なぜ便潜血検査陽性で大腸カメラが必要なのか?原因も含め解説

内視鏡検査

「健康診断で便潜血が陽性の結果が出たなぁ…」

「去年も陽性だったけど精密検査を受けなくても何もなかったから大丈夫かな?」

このように感じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし便潜血検査が陽性の場合、重大な腸のご病気が隠れている可能性があります。最も注意すべき疾患は「大腸がん」です。

40歳以上の方が健康診断や市区町村の大腸がん検診で便潜血陽性となった場合は、「2次精査」として必ず精密検査を受ける必要があります。

その精密検査とは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。大腸カメラによって、大腸がんを早期に発見・治療できる可能性があります。

なお、便潜血検査が陽性になる原因は大腸がんだけではありません。この記事では、便潜血陽性の背景にあるさまざまな疾患について、わかりやすく解説いたします。

1章 便潜血検査陽性の原因とは

便潜血検査とは、便に含まれる血液中のヘモグロビン(Hb)を検出する検査です。

つまり、「便の中に血液が混じっているかどうか」を調べる検査ということです。検査結果が陽性(+)であれば、便に血が混ざっている可能性が高いことを意味します。

それでは、便に血液が混ざる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?以下で詳しく解説していきます。

1-1 便潜血検査は大腸がんの早期発見のための検査

便潜血検査で陽性となった場合、まず疑うべきは大腸がんです。

現在、日本では「免疫学的便潜血検査(IFOBT)」が採用されており、2日間にわたって異なる便を採取して検査します。

なぜ2日分必要なのかというと、便潜血反応には限界があり、1回の検査では見逃される可能性があるためです。

疾患陽性率
進行大腸がん60〜75%
早期大腸がん30〜40%

2日間で採取することで、便潜血反応の感度は約10~20%ほど向上します。

2日分の検査のうち、たった1回でも陽性であれば、必ず医療機関で大腸カメラを受けましょう!

1-2 便潜血検査陽性の原因

便潜血検査が陽性となる背景には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。

・大腸がん

・大腸ポリープ

・大腸憩室出血

・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

・肛門疾患(痔など)

・生理中

・婦人科疾患(子宮内膜症など)

ここからは、それぞれについて解説していきます。

大腸がん

便潜血陽性で最も警戒すべき疾患は「大腸がん」です。

便潜血検査による大腸がんスクリーニングは、死亡リスクを76~81%も下げると報告されています。

もちろん、陽性判定を受けた場合に「精密検査=大腸カメラ」を受けて初めてその効果が発揮されます。

便潜血陽性のまま放置してしまうと、発見が遅れて治療の選択肢が限られ、開腹手術や抗がん剤が必要になるケースもあります。

本来であれば、内視鏡治療や腹腔鏡で完治できた可能性があった患者さんが、重篤化してしまうことも少なくありません。

とくに現役で働いている方や、ご家族に責任のある立場の方は、早期発見・早期治療によって時間・費用・体への負担を大幅に軽減できます。

便潜血が陽性と診断された方は、お早めに大腸カメラの予約・受診をご検討ください。

大腸ポリープ

大腸ポリープも便潜血陽性の原因となることがあります。

小さなポリープでは出血することは稀ですが、ある程度の大きさがあるポリープになると出血しやすくなり、便潜血反応が陽性になることがあります。

大腸ポリープは大腸がんのリスク因子とされており、内視鏡による切除ががんの予防につながると考えられています。

便潜血陽性から大腸カメラを実施し、ポリープが発見された場合にはその場で切除されることが多くあります。

▼ 詳しくはこちら:大腸ポリープってどんな病気で、なぜ切除が必要なの?

大腸憩室出血

大腸憩室とは、大腸の壁にできる小さな袋状の膨らみです。

この憩室の部分では、炎症が起きたり、血管が破れて出血することがあり、便潜血陽性の原因となります。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、腸管にびらんや潰瘍ができて出血することがあり、便潜血検査が陽性になることがあります。

下痢や腹痛、血便などの症状を伴う場合には、このような疾患の可能性も考慮されます。

▼ 参考記事:なぜ若い人の血便は潰瘍性大腸炎を疑うべきなのか?

肛門疾患(痔など)

痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)など、肛門に関する疾患でも出血を伴うことがあり、便潜血が陽性となる原因のひとつです。

見た目は軽い症状でも、出血が継続している場合は注意が必要です。症状がある方は、肛門科の専門外来での診察をおすすめします。

生理中

女性の場合、生理中に便潜血検査を受けると、経血が便に混じってしまい、陽性反応となることがあります。

そのため、検査はなるべく生理の期間を避けて実施することをおすすめします。

婦人科疾患(子宮内膜症など)

まれに、腸に子宮内膜が発生する「腸管子宮内膜症」により、出血が生じて便潜血検査で陽性となることがあります。

女性で、月経周期に関連して便潜血が陽性になる場合には、婦人科疾患も視野に入れる必要があります。

このように、便潜血陽性の背景には大腸がん以外にもさまざまな原因があることをご理解ください。

しかしながら、便潜血検査の本来の目的は「大腸がんの早期発見」です。

2章 便潜血検査陽性となったら

便潜血検査で陽性となった場合、最も重要なのは「精密検査(大腸カメラ)を受けること」です。

ここでは、実際にどのような手順で対応すべきかを解説していきます。

2-1 陽性となったらまずは専門外来受診を

2日間のうち1日でも陽性なら、消化器専門外来を受診しましょう。

受診すべき医療機関の条件として、以下のようなチェックポイントがあります。

・大腸カメラの実施が可能か

・年間1,000件以上の検査実績があるか

・鎮静剤(静脈麻酔)で苦痛の少ない検査が可能か

・複数の医師が在籍し、連携体制が整っているか

・内視鏡専門医が在籍しているか

・日帰りポリープ切除が対応可能か

上記を参考に、信頼できる医療機関を選んで受診されることをおすすめします。

2-2 大腸内視鏡検査を必ず受ける

専門外来を受診したら、必ず大腸カメラを受けましょう。

私自身の経験ですが、1回だけ陽性だったため「経過観察」と判断され、大腸カメラを見送ったケースがありました。

その方は後日当院を受診し、大腸カメラを実施した結果、進行大腸がんが見つかりました。

このような事例は近年では減っていますが、1回でも陽性なら必ず大腸カメラを受けることが重要です。

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3章 便潜血検査の費用

便潜血検査は、受ける方法によって費用が異なります。

検査区分費用の目安
大腸がん検診(2日法)500~1,000円程度
自費健診・人間ドック(2日法)約2,000円
保険診療(1日分)37点(約370円)

保険診療では1日分の検査のみが対象で、診察料(初診288点、再診73点など)もかかるため、総額は高くなることがあります。

また、保険診療で検査を行うには「何らかの症状(例:血便、貧血など)」が必要な点にも注意が必要です。

大腸がん検診はリーズナブルですが、対象年齢や期間が決まっている点に制限があります。

最もおすすめなのは、毎年の健康診断や人間ドックの中で便潜血検査をセットで受ける方法です。

▼ 詳しくはこちら:大腸がん検診では何をするの?費用はいくら?専門医が解説

4章 便潜血検査はどこで受けられるのか?

便潜血検査は、以下のような機関・制度を通じて受けることが可能です。

受診方法検査を受けられる場所
大腸がん検診市区町村などの自治体
自費(健診や人間ドック)健診・人間ドックを実施する医療機関
保険診療各医療機関(症状がある場合)

市区町村の大腸がん検診では、対象年齢の方に郵送などで案内が届く場合があります。案内をよく確認して、期間内に受診するようにしましょう。

健康診断や人間ドックで受ける場合には、便潜血検査が含まれているかを事前にチェックしてください。含まれていない場合は、オプションで追加する必要があります。

保険診療での検査は、「便に血が混じっている」「貧血がある」などの症状がある場合に適応となります。ただし血便があるようなケースでは、便潜血検査よりも先に大腸カメラを受けることが推奨されます。

5章 便潜血検査陽性に関するQ&A

5-1 昨年も陽性だったが問題なかった。今年も陽性の場合は?

昨年問題がなかったとしても、今年再び陽性なら再度大腸カメラを受けましょう。

以下の2つの理由から、再検査が必要です。

・1年の間に新たな病変(大腸がん・ポリープなど)が発生している可能性がある

・大腸カメラも100%ではなく、一定の確率で見逃しの可能性がある

1年の間に新たな病変が発生することがある

昨年の検査で問題がなかったとしても、1年間で新たな出血性病変が発生することはあり得ます。

とくに、出血を伴うような病変であれば、進行がんなど悪性度が高い可能性も否定できません。早期発見のためにも再度の大腸カメラが必要です。

大腸カメラにも見逃しのリスクがある

大腸カメラは高精度な検査ですが、見逃しのリスクはゼロではありません。報告によると、小さな病変では10~20%程度の見逃し率があるとされています。

昨年受けたから今年は不要、というのではなく、2回目までは受けることが望ましいとされています。

当院での見逃しを防ぐ取り組み

当院では、より正確な観察ができるよう、以下のような対策を実施しています。

  • 大腸をしっかり洗浄してから検査を行う
  • 検査時間を十分にかけて観察を行う
  • 画像強調内視鏡などを使用して、粘膜のわずかな変化も確認する

これらの工夫により、見逃しのリスクを最小限に抑えることが可能です。

5-2 症状がないが検査を受けたほうがいい?

症状がなくても、陽性なら必ず大腸カメラを受けましょう。

「便潜血で陽性と言われたが、症状は全くないので大丈夫」と思って放置する方も少なくありません。

しかし、早期の大腸がんや大腸ポリープは、無症状であることが多いのです。

症状がない=大丈夫というわけではありません。

むしろ、症状が出た時にはがんが進行しているケースもあるため、「症状がないからこそ精密検査が必要」と言えます。

5-3 検査を受けないとどうなる?

放置すると、大腸がんが進行してしまうリスクがあります。

便潜血陽性の結果を無視して精密検査を受けなかった場合には、大腸がんが進行して早期の段階で治療を受けることが出来なくなるということがあり得ます。

大腸がんは、早期に発見・治療すれば完治する可能性の高い病気です。逆に、発見が遅れると進行がんとなり、手術や化学療法など体への負担が大きくなってしまいます。

便潜血陽性は、決して軽く見るべきサインではありません。

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まとめ

便潜血陽性となった場合には、必ず専門医を受診して大腸カメラ検査を受けましょう。

「症状がないから」「前回も大丈夫だったから」と放置してしまうと、取り返しのつかない病状進行につながる恐れもあります。

迷ったときや不安なときは、お気軽に当院にご相談ください。

便潜血陽性に関するご相談から大腸カメラまで対応可能です。お気軽にお問い合わせください。

※この記事は2023年1月17日に公開され、2025年6月1日に更新されました。

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東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>

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電話番号 03-3882-7149

住所 東京都足立区千住3-74 第2白亜ビル1階

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