
皆さまこんにちは。尚視会理事長・内視鏡専門医の原田です。当クリニック「東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院」は、北千住駅から徒歩2分の場所に位置する内視鏡専門クリニックです。
今回は「機能性ディスペプシア(FD)とは?胃カメラを受ける必要があるのか?」について、詳しく解説いたします。
目次
機能性ディスペプシア(FD)とは?
機能性ディスペプシア(FD)とは、原因となる器質的異常が見つからないにもかかわらず、慢性的に消化不良症状が続く状態を指します。
具体的には、胃の痛みや不快感、満腹感、食後の膨満感などが主な症状で、検査をしても明らかな病変が確認されない場合に診断されます。
FDは日本人にも多く、年齢・性別を問わず発症することが知られています。現代の食生活やストレス社会の影響も大きいと考えられています。
FDが起こる原因とは?
機能性ディスペプシアの原因は一つではなく、以下のように複数の要素が関係しているとされています。
- 胃の運動機能異常(食物排出の遅延)
- 胃の知覚過敏(通常は感じない刺激を痛みと感じる)
- 脳と消化管の信号伝達の異常(脳腸相関異常)
- ストレスや心理的要因
- ピロリ菌感染の影響
- 食生活の乱れ(脂っこい食事・過食)
- ホルモンバランスの変化
これらが複合的に絡み合い、FDの症状を引き起こしていると考えられています。
機能性ディスペプシアの主な症状
主な症状一覧 |
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食後の胃の痛み・灼熱感 |
腹部の張り・膨満感 |
過剰なげっぷや吐き気 |
初期満腹感(少量で満腹に感じる) |
上腹部不快感 |
これらの症状は、食事の有無に関係なく発生することもあり、生活に大きな支障をきたすことがあります。
以下の症状が出たらすぐに受診を
緊急性が高い症状 |
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原因不明の体重減少 |
激しい腹痛 |
便通異常(下痢・便秘・血便) |
吐血や黒色便 |
黄疸(皮膚や目の白目が黄色くなる) |
顎や首、腕に広がる痛み |
呼吸困難、動悸、発汗異常 |
これらの症状がみられた場合は、消化器系の重大な疾患(がんや潰瘍など)の可能性があるため、速やかに検査を受ける必要があります。
機能性ディスペプシアと似た疾患との違い
胃炎との違い
胃炎は胃粘膜の明確な炎症や損傷が確認される病態です。細菌感染(特にピロリ菌)や薬剤(NSAIDs)など明らかな原因がある点がFDと異なります。
胃食道逆流症(GERD)との違い
GERDは胃酸が食道に逆流することで胸焼けや酸っぱいげっぷが主症状ですが、FDはより胃の中や上腹部の症状が中心です。 GERD治療後も消化不良が続く場合、FDを疑う必要があります。
過敏性腸症候群(IBS)との違い
IBSは大腸を中心とした腹痛・便通異常(下痢・便秘)を主症状とする疾患です。 FDは胃や上部小腸に症状が現れ、両者は臓器レベルで異なります。
詳しくはこちらの記事もご参照ください。
機能性ディスペプシアの治療方法
①食事療法
食事内容や食べ方を見直すことは、FD症状の軽減に非常に効果的です。
- 少量ずつ食事をとる
- 高脂肪・高糖質食品を避ける
- 低FODMAP食(発酵性糖質制限食)を試す
- 冷たい飲み物・刺激物の制限
- 喫煙・過度なアルコール摂取を控える
例:おすすめの食事メニュー
推奨メニュー | 避けたい食品 |
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白米、お粥、うどん | 脂っこい揚げ物、ファストフード |
鶏ささみ、白身魚 | 濃厚なチーズ、脂身の多い肉 |
温野菜、根菜類 | にんにく・玉ねぎなど刺激食材 |
バナナ、りんご(加熱) | 柑橘類など酸味の強い果物 |
個々人で食べやすい食品が異なるため、管理栄養士と相談しながら進めると安心です。
②薬物療法
症状が強い場合は、薬物療法が必要になります。
薬剤の種類 | 効果・目的 |
---|---|
シメチコン製剤 | 腸内ガスを減らし膨満感を軽減 |
H2受容体拮抗薬 | 胃酸の分泌を抑え、胃粘膜を保護 |
プロトンポンプ阻害薬(PPI) | 胃酸分泌の「ポンプ作用」を強力にブロック |
カリウムイオン競合型酸ブロッカー(PCAB) | PPIより速やかに胃酸を抑える新薬 |
抗生剤 | ピロリ菌陽性時に除菌療法 |
三環系抗うつ薬・SSRI | 腸管神経の過敏性を抑制 |
運動促進薬 | 胃内容物の排出を促進 |
制吐剤 | 吐き気を和らげる |
特に近年登場したPCAB(ボノプラザンなど)は、PPIに比べて即効性が高く、胃酸過多の抑制に大きな効果が期待されています。
③行動療法(心理療法)
FDでは、ストレスや不安が症状に大きく関わっている場合が多いため、認知行動療法(CBT)やリラクゼーション法の習得が勧められています。
- マインドフルネス
- 深呼吸・漸進的筋弛緩法
- カウンセリングによる思考修正
これらのアプローチで、症状悪化の引き金となるストレス反応を和らげることができます。
④運動療法
運動は自律神経のバランスを整え、胃腸の動きを促進する効果が期待されます。
おすすめの運動例
- ウォーキング(1日30分目安)
- 軽いジョギング
- サイクリング(平地)
- 水中ウォーキングやアクアビクス
- ヨガやストレッチ
無理のない範囲から習慣化することが大切です。
機能性ディスペプシアは完治する?
FD患者のうち、完全寛解を報告する割合は20%前後と言われています。
完治が難しい場合でも、症状をうまくコントロールし、再発を防ぐことは十分に可能です。
重要なのは、自分の症状をよく理解し、悪化要因(食べ物・ストレス・生活リズム)をコントロールする生活スタイルを築くことです。
診断方法・検査について
機能性ディスペプシアの診断基準(ローマⅢ基準)
- 6か月以上前から症状が存在
- 直近3か月間、以下のうち1つ以上の症状
診断対象となる症状 |
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食後の持続的なもたれ感 |
食後すぐの満腹感 |
上腹部痛 |
上腹部の灼熱感 |
加えて、これらの症状を説明できる器質的疾患(胃潰瘍・がんなど)が除外されていることが条件となります。
検査の流れ
- 問診・診察
- 血液検査(貧血・肝機能・炎症反応など)
- ピロリ菌検査(尿素呼気テスト・便中抗原検査・血清抗体検査)
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
なぜ内視鏡検査が必要なのか?
消化不良症状の裏には、胃がん・胃潰瘍・十二指腸潰瘍など重篤な疾患が隠れている可能性があるためです。
実際、消化不良症状を訴えた患者の中から、検査で以下のような病変が発見されることもあります。
主な内視鏡検査での発見疾患 | 発見率(目安) |
---|---|
胃潰瘍 | 1.6〜8.2% |
十二指腸潰瘍 | 2.3〜12.7% |
食道炎 | 0〜23.0% |
胃がん | 0〜3.4% |
これらを早期発見し、適切な治療へつなげるためにも、まずは内視鏡検査を受けることが推奨されます。
内視鏡検査についてもっとわかりやすく知りたい方は、マンガでの解説もぜひご覧ください。
もし精密検査で異常が見つかった場合も、当クリニックでは適切な治療まで一貫して対応しています。詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ|まずは内視鏡検査を受けましょう
機能性ディスペプシアの診断には、まず器質的疾患(潰瘍・がんなど)を除外することが必須です。
そのため、胃内視鏡検査(胃カメラ)が第一歩となります。
検査で異常が見つからなければ、機能性疾患(FD)として適切な治療に進むことができます。
当クリニックでは、経験豊富な内視鏡専門医による丁寧な検査・診断を行っております。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
LINEやWEBから、かんたんにご予約できます。
お好きな方法でお気軽にご予約ください。
※この記事は2022年6月4日に公開された内容を、2025年4月28日に最新の情報に基づき加筆・修正しました。
施設紹介
東京千住・胃と大腸の消化器内視鏡クリニック 足立区院 >>
ホームページ https://www.senju-ge.jp/
電話番号 03-3882-7149
住所 東京都足立区千住3-74 第2白亜ビル1階
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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9:00~12:00 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
14:00~17:30 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ※ |
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