(アザチオプリン)
  • ロイケリン®(6-メルカプトプリン);保険適応外

 

ステロイド依存例に対しては、免疫調整薬が実際の現場で使用されています。免疫調整薬には、潰瘍性大腸炎の過剰な免疫反応を抑制することで寛解を維持します。ステロイド長期使用例に対して免疫調整薬を使用することで、ステロイドの使用量を減らしていくことが出来ます。

 

アザチオプリンと6-メルカプトプリンには下記のような副作用の問題がありました。

 

  • 重度の白血球減少症
  • 骨髄抑制
  • 易感染性
  • 全身脱毛症
  • 肝障害

 

上記のような重篤な副作用の問題があったため免疫調整薬は使いづらいということもありましたが、NUDT15遺伝子の違いによって重篤な副作用がでるかどうかということが判明しました。そのため、免疫調整薬が使用できる方とできない方の区別ができるようになり、安定した治療を行うことが出来るようになってきています。

 

3-4、免疫抑制薬

 

免疫抑制薬としてはタクロリムスやシクロスポリンなどがあります。免疫細胞であるT細胞の活性を抑制することで免疫抑制効果を発揮するお薬です。免疫抑制薬は、比較的重症の方に使われます。免疫抑制薬は、強い免疫抑制がかかるためステロイド剤との併用の場合には、ニューモシスチス肺炎などの感染症に注意が必要となります。

 

潰瘍性大腸炎で使用される免疫抑制薬としては、下記のようなものがあります。

 

  • プログラフ®(タクロリムス)
  • ネオーラル®(シクロスポリン);保険適応外

 

シクロスポリンでは、多毛症や歯肉腫脹などの副作用があるため、タクロリムスへの変更が望ましいことがあります。またグレープフルーツジュースとの併用は、薬効に影響がでるため内服中は中止してもらう必要があります。

 

3-5、生物学的製剤

 

軽症から中等症の患者様では、5-ASA製剤にて治療が行われますが、治療に反応しない場合にはステロイド剤が使用されます。ステロイド剤にて症状の改善等が無い場合には、従来であれば大腸全摘術なども考慮されることもありましたが、生物学的製剤の使用によりこの20年で潰瘍性大腸炎の治療は大きく変わりました。近い将来は、個々人に合ったお薬が作られるオーダーメイド治療になるのではないかと言われています。

 

潰瘍性大腸炎で使用される生物学的製剤としては、以下のようなものが挙げられます。

 

  • レミケード®(インフリキシマブ)
  • ヒュミラ®(アダリムマブ)
  • シンポニー®(ゴリムマブ)
  • エンタイビオ®(ベドリズマブ)
  • ステラーラ®(ウステキヌマブ)

 

3-6、JAK阻害剤

 

JAK阻害薬は、潰瘍性大腸炎の粘膜の炎症を抑えることができるお薬の一つです。潰瘍性大腸炎の病態に深く関係しているサイトカインの細胞質内シグナル伝達を阻害することによりその薬効を有すると言われています。

 

JAK阻害剤としては、以下のようなものがあります。

 

  • ゼルヤンツ®(トファシチニブ)
  • ジセレカ®(フィルゴチニブ)

 

3-7、血球成分除去療法

 

血球成分除去療法は、日本で開発された治療法です。5-ASA製剤やステロイド剤で症状のコントロールが難しい場合に使用されることがあります。

血球成分除去療法では、人工透析と似たような体外循環装置を用いて末梢の血液から白血球(顆粒球・単球・活性化リンパ球)を特別なカラムというものを用いて取り除きます。これらの血球を取り除くことで大腸粘膜の炎症を制御する治療法となります。

 

血球成分除去療法には主に以下のような2つの治療法があります。

 

①G-CAP(顆粒球除去療法)

②L-CAP(白血球除去療法)

 

上記について解説していきたいと思います。

 

①G-CAP

血液浄化を行い主に顆粒球・単球を吸着除去する。G-CAPに用いられるカラムは、酢酸セルロースビーズというものが使用されます。L-CAPと比べると顆粒球・単球の除去量は劣ると言われているが、効果は同等と言われています。

 

②L-CAP

血液浄化を行い顆粒球・単球の他にリンパ球や血小板も吸着除去できます。L-CAPの吸着剤としては、ポリエステル不織布が使用されています。

 

4章、潰瘍性大腸炎についてのQ&A 

 

Q1、食事はどんなものを食べてはいけないのですか?

 

潰瘍性大腸炎では、症状が落ち着いている場合には極端な制限は必要ないとされていますが、日頃から消化の良い物や刺激の強い食べ物はなるべく控えることが大事です。

 

 

基本的には、下記のようなものはできるだけ控えることが望ましいです。

 

  • 脂肪分が多い食べ物(肉類・菓子類・ナッツ類など)
  • 繊維が多い食べ物(イモ類・こんにゃく類・野菜・キノコ類・藻類など)
  • 消化に悪い食べ物(貝類・いかやエビなどの海産物)
  • 刺激の強い食べ物(唐辛子などの香辛料など)
  • 脂肪分の多い乳製品(アイスクリーム・チーズ・生クリームなど)

 

*上記の食べ物全てを控える必要があるわけではなく、自分に合った食べ物を見極めていくことが大事です。

*野菜に関しては、生野菜ではなく煮炊きなどをして柔らかい状態で摂ることが望ましいです。

 

Q2、潰瘍性大腸炎はストレスで悪化しますか?

 

実際の潰瘍性大腸炎の診療では、精神状態などに関してはあまり重要視されていませんが、心理的なストレスが原因で発病や症状の悪化をもたらすと言われています。

 

近年では精神的なストレスが腸内細菌のバランスに影響をもたらすということが科学的に証明されてきています。この腸内細菌叢のバランスが崩れることをDysbiosis(ディスバイオーシス)と言います。このDysbiosisの状態になると人体に様々な悪影響(発がん・炎症・うつ・動脈硬化など)が起こると言われています。潰瘍性大腸炎の発病や症状悪化にも腸内細菌の影響があるのかもしれません。

 

潰瘍性大腸炎の症状の安定のためにも、できるだけストレスを溜めずにいることが大事です。

 

Q3、治療の期間はどのようになっていますか?

 

潰瘍性大腸炎の治療の期間は人それぞれです。潰瘍性大腸炎は、慢性の経過をたどるため診断されたら一生付き合っていくことが必要なご病気です。

 

潰瘍性大腸炎は、常に症状があるわけではなく、症状の現れる活動期と症状が落ち着いている寛解期を交互に繰り返していくご病気です。

 

症状が治まっている寛解期には、5-ASA製剤を飲み続けることが必要です。症状の再発を防ぎ寛解期を長くするためには、毎日飲んでいただくことが重要です。症状が現れた場合には、5-ASA製剤の増量やステロイド剤などを追加していく必要があります。

 

Q4、費用はどのようになっていますか?

 

潰瘍性大腸炎は、難病指定のご病気で中等症以上と診断された方にはとなります。難病医療助成制度の対象となった場合には、1か月の負担額がある一定の上限を超えると超えた分に関しては国が負担をしてくれます。

 

 

実際には以下のようになっています。

 

指定特定医療に対する患者の月額自己負担限度額

                                                                                                              (単位:円)

階層区分 階層区分の基準 一般 高額かつ長期 人工呼吸器等装着者
生活保護 0 0 0
低所得Ⅰ

市町村民税

非課税

(世帯)

本人年収 ~80万円 2,500 2,500 1,000
低所得Ⅱ 本人年収 80万円超~ 5,000 5,000
一般所得Ⅰ

市町村民税

課税以上7.1万円未満

10,000 5,000
一般所得Ⅱ

市町村民税

7.1万円以上 25.1万円未満

20,000 10,000
上位所得

市町村民税

25.1万円以上

30,000 20,000

平成26年政令第358号

難病の患者に対する医療等に関する法律施行令 第1条より

 

まとめ

 

今回は潰瘍性大腸炎について解説しました。潰瘍性大腸炎が疑われた場合には、以下のポイントに気を付けていただくことが大切です。

 

・潰瘍性大腸炎は若い人に多い病気

・血便が続く場合には潰瘍性大腸炎を疑う

・潰瘍性大腸炎を疑う場合には大腸カメラが必要

・潰瘍性大腸炎は大腸がんのリスクが高い

 

以上のポイントを理解し、適切な専門医療機関を受診することが大切です。潰瘍性大腸炎は、慢性のご病気で一度診断されたら一生付き合っていく可能性の高いご病気です。しっかりと診断をして適切に定期的な診察・検査・治療を受けていただくことが重要です。潰瘍性大腸炎の治療は、一昔前と違って多彩な治療がありますので専門外来でご相談ください。

 

診察・検査は下記よりご予約ください。

 

 

 

Hata K, Anzai H, Ikeuchi H, et al. Surveillance Colonoscopy for Ulcerative Colitis-Associated Colorectal Cancer Offers Better Overall Survival in Real-World Surgically Resected Cases. Am J Gastroenterol 2019; 114: 483-489. 

Eaden J, Abrams K, McKay H, et al. Interobserver variation between general and specialist gastrointestinal pathologists when grading dysplasia in ulcerative colitis. J Pathol 2001; 194: 152-157. 

Eluri S, Parian AM, Limketkai BN, et al. Nearly a Third of High-Grade Dysplasia and Colorectal Cancer Is Undetected in Patients with Inflammatory Bowel Disease. Dig Dis Sci 2017; 62: 3586-3593.

Olén O, Erichsen R, Sachs MC, et al. Colorectal cancer in ulcerative colitis: a Scandinavian population-based cohort study. Lancet 2020; 395: 123-131.

Sauk JS, Ryu HJ, Labus JS, et al. High Perceived Stress is Associated with Increased Risk of Ulcerative Colitis Clinical Flares. Clin Gastroenterol Hepatol. 2022; 8: S1542-3565.

 

記事執筆

医療法人社団尚視会 理事長 原田英明

・日本消化器内視鏡学会 専門医 指導医 https://www.jges.net/medical

・日本消化器病学会 専門医 https://www.jsge.or.jp/

・米国消化器内視鏡学会 国際会員 https://www.asge.org/

・欧州消化器内視鏡学会 国際会員 https://www.esge.com/

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東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院

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