乳がんと大腸がんについて~今知っておきたい女性が気を付けるべき「がん」のお話

乳がんと大腸がんには密接な関係があるという報告があるのをご存じでしょうか?

乳がんと診断された方に大腸がんのリスクが高いということが言われています。また、逆もしかりで、大腸がんと診断された方には、乳がんのリスクが高いとも言われています。

これは、遺伝的要素や生活スタイルの影響である肥満なども関係しており社会的な問題ともいえます。乳がんおよび大腸がんは、がんの中でも発生数・死亡数ともに高い数値であり日本社会に影響を及ぼしているご病気です。適切な時期に適切な検査を受けて、早期発見・早期治療の大切さを理解していただけたら幸いです。

本記事の読んでいただき大腸検査の大切さを理解していただけようになってほしいと思います。

日本では、乳がんは年間9万人以上、大腸がんは6万人以上新たにがん患者として診断されています。

1-1、乳がんと大腸がん

乳がん・大腸がんともに以前は高齢の方が罹るご病気と言われていましたが、社会環境や食事・生活スタイルの変化により現在では若い方が罹るご病気になってきています。

世界では、乳がんおよび大腸がんの発生数・死亡数は以下のようになっています。

世界における乳がん・大腸がんの発生数と死亡数

 発生数死亡数
 乳がん230万人68万5千人 
大腸がん190万人93万5千人

米国からの報告では、乳がんと診断された患者さんの大腸がんの発生率は5%と報告されており、その%は通常の女性における大腸がん発生率1.33%より高いものでした。

乳がんと診断された場合の大腸がん発生率 5%

乳がんと診断されなかった女性の大腸がん発生率 1.33%

1-2、乳がんと大腸がんの悪性度の違いは?

なんとなく乳がんは大変な病気だと感じている方もいるとは思いますが、じつは乳がんよりも大腸がんの方が悪性度の高いご病気なのです。

*がん情報サービスより抜粋乳がん(左グラフ)、大腸がん(右グラフ)の5年相対生存率

上のグラフは、乳がんと大腸がんの5年相対生存率を表したものです。両者の5年生存率を比べると、顕著な差が領域(周囲のリンパ節転移)および遠隔(遠隔転移)で認められます。

 乳がん 大腸がん
領域90% 75.3%
遠隔39.3%17.3%

乳がん、大腸がんの5年相対生存率

とくに遠隔転移がある場合には、乳がんの39.3%と比べ大腸がんの17.3%は、2分の1以下の5年生存率ということが分かります。このことからも大腸がんは、乳がんより気を付けるべきご病気だということが理解できます。

1-3、乳がんと大腸がんの健診

乳がんは、大腸がんと比べどちらかというとおとなしい“癌腫”であると考えられていますが、さらに比較的早期発見が検診のおかげで行われているということが大腸がんと比べ5年生存率が高くなっている要因の一つかもしれません。

乳がんは「ピンクリボンキャンペーン」などで周知されており、早期発見の大切さなども世の中でよく認知されているかと思います。現在では、下着会社のワコール社などの一般企業も積極的にキャンペーンを行っています。一方、大腸がんも「ブルーリボンキャンペーン」という団体を立ち上げており、世の中への啓蒙活動を行ってはいますが、認知度的には「ピンクリボンキャンペーン」ほどのインパクトにはなってはおりません。

*がん情報サービスより抜粋

上図のがん検診の受検率のグラフを見ていただくと、乳がん検診と大腸がん検診の差が分かります。近年ではややその差は埋まってきていますが、やはりまだまだ乳がん検診率には追い付かないのが現状です。

 2010年2013年2016年2019年
 乳がん 39.1 %43.4 %44.9 %47.4 %
大腸がん23.9 %34.5 %38.5 %40.9 %

大腸がん検診の受検率を上げて早期発見につなげることが大事かと考えられます。

2章、乳がんと大腸がんの関係

乳がんと診断された方には、大腸がんが多いと書きましたが、どの程度多いのかということを解説していきたいと思います。

2-1、乳がん患者では大腸がんが多いのか?

海外からの報告では、「乳がんと診断された方は、そうではない方より1.6倍大腸がんのリスクが高かった」と言われています。

なぜ乳がんと診断された方は、大腸がんが多いと報告されているのかという理由としては、

肥満の影響

女性ホルモンの影響

ホルモン療法の影響

タモキシフェン(抗エストロゲン薬)の影響

遺伝的な影響

などが大腸がんの発生と関係している可能性があるのではないかと言われています。ただし現段階の研究では、はっきりとした答えは出ていないのが現状です。恐らくは、上記の要因や生活スタイル・食事・社会的要因など様々なものが複雑に絡んでがんの発生につながっているのではないかと思われます。今後の研究が待たれるところです。

また、反対に大腸がんと診断された女性には、乳がんが多いという報告もあります。ただしデータ的には古いものですので現在の状況に当てはまるかどうかははっきりとはしません。

2-2、乳がん患者には大腸ポリープが多いのか?

海外からの報告では、「乳がんと診断された方には、大腸ポリープが通常より多く発見された」と言われています。

とくに乳がんと診断された方の中で、どのような方に大腸ポリープが多く発見されたかというと、

50歳以上

肥満傾向

親族に大腸がんと診断された方がいる

上記の「年齢」「肥満」「遺伝」に関しては、通常の大腸がん・大腸ポリープに関してもリスクとなり得るものですので、乳がんと診断されて方ではさらなる注意をしてもらうことが大切だと思います。

3章、乳がんと大腸がんの予防

3-1、乳がんの予防のためには

下記の表は、乳がんのリスク因子と予防因子をまとめたものになっています。

 リスク要因予防要因
 確実なもの 肥満(閉経後) 
可能性があるもの喫煙、受動喫煙、肥満(閉経前でBMI 30以上)、夜間勤務、糖尿病など運動、授乳、乳製品、大豆、イソフラボンなど

日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドラインより抜粋

乳がんのリスク因子

・肥満

BMIが30以上の肥満女性は、乳がんのリスクが高くなると言われています。とくに閉経後に肥満経口になる方は注意が必要となります。

・喫煙

喫煙は乳がんのリスク因子の一つと言われています。喫煙をするだけではなくて、受動喫煙(Second hand smoke)に関しても乳がんのリスクと言われていますので、同居家族で喫煙者がいる方に関しても注意が必要です。

・夜間勤務

夜間の勤務に携わる女性に関しても乳がんのリスクが高くなる可能性があるのではないかと言われています。夜間の勤務によりホルモンバランスや免疫力の低下などによりリスクが高くなるのではないかと言われています。

・糖尿病

糖尿病は乳がんのリスク因子と言われています。糖尿病による高血糖・高インスリン血症は、乳がんの発症と関係すると言われています。また、糖尿病と肥満や不摂生・運動不足などが乳がんのリスクと関係しているとも考えられています。

乳がんの予防

・乳製品

乳製品は乳がんの予防となる可能性があると考えられています。乳製品に含まれる、ビタミンDやカルシウムなどが乳がんのリスクを低下させると言われています。

ただし乳製品の中でも高脂肪性の乳製品に関しては乳がんのリスクを高めると言われているため注意が必要です。

・大豆食品

大豆に含まれるイソフラボンには抗エストロゲン作用があるため乳がん発症リスクを低下させると言われています。イソフラボンはポリフェノールの1種で抗酸化作用を持つ物質です。

・運動

運動は乳がんの発症リスクを低下させると言われています。とくに閉経後の女性に関して効果が高いと言われています。とくに有酸素運動(ウォーキング、水泳、軽いジョギング)が良いと言われています。

3-2、大腸がんの予防のためには

大腸がんの予防に関しても乳がんとさほど変わりません。健康的な食事をして規則正しい生活をすることが大事です。

乳がんと同様に運動は非常に大事な予防です!

大腸がんの予防に関しては、「大腸がんの初期症状とはどんな症状なの?専門医が解説します」で詳しく解説していますのでぜひご参考にしてください。

4章、乳がんと診断されたら

乳がんと大腸がんは非常に密接したご病気だということが考えられます。それでは、乳がんと診断された場合にはどうすればよいのでしょうか?

4-1、乳がんと診断されたら大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を

様々な報告から、乳がんと大腸がんとの関係は強いということが伺えます。

近年、大腸がんの発生率は増加しており、若年化もしていることから乳がんと診断された場合には、なおさら大腸の精査をすることが大切です。

大腸の精査としては、大腸カメラを行う必用があります。

大腸がん検診で行う便潜血検査ではなく、大腸カメラを行うようにしてください!大腸カメラであれば、その場で組織検査や大腸ポリープの切除が可能です。大腸ポリープの切除は、大腸がんの予防になるとも言われています。

大腸カメラの検査予約に関しては下記よりお申し付けください。

4-2、乳がんと診断されたら何歳で大腸カメラを受けるべきか

海外からの報告では、乳がんと診断された方で、40歳以上の場合は1年以内に大腸カメラを受けることが推奨されています。

若年化してきている大腸がんですので、40代で一度は大腸カメラを受けることが大切ですと推奨している当クリニックとしてもこの提言には同意できるものです。

では、40歳以下の方の場合はどうすればいいのか?という問題が残ります。基本的には40歳以下で乳がんと診断された方で、以下のようなことに当てはまる場合には、大腸カメラを受けられることをお勧めいたします。

肥満傾向の方

ホルモン療法を受けられた方

親族が大腸ポリープ・大腸がんと診断された方

などに関しては、年齢にかかわらず検査を受けられることをお勧めします。

*ただし、「乳がんと診断された方に通常よりも早い時期に大腸カメラを行う必用はない」と主張する報告もありますが、乳がんと診断された方は「肥満」「遺伝的要素」などが関係している可能性もあるため、通常の方よりも大腸がんや大腸ポリープのリスクが高いと考えられるため検査を早めに受けるにこしたことはないと考えられます。

まとめ

今回は、乳がんと大腸がんの関係について解説しました。乳がんと大腸がんの関係については、以下のポイントに気を付けていただくことが大切です。

乳がんと診断された方の大腸がん発生率は高い可能性がある

乳がんと診断された方の大腸ポリープ発生率は高い可能性がある

乳がんと診断されたら大腸カメラを受けることが大切

以上のポイントを理解し、適切な専門医療機関を受診して適切な検査を受けることが大切です。がんと診断された場合には、ご病気と一生付き合っていく必要があります。がんの治療後も適切に定期的な診察・検査を受けていただき健康的な生活を送っていただきたいと思います。

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Ochsenkühn T, et al. Increased prevalence of colorectal adenomas in women with breast cancer. Digestion. 2005; 72: 150-155.

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