逆流性食道炎とは

逆流性食道炎は、加齢による筋肉や消化機能の衰え、消化に時間のかかる食事、腹圧上昇などが原因になって発症します。もともと日本人には少ない疾患だったのですが、近年の高齢化や食の欧米化によって発症者が増加傾向にあります。食道粘膜の炎症が長期間続くと食道粘膜が胃粘膜のように変性するバレット食道や食道がんを発症するリスクが高くなってしまいます。逆流性食道炎の症状は市販薬で改善できるケースもありますが、炎症をしっかり治して再発を防止しないと食道がん発症につながる可能性があります。症状があったら早めに消化器内科を受診して適切な検査や診断を受け、炎症をしっかり治して再発を防止しましょう。
原因
また、逆流による食道粘膜の炎症やストレスが食道粘膜の過敏性を異常に高めてしまう知覚過敏を起こし、それも症状の発症に関与しているという指摘もあります。
症状
逆流性食道炎とバレットがん
胸やけや呑酸(酸っぱい液があがる)は逆流性食道炎の特徴的な症状です。多くの逆流性食道炎は胃酸を抑えるお薬の服用で簡単に治りますが、一度内視鏡検査で詳しく調べる必要があります。ひどくなると出血や狭窄、さらに癌などが合併していることがあるからです。

図1:
軽症型の逆流性食道炎で胃酸を抑えるお薬で簡単に治るタイプです。ただ、放置すると次に示したような重症型に発展することがあります。

図2:
重症型の逆流性食道炎で、持続する出血による高度な貧血と食べ物が詰まる(狭窄)症状で発見されました。

図3:
繰り返す逆流性食道炎のために、白い部分の食道粘膜が短くなってしまうバレット食道という状態があります。

図4:
バレット食道は癌化しやすい状態であり、このような癌が発生することがあります。じつはこのバレット癌は欧米では現在最も多く、かつ最も予後が悪い癌と言われていますが、日本人にも増加傾向があり、学会の研究結果では年に0.8%の方に発癌を認めるという頻度となっています。


このように日本人における逆流性食道炎は急激に増加しており、それに伴ってバレット癌も徐々に増加しています。
以上のように、胸やけのある方は是非一度内視鏡検査を受けていただきたいと思います。バレット癌は一度進行するととても予後が悪いと言われておりますので、バレット食道を認めた方は内視鏡による定期検査もお勧めします。早期で発見されれば、その予後はとても良いと言われており、ほとんどの早期癌は内視鏡治療が可能です。
また、逆流性食道炎の症状には、咳・喉の違和感・歯の不具合・胸痛・胃痛・不眠など食道以外の症状もありますので、ご心配のある方はお気軽にご相談ください。
参考文献:
- Amano Y, Iwaki T, Katsuyama Y, Hayasaka K, Harada H, et al: Relationship between Barrett’s esophagus and colonic diseases: a role for colonoscopy in Barrett’s surveillance. J Gastroenterol 54: 984-993, 2019.
- 天野祐二,勝山泰志,早坂健司,原田英明.胸やけを訴える患者の診断プロセス:クリニックでは,病院では.医学と薬学 76: 589-595 , 2019.
- 天野祐二,原田英明,勝山泰志,他:バレット食道.胃食道逆流症診療2018:現状と課題.臨床消化器内科 33: 339-345, 2018.
- 天野祐二,他:本邦におけるバレット食道癌の疫学-現況と展望-.日本消化器病学会雑誌 112: 219-231, 2015.
検査

造影剤を用いたX線検査でも食道がんとの鑑別は可能なことがありますが、確定診断のためには別途胃カメラ検査を行う必要があります。
また、胸部と腹部を隔てる横隔膜には食道が通る狭い裂孔がありますが、ここがゆるんで胃の上部が胸部にはみ出してしまう食道裂孔ヘルニアを起こすことがあります。食道裂孔ヘルニアは逆流性食道炎発症のリスクを上昇させますが、その状態を正確に調べるためにも胃カメラ検査は有効です。さらに、胃と食道の境目周辺に胃がんができて、それによって下部食道括約筋の締め付けが低下し、逆流性食道炎発症に至るケースもまれに存在します。当院では最新の機器を用いて研鑽を積んだ専門医が胃カメラ検査を行っており、正確性の高い炎症の診断や、食道や胃の微細な早期がんの発見も可能です。
治療
生活指導
食後に胃酸分泌が増えると逆流を起こしやすくなります。食後すぐ横になると逆流しやすいため、注意しましょう。また、前かがみや猫背は腹圧が上昇するため、できるだけ正しい姿勢を保つよう心がけてください。肥満も腹圧上昇につながりますので、カロリーコントロールを行って標準体重をキープしましょう。
食事

薬物療法

外科的治療
薬物療法や生活指導の効果が乏しく十分な治療を行っても改善しない場合、そして重症化して食道の狭窄や出血を繰り返す場合には外科手術を検討します。侵襲が強いため、慎重に検討して行う必要があります。










