女性が大腸がんになるリスクについて統計データをもとに解説!

女性が大腸がんになるリスクについて統計データをもとに解説!

「女性の大腸がんが増えていると聞くけど、どうしてかしら?」
「大腸がんってなんで増えているのかな?」
「乳がんと大腸がんって関係があるの?」

というように思うことはないでしょうか?女性の死因第1位は大腸がんと聞くと、女性は特に大腸がんになるリスクが高いと考える方も多いでしょう。その理由として、便秘になりやすい女性の特性や女性ホルモン、乳がんが関係するともいわれますが、実際はどうなのでしょうか。

この記事では統計データや研究結果をもとに、女性の大腸がんについてわかったことを詳しく解説します。大腸がんを予防したり、早期発見したりするために大切なことについても解説するので参考にしてください。本記事を読むことで、大腸がんの予防に関して理解を深めていただけますと幸いです。

1章、女性の大腸がんに関する統計データでわかること

女性は大腸がんになりやすいといわれることもありますが、実際はどうなのでしょうか。ここでは女性の大腸がんについて、統計データからわかることを解説します。

1-1、女性におけるがんの死亡原因は大腸がんが最多

※「国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(人口動態統計)」を元に作図

2023年現在、女性におけるがんの死亡原因は大腸がんが最多です。2002年以前に最も多かった死因は胃がんでしたが、2003年以降から大腸がんが最も多くなりました。2021年の人口動態統計のデータによると、大腸がんで亡くなった女性の数は1万4,428人です。

1-2、年齢とともに大腸がんによる死亡者数が増加

※「国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(人口動態統計)」を元に作図

女性の大腸がんにおける死亡者数は、年齢と共に増加します。上記のデータからも年齢に比例して、がんの死亡者数が増加していることがわかります。

1-3、30代から大腸がんの患者が少しずつ増加

※「国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(人口動態統計)」を元に作図

がんの罹患者数は30代頃から増え始め、70代後半でピークになります。また上記のデータによると、20代でもがんにかかる場合もあるようです。

若年層であっても、血便や貧血、排便習慣の変化などの症状がある場合は、念のために医療機関で診てもらったほうがよいでしょう。

1-4、早期発見であれば生存できる可能性が高い

※全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2022年11月1日集計)による

大腸がんは早期に発見できれば、生存できる可能性の高い病気です。その一方、がんが進行してステージ4になってしまうと、極端に生存率が低下します。ステージごとのがんの進行度は次のとおりです。

ステージ0:がんが大腸粘膜内に留まる
ステージ1:がんが固有筋層までに留まる
ステージ2:がんが漿膜下層を超えて浸潤している
ステージ3:がんの深さに関わらず、リンパ節への転移を認める
ステージ4:がんの深さやリンパ節転移に関わらず、他臓器への転移を認める

大腸がんは早期発見がとても重要であることがわかります。

1-5、大腸がんで死亡する人は男女ともに他のがんに比べて多い

2021年の人口動態統計によると、大腸がんの罹患者数は下記のようになります。

罹患数
男性28,080人
女性24,338人

女性は大腸がんになりやすいと言われますが、実は男性は女性以上にがんになる人が多いのです。(参考:令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省

男性の場合、大腸がんになる人の数は肺がんに次ぐ2番目です。その一方で女性は、大腸がんになる人の数が他のどのがんよりも多いため、大腸がんは女性がなりやすいかのように感じられるのかもしれません。

実際は、特別に女性が大腸がんになりやすいというわけではなく、大腸がんは男女ともに気を付けるべき病気です。

また便秘や女性ホルモン、乳がんなどの女性ならではの特性と大腸がんの関連性について指摘されることもありますが、実際はどうなのでしょうか。以降で、詳しく解説します。

2章、女性に多い便秘と大腸がんとの関連性について

便秘は女性に多いといわれていて、さらに便秘になりやすい人は大腸がんになるといわれています。ここでは、便秘の男女差と大腸がんとの関連性について解説します。

2-1、女性は男性よりも便秘になる確率が高い

国民生活基礎調査によると、便秘の症状があると回答した割合は男女で下記のようになります。

便秘症の割合
女性43.7%
男性25.4%

この結果をみると、確かに女性は男性よりも便秘になりやすいといえます。(参考:2019 年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省)では、大腸がんと便秘の関連性はどうでしょうか。

2-2、大腸がんと便秘は関連性がない

がん対策研究所の研究結果によると、大腸がんと便秘の関連性は否定されている。

同研究によると、便通が週2~3回しかないからといって、便通が毎日ある人よりも大腸がんになるリスクが高くなるわけではないようです。(参考:便通、便の状態と大腸がん罹患との関連について|がん対策研究所 予防関連プロジェクト

つまり、この研究からわかることは、便秘がちの女性だからといって、がんになり易いわけではないということです。

3章、乳がんと大腸がんの関連性について

乳がんと大腸がんについては、関連性があるとの報告がありますが、理由についてはっきりとわからないことも多いようです。

3-1、乳がん患者は大腸がんの発生率が高い傾向にある

乳がんと診断された場合、大腸がんの発生率はそうでなかった方と比べ約3倍多かったと報告されています。

大腸がん発生率
乳がんと診断された場合5%
乳がんと診断されなかった場合1.33%

乳がん患者の場合、大腸がんの発生率は高い傾向にあると考えておく必要があるかもしれません。乳がんと診断された場合は、全身チェックの際に大腸内視鏡検査を受けることも大切です。

3-2、乳がんと大腸がんに影響する因子

乳がんになると大腸がんにもなりやすいとする理由については、肥満の影響や遺伝的な影響、女性ホルモンの影響などが考えられます。

乳がんと大腸がんともに影響する因子としては以下のようなものが考えられています。

・肥満
・女性ホルモン
・ホルモン療法
・タモキシフェン(抗エストロゲン薬)
・遺伝的要因

様々な要因が2つのがんに影響を及ぼしているのではないかと考えられていますが、現段階でははっきりとした答えはでていません。

乳がんと大腸がんの関係について詳しく知りたい場合は、次の記事をご覧ください。

乳がんと大腸がんについて~今知っておきたい女性が気を付けるべき「がん」のお話

では女性ホルモンと大腸がんの関連性について調べた研究では、どのような結果だったのでしょうか。

4章、女性ホルモンと大腸がんの関連性について

がん対策研究所の調査によると、女性ホルモンと大腸がんの関連性はみられなかったとのことです。初経年齢や閉経状況、ホルモン剤の使用の有無、出産回数、初産年齢のいずれにおいても大腸がんとの関連性が見られない結果となりました。(参考:女性関連要因と大腸がんとの関連について|がん対策研究所 予防関連プロジェクト

しかし大腸がんになる原因には、男女ともに共通した要因があるといわれています。

5章、男女ともに大腸がんになる人が増えている理由

男女ともに大腸がんが増えている理由には、食事の欧米化が考えられます。また運動不足や肥満、喫煙などの生活習慣を背景とした要因にも注意を払うことが重要です。

加工肉や牛、豚、羊などの肉を食べ過ぎないことと、偏りのないバランスの取れた食事、適度な運動、禁煙を心がけることが大腸がんの予防につながります。

6章、大腸がんの症状

大腸がんは初期症状を自覚しづらいといわれています。症状が現れるころには、既にがんが進行している場合もあります。

そのため進行がんの初期段階に現れる症状を見逃さないことが大切です。次のような症状がある場合は、医療機関に相談しましょう。

・肛門からの出血や血便
・貧血や体力の低下
・腹部膨満感
・以前はなかった下痢や便秘
・急に便が細くなる症状

次の記事では大腸がんの症状について詳しく解説しているので、参考にしてください。

大腸がんの初期症状とは?漠然とした不安をなくすために専門医が解説

7章、大腸がんを早期発見する方法

前項でも伝えたように、大腸がんには初期症状を自覚しづらい特徴があります。そのため、大腸がんを早期に発見するためには、便潜血検査や内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることが大切です。

便潜血検査とは、検便で大腸からの出血を調べる検査法です。また内視鏡検査は、カメラを肛門から大腸へと挿入して腸の内部を調べる検査です。30代もしくは40代以上になったら、これらの検査を受けると大腸がんの早期発見につなげられます。

大腸がんの検査法については、次の記事で詳しく解説していますのでどうぞご覧ください。

大腸がんを早期発見するために重要なことは?検査・生存率も解説

まとめ

今回は女性に関する大腸がんの統計データや研究を紹介しました。本記事のポイントとしては下記のようになります。

・大腸がんは特別女性がかかりやすわけではなく、男女ともに気を付ける病気
・大腸がんは早期発見できれば生存できる確率が高い
・便秘がちの女性が大腸がんになりやすいわけではない
・乳がんと大腸がんには関連性があるとの報告もあるが、理由についてはわからないことが多い
・女性ホルモンと大腸がんの関連性はあまりない
・大腸がんを早期発見するためには便潜血検査や内視鏡検査を受けることが大切

女性の大腸がんについては、以上の点を理解していただければと思います。

当クリニックでは、女性に配慮した内視鏡検査を行っております。大腸前処置室は、男女別ないし完全個室にしています。すべての女性が安全に安心して大腸の前処置を受けていただくことが可能となっております。また、日によっては女性医師による大腸内視鏡検査を行っております。

大腸内視鏡検査の予約は、下記より承っています。

電話での予約は下記より承っています。

Lu Y, et al. Increased risk of colorectal cancer in patients diagnosed with breast cancer in women. Cancer Epidemiol. 2016; 41: 57-62.
Abu-Sbeih H, et al. Patients with breast cancer may be at higher risk of colorectal neoplasia. Ann Gastroenterol. 2019; 32: 400-406.
Ochsenkühn T, et al. Increased prevalence of colorectal adenomas in women with breast cancer. Digestion. 2005; 72: 150-155.

尚視会での内視鏡検査・診察は24時間予約を承っています。

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