
「検診で便の検査に引っかかったし大腸カメラを受けなくちゃ。でも痛いって聞くし不安だな・・・。」
大腸カメラを初めて受ける方はこんな不安をお持ちではないでしょうか。
大腸カメラは痛みを伴いやすい検査ですが、いくつかの工夫により、痛みを軽減し、より安心して検査を受けていただくことが可能です。たとえば「静脈麻酔の使用」や「軸保持短縮法」、「ウォーターイクスチェンジ(WEC)」といった技術が代表的です。
ただし、こうした方法を用いても痛みが出やすい方がいらっしゃるのも事実です。本記事では、痛みが発生する仕組みやリスク要因、そして痛みを回避するための工夫まで、わかりやすくご紹介していきます。
大腸カメラに対する不安を解消し、安心して検査に臨むための一助となれば幸いです。
1章:大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の痛みとは
大腸カメラで生じる痛みは、スコープの挿入によって腸が押されたり引っ張られたりすることで発生します。腸の構造上、曲がりくねっている部分を無理に通過しようとすると、痛みが強くなりやすいのです。
1-1:どんな痛みが起きるのか
- お腹が張るような痛み
- 腸が押されるような鈍痛
- 引っ張られるような違和感や痛み
中には「冷や汗が出るほどの痛みだった」と感じる方もいます。これらの痛みは腸の神経構造とも関係しています。
大腸内視鏡検査で痛みが生じる神経の仕組み
神経の種類 | 説明 |
---|---|
自律神経(内臓痛) | 腸の収縮や拡張による痛み。腸壁の間(筋層間神経叢など)に存在し、痛みを脳に伝達。 |
知覚神経(体性痛) | 腸外の腹膜や膜構造を通じて刺激を感じる。炎症など物理的刺激により反応。 |
1-2:痛みが起こる原因
- 大腸が伸ばされる
- 大腸が押される
- 空気(ガス)で腸が拡張される
とくに大腸の屈曲が強い部位では、スコープの操作に無理がかかりやすく、痛みが発生しやすくなります。
1-3:痛みが発生しやすい部位
部位 | 痛みが出やすい理由 |
---|---|
S状結腸・横行結腸 | 腹膜に固定されておらず自由に動くため、スコープによる押し込みで腸が伸びやすい。 |
脾弯曲・肝弯曲 | 腸の曲がりが急なため、スコープが引っかかりやすく、腸管が刺激されやすい。 |
1-4:痛みが出やすい体質・状況とは
- お腹の手術経験がある(癒着がある)
- やせ型・小柄な体型
- 肥満体型(腸管が動きやすくスコープ操作が難しい)
- 腸に炎症がある(潰瘍性大腸炎など)
▼大腸がんの初期症状が気になる方へ
便に血が混じる、下痢や便秘を繰り返すなどの症状がある場合、それは大腸がんのサインかもしれません。
初期段階での発見が重要な理由や具体的な症状については、以下の記事をご覧ください。
1-5:痛みが出にくい人は?
中肉中背の男性(特に青年~中年層)ではスコープの挿入が比較的スムーズで、痛みを感じにくい傾向があります。ただし、手術歴や基礎疾患の有無によって例外もあるため注意が必要です。
▼下剤を常用している方はご注意を
便秘で下剤を長く使っていると、大腸がんとの関係性が気になるところです。
下剤の使用と大腸がんリスクの関係について、科学的な視点から詳しく解説しています。
2章:痛みを防ぐための工夫
大腸内視鏡検査をより快適に受けるためには、以下のような工夫が有効です。
- 経験豊富な内視鏡専門医の施術を受ける
- 軸保持短縮法による挿入技術
- 静脈麻酔の使用
- ウォーターイクスチェンジ・コロノスコピー(WEC)
2-1:内視鏡専門医を選ぶ
大腸カメラの痛みの有無は、施術を行う医師の技術に大きく左右されます。熟練の内視鏡医であれば腸管の動きや形に応じた繊細な操作が可能となり、痛みを最小限に抑えることができます。
目安として、過去に数千例以上の検査経験がある医師や、内視鏡専門医の資格を保有している医師であれば安心して任せられるでしょう。
2-2:軸保持短縮法でのスコープ挿入
「軸保持短縮法」は、大腸を無理に伸ばさずにスコープを進めていく方法で、痛みを最小限に抑える挿入技術です。
通常の押し込み方式では腸が伸びてしまい、S状結腸や横行結腸でループを作りやすく、痛みを感じる原因となります。軸保持短縮法では、腸の自然なカーブに沿ってスコープを進めることで、腸を引っ張ったり圧迫したりすることなく挿入が可能です。
この方法には、高度なスキルが必要であるため、医師の技術力が重要です。痛みに不安がある方は、この挿入法を採用している施設を選ぶとよいでしょう。
2-3:静脈麻酔で楽に検査を
痛みが心配な方には「静脈麻酔」を用いた大腸カメラが非常に有効です。
点滴で麻酔薬を投与することで、検査中は眠っているような状態になります。ウトウトしている間に検査が終わるため、痛みや不安をほとんど感じずに済みます。
ただし、副作用として、血圧低下や呼吸抑制がまれに起こるため、生体モニターなどでの管理が必要です。また、検査当日は車の運転などができなくなるため、事前の準備が必要です。
2-4:ウォーターイクスチェンジ・コロノスコピー(WEC)
WECは、水を使ってスコープ挿入時の痛みを和らげる技術です。空気ではなく水を用いることで、腸管が無駄に拡張されるのを防ぎ、スムーズにスコープを通過させることができます。
特に直腸やS状結腸で有効とされ、海外の臨床研究でもWECの方が痛みが少なかったという結果が報告されています。また、WECはポリープの発見率向上にも寄与する可能性が示されています。
2-5:不安や羞恥心を取り除く環境づくり
痛みの他にも、「恥ずかしい」「不快」といった感情が検査への抵抗感につながることがあります。
以下のような配慮がされている医療施設を選ぶことで、心理的な負担を軽減できます。
- 内視鏡検査に特化した専門施設
- プライバシーに配慮した半個室・個室対応
- 清潔感のある院内環境
検査着や待機室、トイレなどの清潔さや使いやすさにも配慮されている施設では、安心して検査に臨むことができるでしょう。
3章:検査の痛みは医療機関や医師により異なる
3-1:施設による違い
大腸内視鏡検査は医療機関によって実施方法に差があり、痛みの感じ方にも影響します。
特に以下の点が重要です:
- 軸保持短縮法を採用しているか
- 静脈麻酔の体制が整っているか(モニター・看護体制など)
- WEC法に対応しているか
静脈麻酔が使用できない施設もあるため、事前の確認が必要です。
3-2:医師による違い
大腸の形状や曲がり具合には個人差があるため、スコープの挿入には熟練の技術が必要です。
担当する医師の経験により、検査時の痛みに差が生じることもあります。特に「消化器内視鏡専門医」の資格を持つ医師であれば、技術的に安心できる場合が多いです。
4章:痛みの少ない大腸カメラを受けるためのアドバイス
4-1:リラックスして検査を受ける
力が入ると腸が緊張し、スコープが進みにくくなります。その結果、腸が引っ張られて痛みが出る原因となります。
検査中は、なるべく力を抜いてリラックスしましょう。深呼吸をするだけでもかなり効果的です。また、お腹が張ってきたら遠慮せずにガス(おなら)を出すようにしましょう。
4-2:静脈麻酔を積極的に検討する
アレルギーや合併症の心配がなければ、静脈麻酔の使用が最も有効です。痛みに敏感な方、過去に検査で強い痛みを感じた方には特におすすめです。
4-3:既往歴や服薬内容を事前に伝える
既往歴や服用中の薬がある場合、検査や麻酔の方法に影響を与えることがあります。
とくにお腹の手術歴がある方や、抗凝固薬などを服用している場合は、事前に医療スタッフに伝えておきましょう。当クリニックではWEB問診も導入しており、自宅で事前に記入が可能です。
まとめ
本記事では、大腸内視鏡検査における「痛み」に焦点を当て、なぜ痛みが発生するのか、どんな人に出やすいのか、そしてその痛みを抑えるための工夫について詳しく解説してきました。
最後に、楽に大腸カメラを受けるためのポイントを再確認しましょう。
- リラックスして検査に臨むこと(緊張すると腸が収縮し痛みの原因になります)
- 経験豊富な内視鏡専門医の施術を受ける
- 静脈麻酔を用いて検査を行う(不安や痛みを感じにくくなります)
- お腹の手術歴や持病・服薬内容は事前に申告する
当院では、患者さま一人ひとりの体質や不安に寄り添いながら、最も適した内視鏡検査を実施しています。過去に痛みがあった方も、初めての方も、安心して検査を受けていただけるよう最大限の配慮をいたします。お気軽にご相談ください。
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※この記事は2022年10月20日に公開され、2025年5月9日に更新されました。
参考文献
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Sergio Candoni et al. A randomized controlled trial comparing real-time insertion pain during colonoscopy confirmed water exchange to be superior to water immersion in enhancing patient comfort. Gastrointestinal Endoscopy 2015; 81: 557-566.
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Cadoni S, Ishaq S, Harada H, et al. Water-assisted colonoscopy: an international modified Delphi review on definitions and practice recommendations. Gastrointest Endosc. 2021; 93: 1411-1420.
施設紹介
東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>
ホームページ https://www.senju-ge.jp/
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